シリーズ・コロナ革命(19)~観光業への影響
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政府の中国・韓国からの入国を成田空港、関西空港に限定する方針を受け、3月9日から九州の空港・港湾と中国・韓国を結ぶ国際路線が休航となった。観光業へのさらなる影響は避けられない。福岡で長年旅行業に携わる旅行会社社長に話を聞いた。
業務がなく、先も読めない
1月27日に中国からの海外団体旅行が事実上禁止となったころから当社では落ち込みが酷くなった。当社の事業の中心はインバウンドではなく訪中旅行を中心としたアウトバウンドであるが、この時期、中国ツアーは売れず、ほかの国へのツアーも売れなくなっている。とはいえ、2002~03年のSARSの時は中国旅行が人気で訪中する日本人が多く、当社にとってはより深刻であった。
インバウンドに関して、当社も観光ではないが中国から団体旅行を受け入れているが、1月下旬頃から続々とキャンセルされた。日本人の訪中旅行が増えないため、インバウンド事業の比率を今後も高めていくつもりでいるが、当面の業務はほぼなくなっている。観光業界でインバウンドを頼みとする業者は少なくなく、非常に深刻だ。
中国系航空会社の現地支店は半分の職員を休ませているという。業務が激減した旅行会社、航空会社などは、当面は有休を消化させるとして、その後はいつまで給与を支払えるかという体力勝負になる。先月、愛知県の観光旅館「冨士見荘」が倒産したように、今後も観光業関連で倒産する業者が出てくるであろう。終息した後のことを考えると、そう簡単に人員調整には踏み切れず、苦しい状況だ。
観光バス会社も深刻だ。観光バス会社は自社で保有しているバスの台数は少なくリースであるとはいえ、業務がなくなっている状況だ。日本人も旅行を控えているためリース会社はバスが戻ってきても貸し出す取引先がほとんどなく、自社の駐車スペースも足りないため、リース先に無料でよいから預かってくれと預けている状態という。
今後どうなるのか、同業者やほかの観光業界の人たちと話しているが、先が読めない状況だ。入国制限に関して、中国の在日大使館・領事館からは、ビザの申請は受け付けるが、発行はいつになるかわからないと言われている。日本の在中大使館・領事館も同様の対応のようだ。
日中関係は良好、中国インバウンドは終息後にV字回復か
今般の日本政府による中国からの入国制限、渡航制限の決定に関して、中国外交部の報道官が批判するかと思ったら、理解すると述べ驚いた。日中両政府間で事前に話がついていたのであろう。日中間の外交チャンネルがきちんと機能しているということだ。
SARSの時は、日本における中国批判の論調がずっと厳しかったと記憶している。今般の事態で日本人の中国への嫌悪感が強くなるのではないかと気にしていたが、関連報道を見ていて思うのは、日本のマスコミの中国批判が比較的冷静なことだ。衛生面に対する批判などは当然ながら一時あったにせよ、中国は信用できないなどと過剰に批判する論調はあまり見られない。このように、総じて日中関係は悪くなっていない。
中国の新規の感染者は減っており、今は韓国、イタリアなどで感染が拡大しているとはいえ、やがて事態は終息し、夏頃には中国人の訪日旅行はV字回復しているのではないかと見込んでいる。
観光業界のインバウンド依存体質はそのままか
ポイントは、日本側がそれを受け入れることのできる体制にあるかどうかだが、周囲の観光関連の業者は、一刻も早く日中両国の状況が収まり、元通り中国人観光客がきてくれることを切望している状況だ。
日本の観光業界の中国インバウンド頼みを批判する意見があるが、今般の疫病の流行は世界中で起きていることであり、中国がダメだからといって韓国や東南アジアにシフトをするというわけにもいかない。
また、日本国内ではさまざまなイベントが中止となっており、旅行に行きましょうという雰囲気ではない。このような雰囲気のなか、観光業界としては何か対策をしたいと思ってもできない状況である。
現実として、日本の観光業にとって、この数年で一番お金を消費している外国人は中国人であり、中国が好きか嫌いかは別として、中国・中国人のことを考えずに事業を行うことは非現実的な状況だ。福岡市で近年新築された、また現在建設中のホテルのほとんどはインバウンドを意識したものであり、デパートもインバウンドに頼っている。旅行会社、一部の飲食店も含めて、インバウンドを抜きに成り立たない構造となっている。また日中関係が良好であることからみて、中国インバウンドの今後は心配していない。
【茅野 雅弘】
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