2024年11月24日( 日 )

「ウイルス対策に名を借りた戒厳令反対」と市民が抗議、野党批判も~国会前

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 新型インフルエンザ対策特別措置法改正案が審議されている12日、これに反対する市民約40人が国会前で「ウイルス対策に名を借りた戒厳令反対」などとシュプレヒコールを上げて抗議した。野党や「総がかり行動実行委員会」への批判も上がった。

 午後1時から衆院本会議が予定されていたことから、正午すぎから国会前には同法案に反対する市民が集まっていた。森雅子法相が9日の参院予算委員会で「東日本大震災の際に、いわき市から検察官が最初に逃げた」などと答弁したことに野党が反発し、本会議開催は午後4時すぎまでずれ込んだ。

 抗議を呼び掛けたのは、都教委包囲・首都圏ネットワーク。集会に先立ち、伏見忠氏(62)が「私たちは、新型コロナウイルスの拡散を望んでいるわけでも、あるいは大したことではないと軽視しているわけでもない。しかし、この国の民主主義を重篤な危機に陥れる、安倍の独裁がまん延することに危機感を感じて、この集会を開くことを決めた」と説明した。

 伏見氏は現役の教員で、有給を使って参加。約40人の市民を前に、口火を切った。

 「野党の皆さま、今、森発言をめぐって審議拒否されているようだが、本当にひどいのは新型インフルエンザ対策特別措置法の改悪ではないのか」と提起。付帯決議が設けられたことで内閣委員会を通過したことに触れ、「今まで付帯決議など、きちんと守られたことないじゃないか」とやり玉に挙げた。

 そのうえで、「今からでも遅くない。審議拒否をすべき。多くの国民は、コロナ対策も心配だが、この国が独裁になっていくことにも不安を感じている。その独裁に、野党の皆さまは手を貸すのか」と野党議員の政府への追従をけん制した。

 2番目にマイクを取った渡部秀清氏(72)は、都内に住む元教員。前日、与野党が仲良く賛成したことを挙げ、「これまで野党は共闘で安倍を倒そうとしていた。それはどこに行ったのか。まったく節操がない」と指弾した。

 「裏切りだ」とやじが飛ぶと、「裏切りですよね。肝心なときにそういうことをやる。市民運動でいつもここにきていた『総がかり』の人たち、誰も来なくなってるじゃないか。それもまたおかしな話だが、こういうときこそ、市民が立ち上がらなければならない」と鼓舞した。

 集まった市民はスピーチの合間に、「新型インフルエンザ対策特別措置法の改悪反対」「ウイルス対策に名を借りた戒厳令反対」「憲法改悪の先取り、緊急事態宣言を阻止するぞ」などとシュプレヒコールを繰り返した。

国会に向けてシュプレヒコールを上げる市民(2020.3.12衆院第二議員会館前で筆者撮影)
国会に向けてシュプレヒコールを上げる市民(2020.3.12衆院第二議員会館前で筆者撮影)

 60代の日雇い労働者も参加していた。「今日は仕事を返上してきた。安倍にあんな緊急事態宣言を出させて、好き放題やらせてはいけない」と憤っていた。

 2012年に成立した同法は、首相が緊急事態を宣言すれば、私権を制限できると規定する。都道府県の知事は住民に対し学校や興業施設の使用を制限したり、催し物の中止を指示したりできるほか、病床確保するための土地収容も可能になる。

 13年の施行後、緊急事態が宣言されたことはないが、改正法が成立すれば、コロナウイルス感染への対応でも宣言できる。

 自民と立憲・国民は9日、同法案を13日の参院本会議で成立させることで合意している。社民と立憲の一部に反対の動きも見られたが、国会への「事前報告」を求める付帯決議を設けると賛成に回った。しかし、事前承認ではない上、付帯決議は法的拘束力はない。

 集会は午後4時に終わったが、ぽつんと人影があった。横浜市内在住の60代の女性は、東京都内在住の50代の女性と2人で抗議のボードを掲げていた。

「人権や自由を傷つける緊急事態宣言は発令禁止!」

 2人は前日、参議院会館前で知り合ったという。緊急事態を総理が国会の承認なしに宣言できるのは危険。今、感染のせいか、『総がかり』が集会を企画してもいいはずなのに、集会がないので、個人として動くしかないと思った。権限拡大に縛りがないことを、みんなに知っていただきたい」と危機感を募らせていた。

<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)  

 1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)、『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』(Amazonオンデマンド)。ブログ『高橋清隆の文書館』

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