新型コロナウイルスは第3次世界大戦の幕開けか(2)
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国際未来科学研究所代表 浜田 和幸 氏
アメリカのノースイースタン大学のネットワーク・サイエンス研究所のスカルピーノ助教授曰く「昨年末に武漢から発生したとされる新型コロナウイルス(COVID-19)のような病原菌は、実は何年も前からあちこちを飛び回っていた。これまで人への感染が確認されなかったために、監視対象になっていなかっただけである」。
瞬く間に世界を席巻してしまった感のあるCOVID-19であるが、「中国や東南アジアに限らず、環境が整えば、世界どこでも動物から人へ感染しても不思議ではない性格の病原菌の一種に過ぎない」というわけだ。同助教授に言わせると「問題はいつどこで動物から人に感染するのか特定し、予測することが不可能だということ」。
スカルピーノ助教授も「アメリカでは毎年夏になると、動物から人に感染する新種のインフルエンザが発生している」という。しかも、インフルエンザですら、毎回、人の想像を裏切るような変異を遂げることが当たり前になっている。動物に限らず、鳥が媒介する病原菌も数が多い。
さて、今回のパンデミックを引き起こしているCOVID-19であるが、最新のイギリスの「ネーチャー」誌によれば、「これまでCOVID-19は中国の武漢発と紹介してきたが、誤りだった。その後の研究の結果、発生源は特定できない、というのが正確である。科学的な観点から専門家の研究が進められているので、その結果を待ちたい。政治的に利用されるきっかけをつくり、アジア人への偏見をもたらしたことを深く謝罪する」とのこと。
とはいえ、全世界を恐怖に陥れていることは間違いない。しかし、スカルピーノ助教授曰く「将来的には、もっとやっかいな病原菌が発生する可能性は否定できない。今回のパンデミックからどのような教訓を引き出すかが大切だ」。また、香港市立大学の疫病学の専門家フェイファー博士によれば「今回の病原菌は序の口に過ぎない。次のより大きなパンデミックは20年後に起こるかもしれないが、来年に起こるかもしれない。現在、世界で多くの感染者や死者が発生しているが、次回はもっと多くの犠牲者が出てもおかしくない」。油断大敵というわけだ。各分野の専門家が総力を挙げて研究と対策を講じなければ、人類の滅亡もあり得るという話である。
恐らく、世界の多くの人々は「非常事態宣言」の下で、しばらく活動を控え、おとなしくしていれば、感染のピークも過ぎ、以前の状態に戻るとの根拠なき楽観論にすがっているに違いない。多くの日本人も同様ではなかろうか。しかし、海外の専門家の見方はそんなに甘いものではないようだ。今回のCOVID-19をはるかに上回る強敵が数知れず潜んでいるというのだから。人類にとっては未曾有の険しい未来が待っている。そのことを肝に銘じて、経済活動や食生活の在り方を問い直す必要があるだろう。
実は、アメリカではトランプ大統領の根拠のあいまいな強気の発言とは裏腹に、医療や保健衛生の専門家が集まり、政府としてのパンデミック対策は早い段階でまとめていた。それは「米国政府によるCOVID-19対応計画」と題され、今回の病原菌の発生から世界に拡散していった過程を分析し、今後の展開を冷静に分析、予測したうえで、政府としての取るべき対策を明示したものである。
100ページを超える詳細な内容であるが、もっとも重要な指摘は次の3点であろう。第1が「急速な拡大によって対応は後手後手になるだろう」。第2は「パンデミックは18カ月か、それ以上の長期にわたり、その間、感染者の発生数の増減にはいくつもの波が起こる」。第3は「COVID-19の拡散範囲と深刻さの度合いに関しては予測することも特徴を特定することも難しい」。
アメリカ国内でも相当数の死者が避けられず、経済も壊滅的な被害を受け、社会不安から犯罪も急増するとの指摘に、さすがのトランプ大統領も緊急事態との認識に傾いたと思われる。アメリカ国内の感染者数は40万人を超え、死者数でも火元と目される中国を抜いてしまった。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。関連キーワード
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