2024年11月23日( 土 )

新型コロナウイルスは第3次世界大戦の幕開けか(3)

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国際未来科学研究所代表 浜田 和幸 氏

 デトロイトの3大自動車メーカーもアメリカ国内の工場はすべて閉鎖に追い込まれた。それどころか、デトロイトでは医療従事者が2,000人以上も感染し、町全体がゴーストタウン化しつつある。デトロイト市内と郊外に5つの診療、治療施設を有するヘンリー・フォード病院では3万1,000人のスタッフのうち、718人が感染。同じくサイナイ・グレース病院でも看護婦500人を含む1,500人が感染してしまった。

 これらはほんの一例だが、医療施設や公共交通機関で働く人々の間で感染と死亡が増加しているのである。要は、世界最大の経済大国が奈落の底に転落する瀬戸際に追い込まれたといっても過言ではない。デトロイトを抱えるミシガン州では不足する医療専門家や医薬品を確保するため、キューバ政府への支援を要請することも検討中とのこと。
 余り知られていないが、アメリカから経済制裁を受けているキューバは医療技術の面ではアメリカを凌駕する専門性を誇っており、イタリアやスペインにも医師や医薬品を送っている。世界各地から医学留学生も数多く受け入れているのである。しかし、キューバからの支援に頼るということになれば、アメリカもメンツ丸つぶれだ。

 追い詰められたトランプ大統領は「諸悪の根源は中国だ。発生の実態を隠蔽し、世界への拡散を食い止める機会が失われた」と、責任転嫁に走っている。しかし、いくら中国を非難しても目の前の感染者の爆発的増加は食い止められない。

 そこでアメリカでは起死回生の政策を打ち出してきた。第1、トランプ大統領は予備役の緊急応召を発令した。戦場で負傷者の治療や看護に当たった経験を持つ予備役兵100万人の戦線復帰を命じたのである。米軍の最高指揮者である大統領による非常事態対応の最たるものといえよう。

 第2、国防総省ではエスパー長官の指示で、軍の上級幹部はコロラド州にある地下の核シェルター基地への移動が行われた。もともと冷戦時代に旧ソ連による核攻撃を想定し建設された地下の巨大な軍事基地である。幹部をコロラドの地下シェルターに結集し、そこから24時間体制で危機管理を行うという決断を下したのである。

 第3、ポンペオ国務長官は海外に暮らすアメリカ人すべてを対象に「緊急帰国命令」を発した。表向きは「コロナウイルス蔓延の影響で民間の航空機も政府の帰国者運搬用のチャーター機も飛ばなくなる」との理由で、「早急に最寄りのアメリカ大使館や総領事館に連絡し、帰国の手段を確保するように」促している。

 すでに述べたように、日本にあるアメリカ大使館でも在留アメリカ人に対して「速やかな帰国を促す」告知を出している。曰く「日本では医療崩壊の可能性もあり、持病のあるアメリカ人が日本で必要な治療を受けられなくなる恐れがある」。PCR検査数も少ない日本の対応の甘さが見透かされた感が無きにしも非ずだが、国務長官が海外在住の全アメリカ人に緊急帰国を命令するということは前代未聞である。

 こうしたトランプ政権による非常事態対応にはコロナウイルスの感染拡大を防ぐための「都市封鎖」や「医療体制強化」とは別の狙いが込められていると思われる。日本における中途半端な自粛要請とは明らかに違う。そこにはあらゆる手段を講じても「超大国アメリカの地位を死守する」という決意が読み取れる。逆にいえば、アメリカの地位を脅かすほどの深刻な事態が進行しているという危機感も感じられる。

 問題はそうした危機感の源泉が何かということであろう。単に新型コロナウイルスという病原菌への対応とは思えない。言い換えれば、アメリカ政府、とくに国防関係者の間では、このウイルスはアメリカの社会や経済の基盤を崩壊させ、アメリカという国家の転覆を狙う非軍事的手段による新たな戦争という受け止め方をしているのである。「第3次世界大戦」の幕開けというわけだ。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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