2024年11月21日( 木 )

「中医学」と「感染症」、それは闘争と共存の歴史である!(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、新型コロナウイルスによる世界全体の死者は4月13日現在で約11万4千人。国別では米国の死者が、スペイン、イタリアを上回り2万2千人と世界最多となった。米国は感染者数も約55万7千人で最多である。これは、中国全土の感染者約8万2160人、死者約3341人の約7倍に相当する。
 今回の「新型コロナウイルス」騒動を中医学ではどのように見るのか。(社)日本統合医療学園 理事長・学長の吉村吉博薬学博士に聞いた。吉村先生は研究・教育そして臨床のかたわら、中医学の伝道師として年間100回を超える講演を行う。また感染症研究の世界的機関「米疾病対策センター」(CDC)での研究経験がある。

(社)日本統合医療学園 理事長・学長 吉村 吉博 氏

注意喚起と同時に安心させる情報提供も必要と感じている

 ――先生は今回の「新型コロナウイルス」騒動をどのようにご覧になられていますか。

吉村 吉博 氏

 吉村吉博氏(以下、吉村) 4月10日現在、日本の新型コロナ(COVID-19)の感染者は4,667人、死者が85人、国外では、感染者が約150万人、死者が約9万人です。日本はまだ増加の一途をたどり、ピークが見えない状況で油断は禁物です。今回の新型コロナウイルスは他のインフルエンザウイルスよりも感染力が強いですが、感染してもすぐには発症しにくいようです。新型コロナは新種ウイルスであり、その対策や治療薬がはっきり分かっていないため、世界に大きな影響を与えています。

 一方、連日、行政とマスコミが新型コロナに奔走しており、過剰に国民に恐怖心をあおっている感もあります。そのため、トイレットペーパー、食料品などの買い占めが起こりました。行政はもちろん注意喚起することも重要ですが、国民を不安に落とし込まない安心な情報提供も同時に行う必要があります。

政治判断力の甘さと、国民の社交的に富んだ行動が裏目に

 ――先生は感染症研究所「米疾病対策センター」(CDC)での研究経験がございます。そのアメリカは中国本土(感染者約8万2160人、死者約3341人)と比べて感染者も死者も約7倍(感染者約55万7千人、死者2万2千人)になっています。感染者だけでいえば、約11万人のスペインやイタリアを抜いて断トツのトップです。(4月13日現在)。

 吉村 私は20年前にCDCで環境ホルモンの研究を行っていました。一言でいうとCDCは、アメリカではなく、世界感染症研究所という感があります。日本の感染症研究所の100倍以上の規模です。エイズ、エボラ、インフルエンザ、環境汚染などの研究を専門に行っている研究所で、常に世界の感染症について目を光らせ対策を考えています。

 では、このような研究所があるにも関わらずアメリカの新型コロナ感染者が断トツで世界のトップになってしまったのはなぜでしょうか。一つにはよく言われますように、トランプ大統領の政治的判断力の甘さ(経済優先政策の罰)そして、国民の社交的に富んだ行動(ハグ等で接触感染)が裏目になった感があります。

 新型コロナは飛沫感染もありますが、ほとんどが接触感染で広がります。ちなみに空気感染はありません。私もCDCにいた頃は毎週同僚の家でパーティーがありました。アメリカでの感染者増大に関しては、「3密」(密閉・密集・密接)が重要な鍵となります。

 またアメリカでは黒人やヒスパニック系の感染者や死者が多いと聞いています。これは黒人の多くはバス運転手や老人ホーム・食料品店などで働き、他人と接する機会が多いばかりでなく、普段の健康状態も悪いからと思われます。実際に20歳以上の成人の肥満率を比較すると、黒人が49.6%で、ヒスパニック系が44.8%、白人が42.2%、アジア系が17.4%になっています。明らかに黒人の健康状態の悪化が新型コロナ感染率や死亡率の増加に関与していることが分かります(ちなみに、新型コロナに感染したイギリスのポリス・ジョンソン首相(55)は身長約175センチで体重約105キログムと言われている)。

(つづく)

【金木 亮憲】

【中医学】数千年という長い歴史に裏付けられた、中医薬学理論と臨床経験に基づく中国伝統医学、いわゆる「中国漢方」のことを言い、「日本漢方」とは一線を隔している。日本漢方は中国からの影響は『傷寒論・金匱要略(張仲景)』(414年)の時代(レベル)で止まり、鎖国を経て、現代医学(西洋医学)の影響も一部では受けながら、今日まで独自の道を歩んできた。^

【証(しょう)】中医学の治療指針となるべくもので、西洋医学で言うところの病名(診断名)に相当するものである。一般的に証は弁証といわれる、脈診、問診、触診などから導き出され、病の状態を現す。中医学では、この方法によって導き出された証に基づき鍼灸・漢方薬の治療方針を決定する。からだが病気とどんな闘い方をしているかをみて、その時のからだの状態(体質、体力、抵抗力、症状の現れ方などの個人差)などの観点から診断する。


<プロフィール>
吉村吉博氏(よしむら・よしひろ) 

 日本統合医療学園学長、星薬科大学大学院博士課程修了、星薬科大学助教授、日本薬科大学漢方薬学科教授、アメリカ合衆国疾病対策センター(CDC)にて研究、漢方吉村薬局顧問、東京農業大学・東京家政大学・星薬科大学非常勤講師。
 著書として『中医漢方医学の基礎』、『中医漢方医学の生薬と処方』、『中医漢方医学の治療と症例』、『予防は最大の治療なり』、『登録販売者攻略テキスト』、『登録販売者根底300題』(以上、日本統合医療学園)『基礎薬学(必須講座薬剤師国家試験対策)』(日本工業技術連盟)、『分析化学〈2〉』(南江堂)、『わかりやすい機器分析化学』(広川書店)他多数。メディア出演として「発掘あるある大辞典」(フジテレビ系)、読売新聞、日刊ゲンダイ他多数。

(2)

関連記事