令和ニッポンの青写真を描け~第12回白馬会議報告(2)
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白馬会議運営委員会事務局代表 市川 周 氏
令和の始まりはどことなく明るいムードが漂っていたが、新しい時代を切り拓く明確なビジョンが示されたわけではない。『平成時代』(岩波新書)で吉見俊哉氏(東京大学教授)が「平成」は失敗の博物館と書いていたが、「失敗は成功のもと」だ。「西のダボス、東の白馬」を目指して2008年に創設した白馬会議。昨秋12回目を迎え、「令和ニッポンの青写真を描け!」(11月23~24日開催)をテーマに、北アルプス麓のシェラリゾート白馬で激論、熱論に突入した。白馬会議運営委員会事務局代表の市川周氏が自らの言葉で、白馬会議にかける思いを語る。
ブロックチェ-ン革命と新しい資本主義
松田学氏(松田政策研究所代表)のセッション「“第4の波”にどう立ち向かうか?」では、文明史から未来像の青写真に迫った。松田氏は人類の文明段階が、第1の波(農業)、第2の波(工業)、第3の波(情報)に続く「第4の波」に入ったとしており、第4の波を生むエンジンはAIやビッグデータとブロックチェーン革命だという。
金井氏が言及した「デジタル独裁」に触れ、AIやビッグデータが合理的に判断して決定したことだから全員従うべきだという風潮が高まれば、「ヒットラーにAIが重なる悪夢」の時代がやって来るだろうと警告した。
さらにAIを使うグループとAIを使えないグループの間で生産力や所得の格差が拡大するだろうと読んでいる。AIが幅をきかせるようになると恒常的な労働需要不足の経済に陥り、大量規模の失業者が産み出されるのではないかと、「第4の波」の影の部分を強調した。
一方で「第4の波」の光の部分は、ブロックチェーン革命がもたらすという。これまでの社会システムでは国家や銀行、企業の中央には管理者がいて、管理者に対する信用で経済が成り立っていた。だが、ブロックチェーンという情報技術の進化で、管理者のいない分散型社会システムがこれからは可能となっていく。
たとえばCDを買うことで、アーティストにファンはアクセスしてきた。CDの流通ルートの途中にはいろいろなショップやレコード会社の事務所があって、そこが中間で手数料を取っていた。だが、これからはデジタルでアーティストとファンが直接つながって、「いいね」と投げ銭をする。「いいね」がデジタルコインとなり、世界中からあっという間にお金が集まる仕組みが技術的にはもう可能になっている。
あるいは、介護の世界でも介護士の資格がなくボランティアで活動している人々がたくさんいる。サービスを受けた側が電子システムを介して、そのボランティアにポイントを渡す。そしてボランティア自身が将来、介護を受けるときに、相手のボランティアにそのポイントを渡せるようにする。すると、今までの市場経済ではボランティアは価値がないものとされてきたが、この電子ポイントが経済的価値を生むことになる。
つまり提供されるサービスに価値を認める人たちの間で、ブロックチェーンを通して「無」から「有」が生まれることになる。今までの市場経済では成り立たなかった多様な価値提供者を、経済的に支えることが可能な時代がやって来る。資本主義経済における「競争型パラダイム」の周辺に「協働型コモンズ」ともいうべき、いわゆる競争とは異なる「協働」が価値の中心になる社会をブロックチェーン革命が生み出していくと松田氏は見ている。
(つづく)
※詳細報告書とダイジェスト動画を白馬会議のウェブサイトに掲載。
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