2024年11月23日( 土 )

【BIS論壇No.318】コロナ禍下の世界経済

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 NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は2020年4月21日付の記事を紹介。


 中国からヨーロッパを席巻したコロナ禍は米国で猛威を振るっている。4月20日現在の感染者は世界で240万人強、死者16万5000人に達した。この中で米国の感染者が76万人弱。死者4万人を超えている。日本は騒いでいるが、感染者1万人強、死者222人だ。
 感染源は武漢の細菌研究所だとか、生鮮市場だとの情報が出回っているが、世界的に有効な感染対策を取るためには感染源の実情をしっかり確認することが肝要だ。

 それにしても安倍政権の対応の遅さ、対策は、現金補助も含めてお粗末だ。WHOが効果がないとしている小さい布製のマスクを人気取りに「アベマスク」と喧伝(けんでん)し、各家庭に2枚づつ配付するとのことだが、送料をいれて466億円もかかるという。これを低所得者に現金を支給すれば一人10万円で46万人、5万円で92万人、1万円ならば460万人に配付できる。現金配布がはるかに効果的だ。さて財務省が発表した2020年3月の日本の輸出は19年同月比11.7%減となった。新型コロナウイルスの感染拡大で米国やドイツ向け自動車輸出が落ち込んだことなどが響いているという。対米輸出は2011年東日本大震災以来の最大の落ち込みで16%減となった。主力の中国向けは輸出8.7%減、輸入4.5%減となっている。2019年度の財務省の貿易統計では輸出が前年度比6%減。輸入が6.3%減となった。3月の貿易統計では主要36か国・地域の8割で前年同月を下回った。世界貿易機関(WTO)の悲観シナリオでは今年の世界貿易量は30%減になると予測している。従って日本の4月以降の貿易統計はコロナ禍の影響がさらに色濃く出る可能性が大である。コロナ禍は低い医療水準のアフリカ大陸の南アフリカ、ナイジェリア、ケニア、中央アフリカ、アルジェリアなどでも急拡大が懸念されている。中国に次ぐ13億人の人口のインドでも感染が拡大しており20日現在、感染者1万7000人強、死者560人弱だが、急増が予想されている。

 国際通貨基金(IMF)は4月14日に2020年の世界経済見通しを前年比3%減と発表した。世界は1920~30年代の世界恐慌以来最悪の同時不況に直面していると警告を発している。IMF試算によると世界経済は19年2.9%のプラスから20年マイナス3%へ。中国は19年の6.4%から1.2%へ。米国は2.3%からマイナス5.9%へ。日本は0.7%からマイナス5.2%。20日にコロナ感染者が18万人弱、死亡者2万3,000人強となったイタリアは0.3%からマイナス9.1%へと大幅な落ち込みである。中国の2019年度の航空貨物輸出は米中向けが落ち込み25%減と4年ぶりのマイナスとなった。20日のニューヨーク原油先物市場は史上初めて価格がマイナスとなりファンドの投げ売りが始まっているとのことだ。

 2021年には中国経済は9.2%に上向くとのIMFの楽観的予測がある。日本としては過去のわだかまりを捨てて日中韓が協力し、21世紀アジアの世紀を目指し、いまこそ日中韓FTA、ASEANに日中韓インド、豪州、NZも加えた16カ国のRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の締結、一帯一路、AIIB(アジアインフラ投資銀行)へ参画を検討すべきだ。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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