コロナ禍に巻き込まれた国内スポーツ界のこれから(中)
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人類を恐怖に陥れる新型コロナウイルス。国内外での感染拡大は今も続いている。世界各国において国難である「コロナウイルス禍」は、政治、経済、商業、教育へ甚大な影響を及ぼしている。何より国民1人ひとりの健康、そして生命への不安は、日々増すばかりである。そんななか、国内外のスポーツ界においても先の見えない苦難が続く。つまり、プロ・アマとも活動再開のメドはまったく立たない。今後の活動再開のみならず、チームの存続、そして選手生命が窮地に立たされる可能性がある。
進路・進学への悪影響
(公財)日本高等学校野球連盟(高野連)が第92回選抜高校野球大会開催の中止を決定したことは、記憶に新しい。高校野球大会をはじめ、同時期に開催予定であった高校生の全国大会が次々に中止を余儀なくされた。そして、現在も高校スポーツの活動はほぼ100%中断している状況下だ。学校施設の使用とともに団体での活動は全面的に“禁止”の通達がなされている。公立・私立とも同様である。現況は、「生徒個々とオンラインでコミュニケーションをとり、トレーニングや勉学および日常生活の進捗や動静について問答しています。オンラインですが、これまで以上に生徒それぞれと対話し、個々をより深く知ることができていることはたしかです。他方、あくまでも個人レベルでのワークですので、トレーニングについては限定的なものとなります。あとは、戦術など知的なトレーニングを提案するなどして対応しています。コロナウイルスの鎮静化が見えない、つまり先が見えないなか、どのように生徒のモチベーションを維持するかが課題となってきます。もちろん、我々指導側におけるモチベーションも同様です。生徒に“必ず終わりがある。厳しいがこれも人生。頑張ろう!”と言い続けることも厳しくなってきます。生徒たちは、“はい、希望をもってやります”と言ってくれるでしょう。しかし、生徒たちの時間は限られています。とくに3年生はそうです。最終学年で本当に不憫です。何とかゲームに出場できるようになってほしいですが、我々にはマネジメントできないので、まずは生命第一で、今できることを全力で取り組み、来たる時期に備えて準備することだけです。“国・自治体が、政治家が、誰が”と不平不満ばかりを言ってもどうにもなりません。すべきことを地道に続けて来る時期を待つことしかないですね」と異口同音に語る福岡県内のスポーツ競技複数の教諭(指導者)ら。
今後の(公財)全国高等学校体育連盟(高体連)主催の競技大会で一番近いスケジュールでは、高校総体=インターハイである。今年は東京オリンピックが開催予定であったため、通年7月下旬から8月10〜24日の開催スケジュールとなっている。しかし、今般の状況では安全・安心の万全な体制で開催することは、不可能といえる。なぜなら、インターハイ出場のための各地域やブロックでの予選大会が中止されているのが現状だ。
さらに政府が発令した「緊急事態宣言」が5月6日に解除されるかは不透明であり、延長される公算が高い。延長されると、引き続き活動ができない状況となる。競技によっては、現3年生の選手は事実上高校での競技生活が終了することもある。インターハイともに夏のビッグイベントである全国高等学校野球選手権大会の開催が困難になってきている。“春の選抜”に続き、“夏の甲子園”が見られない公算が高い。野球ファンのみならず、国民全体が楽しみにしている夏の甲子園。客観的かつ冷静に見て、6月からの地区予選開催に間に合うのかどうかは不透明だ。なぜなら、前述通り政府の発令が解除されない限り、チームでの活動ができない。何より、チーム活動や試合開催でウイルス感染拡大リスクの危険が残されている限り、「はい、やりましょう」とはいかない。やはり「感染してしまうかもしれない」という不安を一掃することは現時点ではできない。当事者・関係者は気の毒で不憫であるが、今年の“夏の甲子園”開催は中止となることは、現実として起こる。インターハイ・夏の甲子園の開催が中止になることは、各関係者胸が張り裂かれける思いだろう。夏以降の高校生の全国および地区ブロック大会もしかりで(【表】参照)、今年中の各大会開催は困難な状況にあることをあらかじめ想定しておくべきである。あわせて、中学校の“中体連”、大学生の“インカレ”、リーグ戦、および全国選手権大会などの開催もしかりだ。
このように各世代の学生スポーツの大会開催が危ぶまれているなか、それにともない生徒や学生の進路・進学にも影響を及ぼすこととなる。それは、スポーツの技能や成績による高校・大学への特待生および推薦入学制度である。これらの制度については、各学校法人や各校の細かな判断基準があるので断じることはできないが、特待生や推薦の権利を得るには、レギュラー選手で全国大会出場もしくは各都道府県レベルで上位の成績が必須となる。その成績によって、「貴方は、入学金・授業料・活動費一切を学校が支援いたします」「貴方は、授業料全額のみを学校で支援いたします」「貴方は、授業料の半分のみ学校で支援いたします」「貴方は、当校の入学のみを保証いたします」などランクがある。
この特待生や推薦制度は、学生スポーツ選手が居る家庭には大きな恩恵があり、それらを得るために日夜鍛錬している側面もあることは事実。しかし、現在の状況で選手は、大会開催つまり試合に出場する機会すらない。よって、最高のパフォーマンスを披露して優秀な成績を上げることに挑戦することができないのだ。「昨年以前の成績で判断できるだろう」とする見解もあるが、選手を迎え入れる側である学校の立場としては、リスクが高い。やはり、現時点での選手のコンディションを最優先したい。その判断する機会が失われることで、各学校法人や各校が、特待生・推薦制度での入学枠を削減するか、もしくは今年はゼロになることも考えられる。
「娘は高校スポーツ最後の3年生。しかし、国難である“コロナショック”で試合をする機会が失われました。ある学校から“特待生”でのお話もいただいています。しかし、まだ確定ではありません。試合での成績や活躍度合いで決まるからです。娘は、特待生の権利を手にしたいために競技を続けてきたのではなく、“競技が大好きで皆と一緒に全国大会に行きたい”一心でやってきました。私も同じ思いです。一方で、特待生という制度で金銭的な支援があって進学できるのであれば、親として素直に嬉しいです。きれい事抜きにして、経済的な負担が激減することは心身とも楽になります。娘も励みになっています。ですから、試合の機会がないことは不安です。しかし、この事態で“試合開催を強行してほしい”とは言えません。皆が生きることで必死ですから」と切実な思いを吐露するある高校でバスケットボールの主力選手として活躍する母親の談話の通り、大会開催の可否は、進路・進学を控える選手と家庭にとって死活問題である。とくに高校から大学進学時において断念する理由の上位は、“家庭の経済的な理由”である。
(つづく)
【河原 清明】
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