九州地銀の20年3月期決算を検証する(3)
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【表1】を見ていただきたい。九州地銀(18行)の20年3月期の預貸率順位表である。
~この表から見えるもの~
<1位~9位>
◆1位はふくおかFG傘下の熊本銀行で、貸出金は前期比+817億円の1兆6,161億円(前期比5.32%増)。総預金は前期比+196億円の1兆4,390億円(前期比1.38%増)。預貸率は112.3%のオーバーローンとなっている。
◆2位は西日本FH傘下の長崎銀行で、貸出金は前期比▲33億円の2,467億円(前期比-1.32%)。総預金は前期比▲94億円の2,260億円(前期比-3.99%)。預貸率は109.16%で前期と同様にオーバーローン。預貸金とも前期比マイナスと苦戦している。ふくおかFGと経営統合した十八銀行は親和銀行と今年10月1日に合併を予定しており、さらに厳しさが増すことになりそうだ。
◆3位は北九州銀行で、貸出金は前期比+216億円の1兆1,807億円(1.86%増)。総預金は前期比+444億円の1兆1,811億円(前期比3.91%増)。
・預貸率は99.97%と、わずかではあるがオーバーローンを解消している。ただ、総預金に占める譲渡性預金は前期比▲32億円の879億円と減少しているものの、比率は7.44%と高く、預貸率が安定するには、まだ時間がかかりそうだ。
◆4位は福岡銀行で、貸出金は前期比+9,191億円の10兆8,169億円(9.29%増)。総預金は前期比4,856億円の11兆1,430億円(前期比4.56%増)。
・預貸率は前期の92.87%から97.07%と大幅に上昇。総預金と貸出金の増加率は18行中トップで、積極的な営業展開が目に付く。
◆5位は鹿児島銀行で、貸出金は前期比+1,506億円の3兆5,581億円(前期比4.42%増)。総預金は前期比+1,435億円の4兆1,017億円(前期比3.63%増)。預貸率は86.75%。
◆6位は西日本シティ銀行で、貸出金は前期比+2,090億円の7兆3,412億円(前期比2.93%増)。総預金は譲渡性預金の前期比▲603億円にもかかわらず、前期比+3,299億円の8兆6,395億円(前期比3.97%増)。そのため預貸率は前期の85.83%から84.97%と、わずかではあるが減少に転じている。
・7位は福岡中央銀行で83.91%。8位に佐賀共栄銀行で80.07%。9位は宮崎銀行で80.05%。ここまでが預貸率80%台。<10位~18位>
◆10位は肥後銀行で、貸出金は前期比+2,080億円の3兆6,964億円(前期比5.96%増)。総預金は前期比+544億円の4兆6,774億円(前期比1.18%増)。譲渡性預金を前期比▲700億円と減額したことや貸出金を積極的に増加させたことにより、預貸率は前期の75.46%から79.03%と大幅に上昇している。
◆11位は親和銀行で、貸出金は前期比+778億円の1兆7,978億円(前期比4.52%増)。預貸率は前期の14位から11位。十八銀行との合併を控え、貸出金を積極的に増加させことにより、預貸率は75.38%から77.60%に上昇している。
・12位は前期11位だった南日本銀行で、預貸率は75.77%から77.46%。
・13位は前期12位だった宮崎太陽銀行で、預貸率は75.50%から76.17%。
・14位は前期16位だった十八銀行。親和銀行と同様、積極的に貸出金を増加させており、前期の16位から14位。預貸率は前期の71.62%から76.09%と大幅に上昇している。
◆15位は前期10位だった豊和銀行。前期の預貸率は77.51%だったが、今期は75.52%に減少している。
・16位は前期15位だった佐賀銀行。預貸率は前期の74.95%から今期は74.06%。
・17位は前期と同様に筑邦銀行。預貸率は前期の69.31%から今期は71.52%。ここまでが預貸率が70%台の銀行となっている。
◆18位は昨年同様に大分銀行。貸出金は前期比▲72億円の1兆8,326億円(前期比-0.39%)。総預金は前期比+350億円の3兆121億円(1.18%増)。預貸率は前期の61.80%から60.84%に下げている。同じく大分県を地盤とする豊和銀行も預貸率を下げており、大分県の資金需要は厳しい状況にあるようだ。<金融グループ>
◆1位はふくおかFG。19年4月1日に十八銀行と経営統合したため、預貸金とも大幅に増加している。そのうえに傘下4行が貸出金を積極的に取り組んだことから、預貸率は前期の90.88%から92.04%。
・2位は西日本FHで、前期の86.28%から85.54%。
・3位は九州FGで、前期の79.99%から81.98%。
・4位は山口FGで、前期の78.84%から80.33%。
◆金融グループは貸出金増加により、収益増強を図ろうとしているのが読み取れる。<まとめ>
収益を上げるために金融グループ傘下行(9行)は貸出金を積極的に増加させている。収益を上げるためには預貸率を上げることが求められているものの、新型コロナウイルスが地域経済を直撃。貸出金を積極的に取り組めば焦げ付く可能性が高く、金融グループ以外の地銀にとっては、まさに、「進むも地獄退くも地獄」の経営を余儀なくされているというのが実態ではないだろうか。【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】
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