『脊振の自然に魅せられて』「カマツカの花と感動の対面」
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―前回の続き―
雨の縦走路をさらに進む。
あの花に会えるだろうか、期待が膨らむ。目的地の手前で希少植物「ヒロハテンナンショウ」の自生状況を確認する。登山道脇のミヤコザサをかき分けると見つけた。マムシグサの仲間で背丈50㎝ほどの植物で、葉の下に15㎝ほどの仏炎苞の花を付けたか弱い植物だ。
「ヒロハテンナンショウ」は薄緑色の花を付け、雨のなか、密かに生きていた。
その数は少しずつ減っている。温暖化の影響か、涼しい所を求め、今は900mあたりの縦走路でわずかに生き残り、矢筈峠の手前700mあたりに自生していたのは消滅した。ここに自生しているのも、昨年より減っている。雨に濡れたミヤコザサを手で押さえ、このか弱い植物をローアングルで数枚撮影した。ヒロハテンナンショウの撮影を終え、リョウブやミツバツツジが茂る登山道を抜けると視界が一気に広がった。
ここから100m四方は樹木の繁茂もなく、ミヤコザサの草原になっている。12年前に立てた道標(番号6−1)から縦走路の方向に、湧き上がる雲の奥で金山(967m)の山頂が見た。雨のなか、新緑の金山の山容は生き生きとしていた。道標をアングルに入れ金山の展望の撮影をする。
視線を右に変えると早良の街並みを通して、博多湾に浮かんだ能古島がぼんやりと見えていた。山容や博多湾の展望の撮影を終え、目線を縦走路の奥に移す。はたして求める花は咲いているだろうか。縦走路の少しさきに、少し黄ばんだ小さな花をたくさん付けた灌木が見えた。求めていた「カマツカの花」だ。思わず「咲いていた」と感動、1年ぶりの対面だ。
昨年より会いに来るのが少し遅かったため、この花と対面できるか思案していたが、ちょうど見頃であった。灌木のカマツカの花は1つ1つが直径1㎝ほどの花だ。5枚の白い花弁の上に、おしべが開いていた。そして小枝にたくさんの花を付けていた。
カマツカの名前の由来は、幹は固く鎌の柄に使われていた処からきている。満開のカマツカの樹木全体を入れ、近づいてクローズアップで可憐な花の撮影を続けた。ミヤコザサをさらに分け入り、奥にある「カマツカ」に会いに行った。
雨しずくを付け小枝に咲く花たちは、風にわずかに揺れていた。「カマツカ」の横に「ツクバネウツギ」も花をたくさん咲かせ、「見てください」とばかりに凛として輝いていた。「ツクバネウツギ」は、ロート状の花で長さがが5㎝ほど、花の直径は1㎝にも満たなく、羽子板の羽のかたちをした花で、名前の由来は羽子板の羽からだ。カマツカの花とともにすばらしい出会いができた。
私は今、こんな素敵な場所にいるのだと、自然がいっぱいの脊振の山に感謝した。
撮影に満足し「来年また会おうね」と花たちに別れを告げ、登山口へ戻った。登山口に着くと、雨具の下の上半身は汗で蒸れ、登山靴のなかはミヤコザサの露で濡れていた。登山靴をスニーカーに履き替え、汚れたスパッツと登山靴を近くの渓谷で洗った。
久しぶりに雨のなかの山旅、素敵な花に会えた1日でした。
2020年6月3日
脊振の自然を愛する会
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