2024年11月25日( 月 )

三菱商事が日本KFC株を売却する裏事情(前)

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「カーネルおじさん」ことカーネル・サーダーズ像が店頭で迎えるケンタッキー・フライド・チキンにとって、クリスマスは最大の書き入れ時である。今年のケンタッキークリスマスは、過去最長の12月19日~25日の7日間を設定。新メニューに「パーティバーレルデラックス」(税込価格4,980円)を投入。オリジナルチキン4ピースに、クリスマスローストチキン(ハーフ)1ピース、デラックスサラダ、ホワイトティラミスに、KFCオリジナル絵皿を組み合わせた豪華なパックだ。クリスマス商戦を反転攻勢の起爆剤にするつもりだった。その直前に、親会社の三菱商事が、ケンタッキー・フライド・チキンを運営する日本KFCホールディングスの株式を売却した。何があったのか?

三菱商事が日本KFC株を133億円で売却

 日本KFCホールディングス(株)(以下・日本KFC)は11月6日、親会社の三菱商事(株)が自社普通株式627万株を売り出し、同日付で三菱商事から派遣されている取締役(非常勤)1人が辞任したと発表した。
 三菱商事は日本KFCの普通株式の64.86%を保有していたが、売り出しにより持ち株比率が37.90%に低下。親会社ではなくなり、その他の関係会社になる。
 売り出し価格は1株につき2,134円。売り出し価格の総額は133億円。三菱商事の売却収入になる。
三菱商事との資本関係は変化するが、三菱商事は大株主として引き続き、自社の事業をサポートする意向である旨の連絡を受けている。
 今後も、穀物や飼料、KFC登録飼育農場で育てられた国内産100%の若鶏の生産に至る三菱商事グループのネットワークを最大限に活用するという。日本KFCは今後、個人株主を新たな顧客に取り込む方針だ。

三菱商事から米KFCから買い取り子会社化

 日本KFCは1970年7月、三菱商事が飼料・畜産事業の強化と外食産業の本格参入を目的として、米KFCコーポレーションと設立した共同出資会社。1990年8月東証2部に上場した。
 資本構成が変わるのが2007年。米国KFCを傘下に置くYum!が、株主よりもライセンスとしての業務に特化したいとの意向を示した。三菱商事は、日本KFC株式の3割以上を持つ大株主が2社ある状況では経営の意思決定が迅速に行えないと判断。
 日本KFC株式をTOB(株式公開買い付け)で追加取得。三菱商事と同数の株式を保有する米国KFCは全株をTOBに応じて売却。三菱商事は64.86%を保有する筆頭株主となり、日本KFCを子会社に組み入れた。2014年4月、日本KFCホールディングス(日本KFC)に商号変更して持ち株会社体制に移行した。

コンビニチキンに敗れたケンタッキー

 長らくフライドチキンは、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の代名詞という時代が続いたが、その牙城にコンビニが殴り込んできた。今やファミマートの「プレミアムチキン」とローソンの「黄金チキン」はフライドチキンの2大ブランドだ。KFCのオリジナルチキンが1ピース250円なのに対して、ファミマやローソンは190円という低価格で対抗。KFCの市場を奪っていった。
 コンビニに浸食されたことが鮮明になったのが、日本KFCの2015年3月期の連結決算だった。11年ぶりに最終赤字に転落。売上高は、前期比1%増の846億円と久しぶりにプラスに転じたが、営業利益は63%減の6.7億円と大きく落ち込み、最終損益は5.2億円の赤字(直前の期は4.4億円の黒字)に転落した。
 フライドチキンの落ち込みをカバーするために手がけた宅配ピザ「ピザハット」事業は、年間を通じてテレビCMを打ったが、経費倒れで惨敗した。
 再建が急務となっていた。16年3月期の売上高は6%増の900億円、営業利益は2.2倍の15億円、最終終6億円の黒字を見込んでいる。
 反転攻勢の起爆剤として想定していたのが、今年のクリスマス商戦。豪華なクリスマス商品はKFCの独壇場だ。クリスマス市場にもコンビニが進出してきているが、KFCに一日の長がある。
 その矢先に、親会社の三菱商事が、日本KFCの株式を売却する。なぜか?

(つづく)

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