2024年12月23日( 月 )

更地から『まち』へ快進撃のウォルトン社(前)

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かねてより「一度、ウォルトン社の開発現場の視察に行こう」と願っていたが、残念ながらまだ参加するには至っていない。「同社の開発現状=不動産市場からアメリカの国力の把握をしたい」という切実な願望を抱いていた。そうしたところ、一般社団法人「◯の会」(まるのかい)から案内が届いた。「ウォルトン社のビル・ドハティ(Bill Doherty)CEOが、日本で初めて講演する」という趣旨であった。さっそく出席を申し込んだ。11月19日の講演から得た結論をレポートする。

底を打った
 2008年のリーマン・ショックは、アメリカの経済に大打撃を与えた。住宅不動産バブルが弾けて、大調整期になったのである。大手銀行の倒産も続出した。
 ウォルトン社にとっても、楽ではなかった。不動産業者の苦しみとは、資金調達ができないことである。ただ、同社の苦しみは、金融対策ではない。資金調達の主体は9万1,000人の顧客からであるから、影響はあまりなかった。苦しみは、買い手が現れなかったことである。しかし、このリーマン・ショック以降に投げ売りの不動産が市場に大量に出たことで、仕入れができるメリットを得ることはできた。

 リーマン・ショックのマイナスは、09年末まであった。10年から、経済立て直しの動きは明瞭になってきた。15年までは経済成長率2%以上、キープできる見通しがついた。雇用面でも、失業率は5%まで低下してきた。個人消費も活発で、車と住宅が牽引している。15年の車販売台数は1,700台とみられる。何よりも、不動産・住宅の価格が回復基調にあることが嬉しい。

 国民の生活が自立的な回復で最悪期を脱したと評価される時期に、『幸福の女神』が飛び込んできた。シェールオイルが噴き出す噴き出す。恵みの雨ならぬ“恵みのオイル”だ。原油輸入がゼロで済み、燃料代が安くなれば、消費活動は活発になる。「住宅を買おうか」という層が増える。ウォルトン社にしてみれば、絶好のチャンスの到来である。

 加えること、ブラジルからUターンしてきた製造会社が、アメリカ南部に工場建設を始めたとか。コストが下がれば、海外から工場建設に戻ってくるのは自明な行動である。Uターン組だけではない。外国企業がアメリカ国内に進出して、工場建設に忙しい。

 何をさておき、人口が増えることは、住宅ニーズが底堅くなることである。同社のビジネスにとって、悪い話ではない。

 だが、懸念材料もある。『身分格差・貧富の差の顕著』が、国家としても最大の政策課題となっている。大統領選挙においても、この『身分・所得格差』政策が焦点となるであろう。『この難問題を解決させる候補者』という信頼を国民に与えた立候補者が、大統領を射止めるそうな。大学教育費もバブル。早稲田大学並みのクラスで、4年間の授業料が日本円にして3,000万円だとか。中産階級でも難しい教育費負担である。「教育の機会均等」もうたい文句になってしまう現実が、アメリカには横たわっている。
(つづく)

 

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