2024年12月27日( 金 )

緊張高まる朝鮮半島~金与正の目論む北朝鮮ビジネスの可能性(後)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 朝鮮半島では南北の対立が急速に激化している。韓国で活動する脱北者団体が北朝鮮に向けて飛ばした金正恩体制を批判するビラや救援物資を積んだ風船に猛反発した北朝鮮は開城にある「融和の象徴」南北共同連絡事務所を爆破するという強硬手段に打って出た。さらには、韓国との国境線における軍の配備や訓練の再開を始めるとも宣言した。

2032年までに噴火する可能性は「99%」

 白頭山は100年に一度の小噴火と1000年に一度の大噴火を繰り返してきた。前回の小噴火は1903年。ということは、とっくに小噴火の周期を超えており、いつ噴火があってもおかしくない。しかも、前回の大噴火はちょうど1000年ほど前の話。日本では平安時代で、当時の記録によれば、日本海側を中心に大量の火山灰に覆われ、農業は壊滅的な被害を受けたという。農業だけではなく、交通網も寸断され、多数の死傷者が出たのである。

 その白頭山が2015年からは小噴火と大噴火が重なる重大警戒時期に突入しているわけだ。北朝鮮は2006年、2009年、2013年、そして2017年と核実験を実施しているが、その都度、周辺で確認される地震の規模は大きくなっている。北朝鮮の核実験は白頭山の噴火や巨大地震を誘発していると思わざるを得ない。

 これは韓国、中国のみならず、日本や欧米の地震学者の一致した見方である。北朝鮮も韓国も避難訓練を繰り返しているが、日本は残念ながら対応が鈍いまま。いったん爆発すれば、たちどころに日本はその火山灰に覆われる危険があり、交通手段もマヒする恐れが大きいにもかかわらずだ。

 日本政府は「いたずらにパニックを引き起こしたくない」との判断をしているようだが、国民の生命、財産を守る手立てを講じる責任を放棄しているに等しい。であるならば、そんな心もとない政府には頼らず、食糧の備蓄や避難場所の確保など、自主防衛するしかないだろう。

 注目すべきは、2年前、平壌で開かれた南北首脳会談の直後、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長の両夫妻がそろって白頭山の頂きに登ったことだ。なぜなら、白頭山では近年、群発地震や動物の異常な行動が立て続けに発生しているからである。東北大学の谷口宏充名誉教授によれば、「白頭山が近い将来、東日本大震災に関連して噴火する可能性がある。その可能性は2032年までに99%」とのこと。まさに秒読み段階に他ならない。

 他方、アメリカは北朝鮮政府の要請を受け、2011年から「平壌新技術・経済国際情報センター」に対して火山噴火に関する調査を支援するため資金提供を行い、英国は北朝鮮の地震や火山の研究者を招き、英国内で人材育成や共同研究に取り組んでいる。

 万が一、白頭山の噴火が北朝鮮の地下核施設を飲み込めば、朝鮮半島全体が放射能汚染に見舞われることになる。そうなれば、朝鮮半島も日本列島も消滅しかねない。金与正はそうした迫りくる危機に対して、日本の技術や資金を引き出し、備えを万全なものにしたいと願っているだろう。一児の母である。日本人拉致被害者に対する思いも、これまでの金一族とは違って当然と思われる。

 アメリカのみならず、中国やロシアなど周辺国も結集し、「白頭山・尾山大噴火対策」を一刻も早く講じる必要がある。この点にビジネスチャンスを見出したと思われる金与正の登場は日本にとってもチャンスになるだろう。心して付き合う必要があろうが、脱北者を「クソ食らう犬」と罵り、予告通り、南北共同連絡事務所を爆破した。軍の指導部も一目置くような存在になったわけで、彼女が進める北朝鮮ビジネスから目が離せない。

(了)


<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

(中)

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