2024年11月05日( 火 )

更地から『まち』へ快進撃のウォルトン社(中)

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期待のミレニアム世代
ウォルトン社 ビル・ドハティCEO

ウォルトン社のビル・ドハティCEOは、熱弁を振るう。

 「2000年から2014年まで、人口が3,640万人増えた。日本で言えば、関東地区に匹敵する。やはり不動産業者にとって、人口が増えることが一番嬉しい。低金利ローンと価格安定で、住宅需要が漸次回復してきた。そしていよいよ、リーマン・ショックの痛手を完全に払拭できた。ここから強気の攻めの段階に突入した。それは、新しいミレニアム世代が登場したからである」。

 この世代は、1980年から2000年に生まれた層である。20代から30代で、今、アメリカ国内でも注目を浴びている。何が注目を浴びているかと言えば、『今後の20年間、アメリカの個人消費を領導する階層である』ということだ。この世代は8,000万人いる。あと20年間の間に、この層が所帯を持つようになる。家族を育て上げながら、新しい消費パターンを生み出すとみられているのである。

 ビルCEOも、このミレニアム世代に関心を示し、研究している。この世代のファミリーが全世代に占める指数が2013年に13.3%、2018年に21.6%、そして2030年には38%に増えていくそうだ。彼らが新しい=ニューファミリーを形成していく(日本の団塊の世代のように)。やや違和感を抱くが、この層は根強い戸建て購入志向があるそうだ。彼らが戸建てを買い求めてくれば、長期間の市場拡大が続くと読むのである。ビルCEO率いるウォルトン社にとって、ありがたい話である。

 2014年、カナダの公的年金基金(CPPIB、カナダ公務員の基金)と共同事業で、プロジェクトを償還させた。この実績を見た世界のファンドの、ウォルトン社を見る目が、評価が、大きく変わった。シンガポール、中国、アラブ、世界中の公的年金基金、ファンドがアプローチしてきている。その数は半端ではない。日本の企業からの誘いも、枚挙に暇がないのだ。
 16年秋には、関連会社の上場も予定されている。このレポートしてきたウォルトン社の動向からも、アメリカ経済の懐深さを改めて認識させられた。
アメリカの凄さ・強さ
 ウォルトン社のビル・ドハティCEOからの卓話を聞いて、改めてアメリカの凄さ・強さを認識した。「2040年には、中国が経済力でアメリカを抜く」という専門家の見立てが増えているが、「実際のところ、あと25年しても、世界で一番影響力があるというアメリカの地位は揺るがないだろう」と確信した。

その根拠の1番目は、優秀な人材がアメリカに帰化している事実である。この3年間の平均でも、インド人が9万人強、中国人が8万人強の人たちが、アメリカの国籍を取得した。ただの凡人が帰化したのではない。博士号を得たエリート層の人材が、アメリカに定住することを決意したのである。それだけ、優秀な人材にとって、この国には働き甲斐のある魅力があるのであろう。これは絶対的に、国力強化には必要な要因である。

 根拠の2番目は、人口が確実に増えていることだ。年間200万人の増加になっている。移民も増加の要因にはなっているが、各先進国と比較して、アメリカは国内出生率が減らないことが人口増の牽引力につながってきた。そして今、アメリカ国内で注目されているが、先ほども述べた「ミレニアム世代」である。彼らは1980年から2000年にかけて出生した世代で、現在20~30代のこの世代の、今後の購買力が注目されている。この世代の人口は8,000万人におよぶ。日本のこの世代はまったく頼りにならない。人口が増えても失業率が増えないという企業活動の強さも、たくましさの証明である。

 根拠の3番目は、シェールオイルの発掘で消費オイルが極端に下がったことである。何よりも、原油を輸入する必要がなくなった。輸出大国になる可能性も出てきた。ガソリンが安くなれば、生活者は消費に金を回すことは明白である。全体の消費金額が、持続的に増大する傾向が予想される。また、国内における生産コストが下がれば、工場のUターン現象に拍車をかける。
 今後もアメリカの凄さ・強さが続くであろう要因を3番目まで語ってきた。この経済力のダイナミックさ、懐深さにおいても、中国は一でも二でもなく、三目以上の差を置かれているのは否定できない。

 ただ問題点は、全面戦争に巻き込まれることが懸念されることだ。アメリカは「世界の警察」と自他ともに認められている以上、イスラム国などのテロリストとの戦いでは、先頭に立つことが運命づけられている。その対テロ戦争において膨張する軍事費を、国債乱発で賄うような馬鹿な選択をすれば、経済面では大動乱になるであろう。


(つづく)

 

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