2024年11月22日( 金 )

前駐ベトナム大使・梅田邦夫氏特別講演レポート「日本にとってのベトナムの重要性」(9)

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 NetIB-Newsは、DEVNET INTERNATIONALから提供いただいた前駐ベトナム日本国大使・梅田邦夫氏の講演レポート((公社)ベトナム協会)をお送りする。今回は「在日ベトナム人の犯罪と日越関係への影響」について。


在日ベトナム人の犯罪など

 日本に居住するベトナム人の若者たちは、間違いなく、深刻な労働力不足に苦しむ日本経済の維持・発展にとても大きな貢献をしています。

 その一方で、非常に残念なことですが、2015年から昨年までの間に、ベトナムは、不法残留者数、失踪者数(技能実習生)、国別犯罪検挙件数で中国や韓国を抜き、1位となっています。また、外国人受刑者人数は、1位中国、2位ブラジル、3位ベトナムですが、ベトナム人受刑者のみが増加しています。

(1)不法残留者
 19年、中国および韓国を抜き、ワースト1位になってしまいました。ベトナム人不法残留者は過去5年間で6倍に増え、不法滞在者総数の約19%を占めます。

(2)失踪者(技能実習)
 16年に中国を抜いてワースト1位となり、18年は全体の失踪者9,000人のうち、約64%がベトナム人でした。

(3)犯罪検挙件数
 15年に中国を抜きワースト1位となり、昨年も一位で、外国人犯罪検挙件数の33%を占めています。万引きなどの窃盗犯が全体83%ですが、殺人などの凶悪犯も一部発生しています。

不法滞在、失踪、犯罪急増の背景

 さまざまな要因がありますが、最大要因の1つは、ベトナム人の若者に多額の借金(100~150万円)を背負わせて訪日させる日越双方の悪徳ブローカー、留学斡旋業者、送出機関、日本語学校、監理団体等の存在が大きいと思われます。

 ベトナムにおける若者たちの平均月収は、2万数千円です。日本に行くために100万円の資金を準備するため、若者たちは、親せきから借金をします。それでも、足らない場合、両親が家を担保に借金するケースもあると聞きます。いずれにせよ、彼らは、親戚中の期待を背負って訪日します。彼らが、ハノイ・ノイバイ空港から出発する日、見送りの人で空港は大混雑となっています。
 また、偽造書類で本来資格のない人を送り込んでいるケースも多くあるといわれています。

2国間関係への悪影響

 犯罪、不法滞在、失踪の増加は、夢を抱いて訪日する若者の人生を傷つけることに加え、日本におけるベトナムのイメージ、ベトナムにおける日本のイメージ低下を通じ、2国間関係の基礎である双方の国民感情にも暗い影をおよぼすこことなります。現実に強制送還された人たちなどは、すでにSNSでさまざまな発信をしています。

正しい情報の広報と支援団体との連携

在日ベトナム人の支援を行う東京・日新窟

 大使館はフェースブックやホームページで、手数料の上限、保証金の禁止のみならず、悪徳業者の手口等の周知に努めています。
また、都市部のみならず、留学生などが多い地方省での留学や技能実習に関するセミナーも実施しています(17年5月~19年末までに36回実施)。

 17年3月、JASSO(日本留学生機構)のベトナム事務所がハノイに開所したことも意義深く、大使館と緊密に協力しています。

 また、毎日新聞社の広報ウエブサイト(KOKORO)、日新窟寺など日本国内のベトナム人相談・支援団体との連携も強化しています。

 

(つづく)

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