前駐ベトナム大使・梅田邦夫氏特別講演レポート「日本にとってのベトナムの重要性」(12)
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NetIB-Newsは、DEVNET INTERNATIONALから提供いただいた前駐ベトナム日本国大使・梅田邦夫氏の講演レポート((公社)ベトナム協会)をお送りする。今回は「新型コロナウイルス感染のなかでのベトナム人技能実習生」について。
新型コロナ・ウイルスと外国人労働者
新型コロナ・ウイルス問題への厳しい水際措置や非常事態宣言の結果、技能実習生や留学生をめぐる環境が、大きく変容する可能性があります。
現在(5月下旬)、新しい技能実習生や留学生の訪日は、困難となっています。日本にいる外国人労働者の日本社会における立場は非常に脆弱であり、すでに、感染の恐れに大きな不安を感じ、解雇や雇止めの危機に直面している人も増えている可能性が高いとも思われます。
在日本ベトナム大使館によると、5月末現在、約一万人の人が、ベトナムへの帰国を希望している由です。理由は、失業、妊娠、本人や両親の病気など様々ですが、約半数の人は、日本での感染を非常に恐れているとのことです。
ただし、現在日越間の定期便は、飛んでおらず、ベトナムの収容施設の能力に限界(外国からの帰国者は、2週間隔離される)があるので、いつ帰国できるがわからない状況の由です。
健康に関連し、4月下旬、約300名のベトナム人技能実習生などが日本から帰国しましたが、内2名の留学生が陽性患者であることが、ベトナム到着後のPCR検査で判明しました。日本では、PCR検査を受けられなかった人と思われます。
また、コロナ対策の模範国の1つと言われていたシンガポールで感染者が急増しましたが、新たな感染者は主に出稼ぎにきている外国人労働者でした。
外国人労働者にとって、言葉や習慣の問題もあり出稼ぎ国で医療機関へアクセスは容易でないと思われます。いわんや、医療事情がひっ迫している3月以降の日本の現状では、外国人が健康相談をできる「窓口整備」が必要です。彼らの健康と安全を守ることは、日本社会全体の健康と安全を守ることでもあります。
生活および雇用支援に関連しては、外国人も対象とした施策が講じられつつあります。
1人10万円の現金支給については、住民登録をしている外国人(含む技能実習生、留学生等)も支給対象になりました。技能実習生については、解雇などの理由で実習が困難となった実習生のために、再就職支援、一定要件の下「特定活動」への移行を許可することが決定されています。
留学生については、福岡県が留学生の生活安定化を図るため、県留学生サポートセンターを通じてアルバイトをあっせんする業務が開始されています。条件が厳しすぎるとも思われますが、学生支援金の供与対象に含まれました。
ベトナム人が日本に来る目的は、家族にできるだけ多額の仕送りをしたい、自分の夢を実現するために、自分でお金を稼ぎながら学びたいなど様々です。
訪日にあたり、先に述べたように親せき一同の期待を担っているケースも多く、彼らの挫折の影響は大きいものがあります。
2008年の金融危機後、日本は南米からきた日系人に帰国を促し、結果として、「雇用の調整弁」として扱いました。今回、同じことが繰り返されることがないよう、心から期待しています。
(つづく)
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