【政界インサイダー情報】長崎、横浜、和歌山IR、すべて国の申請締め切りに間に合う??
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7月2日に長崎県は、「基本方針案のIR区域整備計画の申請受付期間が、“2021年1~7月まで”という問題に対して、締め切りまでにすべて準備は整う」と国土交通省に回答している。横浜市や和歌山県もほぼ同じ回答をしており、このコロナ戦時下でもIR事業者の公募(RFP、今秋以後実施予定)、すなわち管轄行政による公開入札の実施は、変更の必要はなく実行可能だと言っているのだ。にわかに信じられない話である!
このコロナ戦時下でも、IR実施法案の基本的な組織の「枠組み」である「事業母体」のコンソーシアムの設立や、その組織づくりは可能と言っている訳だ。さらに、長崎IRについていえば、佐世保ハウステンボスの隣接地(HISに約200億円の土地購入費を支払い予定)に、約3,500億円を新規投資し、年間740万人の集客は可能だという計画(ハウステンボスの昨年の集客実績は300万人を下回る)だが、信じられるだろうか。
実は、このことは、表向きとは異なる形態がある。長崎IRへのRFP応募予定者は以下の3社である。Current-ソフィテルマカオ・アットポンテ16&ゲットナイスホールディングスとOshidori International Development(いずれも香港中華系)の2社と、CASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL(オーストラリア)がこれにあたる。だが、オーストリアのCASINOSを除いて香港中華系2社は、米国MGM Resorts Internationalや Las Vegas Sandsなどとは異なり、「ゲーミングオペレーター」ではなく、今後、中華系カジノのオペレーターと組んで、IRへの応募を実行する予定だ。要は、日本国内企業は一銭の投資も必要としておらず、また投資する気もないということだ。事実上、外国企業のみが開発運営事業母体になる訳である!
IR実施法案は、海外カジノ投資企業と国内メジャーデベロッパーなどと地元財界でエクイティ投資を実施し、本件の開発事業母体の「コンソーシアム」の組織づくりをせよと強く指導している。
筆者は、以前から、米中の覇権争いが激化するなか、「HUAWEI問題」や「5G問題」が我が国の安全保障に対しても影響をおよぼすのと同じように、IRも中華系カジノ投資企業にチャンスはないと認識すべきであり、かつこれらの企業を避けるべきだと言い続けている。ちなみに、オーストリア企業のCASINOSにエンターテインメント関連を委ねることは、無理な話だ。なぜなら、CASINOSは90%以上をカジノの収益で運営している(米国系はカジノからの収益が60~40%であり、残りがエンターテインメント事業からの収益という構造)からだ。CASINOSは、まさにギャンブル、賭博からの利益を唯一の目的とする投資目的企業群である。
さらに重要なことは、IRの開発運営事業母体である「コンソーシアム」の組織づくりに問題があることだ。長崎IRも含めて、このコロナ戦時下と当該候補地の付加価値の無さが理由で、国内メジャー企業や財務能力をもたない地元財界企業は、エクイティ投資には一切参加しないのだ。
要は、香港中華系のカジノ投資企業のみが事実上の開発運営組織であり、これらは日本政府が当初から基本としてきたIRの組織づくりからは逸脱したかたちで、RFPを実行しようとしている。これは違法ではないが、大きく目的が異なる形態なのだ!
長崎県と佐世保市の行政は、まさにIRのフィロソフィー(哲学)から逸脱したことを実行しようとしている。もはや社会的な信念などは持ち合わせておらず、一時的な政治的思惑で「負の遺産」となる可能性が高いことを実行しようとしている。
「ゲーミング区域」をIR施設の延床面積の3%までとする建築制限に対して、収益を90%以上カジノに特化した施設を計画することにいかなる社会性があるのだろうか。そして、いかなるエンターテインメント性があるのだろうか。「超」お粗末極まりないずさんな計画、としか言いようがない。当初から積極的に応援しているJR九州の石原・元会長以下は、このことをいまだに理解していないのだろうか。もはや、安倍首相がトランプ大統領と約束した米国系IR企業は1社もいない。横浜IRも、残りは中華系のみだ。
IRプロジェクトは、九州で唯一巨大な後背地人口をもつ福岡市を中心とした九州北部都市圏にしか、うまくいく可能性はない。今回のコロナ禍で、はっきりと証明された。そのことに気づいてほしい。
【青木 義彦】
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