2024年11月22日( 金 )

お仏壇のはせがわ中興の祖・長谷川裕一氏の経営者としての最終的総括(5)経営と社会貢献を両立した傑物経営者2人

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 長谷川裕一氏にとっての2000年は、経営者として、また財界の指導者としての「信用バブル」が弾けた年だったことは、すでに指摘した通りである。1997年ごろには、将来の北九州財界を担う3人衆として、裕一氏、福岡地所(株)社長・榎本一彦氏、(株)ゼンリンのオーナーの大迫忍氏の名前があがっていた。ところが、裕一氏の公的信用は「スカイネットアジア航空(株)」(旧・パンアジア航空(株))から同氏が撤退したことで失墜した。3人衆の地位を失ったのである。

20億円を被った偉大な経営者~米良電機産業社長・米良充典氏

 福岡の空へと飛び立つはずであったパンアジア航空の経営が行き詰まっているのを眺めていた宮崎出身の経営者、米良電機産業社長・米良充典氏が郷土愛に駆られて「宮崎空港から東京、全国、さらには海外へと飛行機を飛ばそう」と立ち上がった。これが「スカイネットアジア航空」の始まりである。

 結果として、スカイネットアジア航空が倒産したため、米良氏は9億円もの金を捨てることになったが、平然としている猛者だ(一説では、損失額は20億円ともいわれている)。その後、スカイネットアジア航空は地元の支援を受けて、事業再生に成功し、今では「ソラシドエア」の商号で親しまれている。

 関係者の証言をまとめてみると、以下の話が明らかになった。
 「福岡で事業を続けることは無理だ。宮崎へ本社を移転しよう」という動きの原動力になったのは、地元宮崎県の熱烈的な歓迎の姿勢であった。熱烈歓迎といっても、地元の熱意だけでは問題解決にはならず、肝心なことは地元企業による資金提供が得られたことであった。地元財界では、雲海酒造(株)とともに米良電機産業(株)がスカイネットアジア航空をとくに熱心に誘致した。米良電機産業は電材を中心に商売を展開している地元中核企業であり、同社社長・米良充典氏は若いころから日本青年会議所(JC)の活動に没頭していた。そのため、社会貢献に非常に強い関心をもっていたのだろう。

 このような背景があって、米良氏は「故郷である宮崎に航空会社を誘致しよう」という強い使命感に燃えていた(米良氏は現在、宮崎市商工会議所の会頭職を務めている)。米良電器産業が新会社のスカイネットアジア航空に出資するとなると、地元金融機関も「回れ右」をして同社に融資することを決めた。スカイネットアジア航空は、2000年に本社を宮崎市へ移し、2002年8月から、宮崎―東京便が就航することになった。しかし、いかに関係者の熱意があっても、厳しい経営状況を克服するのは簡単ではなかった。

 そのため、運航開始からわずか2年後の04年6月に、スカイネットアジア航空は(株)産業再生機構の支援を受けて事業を再建することが決まった。減資が強行されたのは当然のこと、大口株主は株を放棄しなければならなかったため、米良電器産業は米良氏個人の出資も含めると9億円(20億円という説もある)の損失を被った。「毎期、その損失を平然と償却してきた」と耳にしたが、我が故郷の宮崎に、多大な損失を受けても平然としている豪傑がいることは嬉しい限りだ。

 いまさら裕一氏のことを論評するつもりはないが、社会的貢献を行う企業はしっかりとした経営をしなければならない。その点で、米良氏は稀に見る「傑物」であり、ビック経営者の1人である。コロナ来襲で経営が苦境にある「ソラシドエア」ではあるが、宮崎から東京、さらに全国へと大きく羽ばたいている姿は壮観である。

さらに「一桁上回る」大物経営者~ゼンリンのオーナー・大迫忍氏

 ゼンリンのオーナーの大迫忍氏が九州北部で社会貢献を重ねたことには、頭が下がる思いだ。大迫氏は、「よく稼ぎ、よく遊び(金を使う)、人に尽くす」というモットーを貫いて人生を歩んだ人だった。

 05年6月に60歳の若さで亡くなったが、故人のお別れ会には3,000名以上の人々が押しかけた。列席者には「夜の蝶」と思われる婦人を多く見かけたが、彼女たち全員が涙を流して嗚咽していたことが、とくに印象的だった。故人がいかに夜を楽しく遊び、大枚をはたいていたかを証明するとともに、尊敬され親しまれていたことの証となる出来事だった。

 大迫氏は遊び人であっても、天才的な経営を貫いていたため、亡き後もゼンリンの業績は大きく伸びた。ITソフト業界におけるリーディング企業となったのである。もともと、ゼンリンは創業時の商号である「善隣出版社」の通り、地図屋であった。ところが、時代の波をうまくつかみ、「カーナビケーション」ソフトの大企業となったのである。ゼンリンの業績は、下記の資料の通りだ。大迫氏タイプの経営者は、もう二度と出現しないであろう。

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(了)


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E-mail:hensyu@data-max.co.jp
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