2024年12月25日( 水 )

元総合商社駐在員・中川十郎氏の履歴書(3)初の国産旅客機YS11の軌跡

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏

 ニチメン(株)(現:双日(株))で長年海外駐在員として奮闘した日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏から、当時の状況についての原稿が寄せられたので紹介する。

初の国産旅客機YS11 イラクに飛来す。

 日本車のイラク向け初輸出、イラク原油の日本向け直接買い付け交渉、イラク軍向けの軍用トラック工場建設やバッテリー工場建設プロジェクトなどに努力していたこともあり、ニチメン本社では「中川が労動組合運動でのバイタリテイーで、イラク政府機関に相当食い込んでいる」との噂が立っていたらしい。

 ある日、東京航空機部から、君のイラク政府人脈を活用し、初の国産旅客機「YS11」をイラク軍用輸送機として売り込んでほしいという依頼が届いた。

 イラク空軍に打診したところ、「商談に興味はあるが、まず実物をイラクに持ち込み、試験飛行することが必要」という返事が届いた。そのため、アラビア語に翻訳した大量の「YS11」のパンフレットを軍関係者に配付し、民間のイラク航空にも紹介した。やがて朝日に輝きながら、バグダッドの空に日の丸をつけた「YS11」が初めて飛来した。遠路バグダッドまで飛来した「YS11」の雄姿を仰ぎ、涙が出るほど感激した。試験飛行には、空軍大臣や当時副大統領であったフセイン氏も搭乗した。商談は結実しなかったが、人脈が強化され、その後の軍関係の商談に役立った。

(つづく)


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

(2)
(4)

関連キーワード

関連記事