韓国ウォンの暴落と通貨危機は再び起こるのか(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
ウォンの暴落を防ぐための通貨スワップ協定のゆくえ
韓国政府は、急激なウォン安が起こらないように、どのような対策をしているのだろうか。それは、為替介入である。韓国政府はウォンの暴落を防ぐため、ドルを売り、ウォンを買う為替介入を行うためにも、十分な外貨準備高や他国との通貨スワップ協定が必要になるわけだ。
韓国の中央銀行である韓国銀行が保有している6月末の外貨準備高は4,107億5,000万ドル(約44兆981億円)で、前月から34億4,000万ドル増加している。韓国政府は「十分な外貨準備高があるため、アジア通貨危機のような通貨危機は起こらない」と主張している一方で、外貨準備高の大部分は流動性の低い資産で運用されているため、現金化するためには株式や債券を売却する必要があり、迅速かつ大量にドルとして現金化することは難しいという指摘もある。
一方で、手持ちの資金が足りない時に活用するのが、通貨スワップである。通貨スワップとは、為替レートの急激な変動を防ぐためや、ドルなどの外貨が急激に流出するのを防ぐために使われる。危機が起こった時はあらかじめ決められた為替レートで、自国の通貨を担保にして、相手国の通貨やドルを相手国から借りることができるため、通貨危機を防ぐ有効な手段の1つだ。
韓国政府は通貨危機を防ぐ措置を拡大するため、韓国は、アメリカと600億ドル規模の通貨スワップ協定、さらに中国とは560億ドル規模の通貨スワップ協定を結んでいる。しかし、韓国にとって重要な相手国である日本とは通貨スワップ協定が締結されていない。日韓通貨スワップ協定は2001年7月に20億ドル規模で初めて締結され、その後、世界金融危機で300億ドルに増額され、11年には700億ドルとなった。しかし、12年8月に李明博元大統領の独島(竹島)訪問をきっかけに日韓関係が悪化し、同年10月に満期を迎えた日韓通貨スワップ協定は延長されずに終了した。
日本は日韓通貨スワップ協定の再締結に否定的だ。その一方で、韓国は国際政治における関係は別にして経済では良好な関係を築くことが必要だと考えている。韓国は、韓国の輸出額が1%上がると、付随して日本の対韓輸出額も増えるため、日韓の利害は一致するという考えをもっている。しかし、政治と経済は別ものであると頭ではわかっていても、日韓関係が感情的にもつれている現段階では、日韓通貨スワップ協定の締結は望めないだろう。それ以上に筆者が懸念していることは、日系企業の資産売却が日韓関係をさらに悪化させ、もし日本が報復措置をとれば、韓国は再び通貨危機に陥る恐れがあることだ。
(了)
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