クイーンズヒルゴルフクラブ クラブ会員による再度の民事再生申請(後)
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内紛による訴訟を経て経営者が変わったザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(以下、クイーンズヒル)に対し6月2日、クラブ会員4名が民事再生手続きを申請した。同クラブへの民事再生申請はほかの会員も申請し、今年3月に棄却されたばかりだ。申立人側は1,000名を超える会員から可能な限り多くの賛同の文書を集め、民事再生開始の認可に漕ぎつけたい考えだ。対する経営者側は賛同に同意しないよう依頼する文書を送付するなどして対抗している。今回は棄却された前回の申請とは様相が異なっており、趨勢が見通しにくい。決着は10月にもつく見通しだ。
申し立てで浮き彫りとなったクイーンズの歪な資金繰り
クイーンズヒルの資金繰りについて「支払不能状態」とする申立人側と、「破綻する状態ではない」とする田原氏との主張は異なる。こうしたなかで、今回明らかになったのがクイーンズヒルの特殊な資金繰りだ。
先述の通り、クイーンズヒルはクレジットの立替払金を差押さえられている。債権者は返還金の支払いを求める会員だ。クイーンズヒルの会員権は当初2,250万円で売り出された。返還債務は総額118億円。多くのゴルフ場同様に返還できなくなったクイーンズヒルは、会員に対し永久債への切り替えを依頼し、9割以上が同意したとされる。しかし、一部納得しなかった会員による訴訟にまで発展した。勝訴はしたものの償還原資がない。そこでクレジット客の建替え払いを差押さえ、その配当を回収することになった。こうした債権者の正確な債権総額は不明だが、2,250万円の会員が20名存在すると仮定すると単純計算で4億5,000万円となる。クイーンズヒルの売上高は約7億円。仮に4億5,000万円の差押がなされたら資金繰りは破綻する。
田原氏が取った対抗手段は30億円の債権を有するアセットコーポレーションでクイーンズヒルのクレジット客の立替払金を差し押さえるというもの。回収した配当を再度クイーンズヒルに貸し付けることで資金繰りに回していた。アセットコーポレーションはクイーンズヒルの親会社だった(株)ソロンコーポレーションの関連会社で田原氏が経営権を掌握している。実際には会員が差し押さえている金額は4億5,000万円までには至らないと見られるが、クレジット払いが普及した今日、クイーンズヒルの資金繰りが「綱渡り」であることが浮き彫りとなった。
こうしたなか、7月にクイーンズヒルは、発刊した定期会報で大規模なコース再生計画を打ち出している。詳細な調査によりコースが大規模に破損、老朽化していることが発覚した旨を告知。2年後の創業30周年のタイミングでオープン時のようなコースに復活させる計画だ。48カ所の排水不良箇所を3年計画で再生させるとして一部では経年劣化したコース設備の改修・更新を終えたことを報告している。誌面を見る限り、相応の改修資金を有しているように映る。申立人の三浦弁護士は「あたかも今回の調査でコースの不良が発覚したように記載しているが、排水不良などコースが痛んでいるのは10年以上前から露呈している問題。これは田原氏も承知している」と指摘。「とてもそんな原資はない」と切り捨てる。
こうしたなかで売り出されたのが先述の「現金限定」の3枚・2万8,000円の回数券だ。関係者はこうしたなかで発生した「コロナ禍」に注目する。裁判所の活動がクイーンズヒルの資金繰りに影響を与えたというのだ。緊急事態宣言下で一部の業務は縮小・中断されたが、差押に係る業務も中断された。その間のクレジット差押の回収も滞ることになる。クイーンズヒルの回数券がその埋め合わせに発行されたものだとすると手持ち現金はかなり深刻な状況に陥っていることになる。
カギ握る大口債権者九州債権回収の動静
申立人側が照準を合わせているのが、アセットコーポレーション=田原氏がクイーンズヒルに有する30億円の債権だ。会員権の販売で集めた118億円はゴルフ場を建設しておつりがくるほどの大金。ソロンコーポレーションとクイーンズヒルの経営環境が悪化するなかで、どういう現金のやり取りがあったのかという疑念が生じている。会員からすれば「アセットに貸しはあっても借りはない」(三浦氏)という想いがある。裁判所の審尋は7月27日に3回目が開催された裁判所の審尋は次回8月20日に開催される。早ければ9月にも裁判所の判断が降りる見通しだが、申立人側は民事再生開始に必要、もしくは目標とする嘆願書の数を明確にしていない。回収した153通で事足りると判断したとも取れるが、別の思惑がありそうだ。
注目されるのがもう1つの大口債権者だ。西日本フィナンシャルホールディングス傘下のサービサー・九州債権回収は旧福岡シティ銀行が融資した債権を抵当権付きで譲受。クイーンズヒルに対して約20億円の債権を有する。旧福岡シティ銀行は融資を通じてクイーンズヒルやソロンコーポレーションの栄枯盛衰を注視してきた。同社の選択が裁判所の判断にも影響を与えることになりそうだ。
先述の通り、嘆願書にサインした会員は回数券以外にもセルフプレー導入の噂に懸念を示す。実現するとキャディの人件費削減につながり収益面で寄与するが「さらなる質の劣化につながりかねない」と懸念している。現状、導入は実現していないが、一部会員からは「完全に断念していないのではないか」という声が挙がっている。
三浦弁護士は「現状やっていることを放置することは許さない。このまま放っておいたらぼろぼろになってしまうのは目に見えている」と使命感が申立人に加わった理由であると示唆している。クイーンズヒルが「高級ゴルフコース」としての評価を守れるか、正念場に立たされている。
(了)
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