パチンコ市場は浮上できるのか
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減収傾向が続くホール
大当たりによる“リターン”が減ることになった、2018年2月の改正風営法の施行。愛煙家の間で物議を醸した、20年4月の改正健康増進法施行にともなう屋内原則禁煙。そして、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、ニューノーマルと化した諸々の取り組み(入店時の検温など)。
パチンコホール(以下、ホール)では、先述の変化の過程で、ホールから離れていった遊技ファンが相当数存在する。休眠ユーザーの掘り起こしを含め、客足(売上)を何とか取り戻したいホールだが、改正風営法に適した新基準機の購入、喫煙スペースの整備、パチンコ・スロット台間における飛沫防止ボード設置など、多くの費用負担が先行しているのが現状だ。
遊技業界のトップランナーである(株)マルハンは、20年3月期決算(単独)で売上高1兆4,632億7,000万円、当期純利益84億3,300万円を計上。現預金は1,382億9,000万円 (前期比で約100億円増加、対して、借入金の総額は322億円)計上しており、相応の支払い能力を有していることがわかる。
無論、マルハンは例外であり、多くのホールは利益確保に苦心している。今回の「コロナショック」に鑑み、旧基準機の設置期限が約1年延長されたことで、新台の購入費抑制が進むことは想像に難くない。こうなると苦しくなるのが新基準機を開発・製造・販売するしかないメーカーだ。それでも買うしかない新基準機
主なメーカー各社の直近の業績をまとめた(下図参照)。
上記5社中、前年同期比で増収をはたしたのは、人気タイトルを市場投入できた(ホールへの導入日は20年4月~5月中旬)SANKYO、ユニバの2社のみ。両社は経常利益、当期純利益も黒字へ転換させており、コロナ禍の影響を感じさせない好業績を収めた。このように、一定数以上の客付き(稼働)が中長期的に見込める人気タイトルでもない限り、先行した費用を回収せねばならないホールが財布のひもを緩めることはないだろう。
旧基準機の設置期限はなくなったわけではない。遅かれ早かれホールは、新基準機を購入しなければならない。遊技業界団体は期限を迎えるまでに、段階的に旧基準機を撤去していくよう組合員のホールに求めており、一部のメーカーはこれに応じないホールに対する新基準機の販売や、保証期間経過後の部品供給を行わない可能性を示唆している。
強制的な需要喚起ではあるものの、確実に売れる商品をもつメーカーにはまとまった受注が見込まれる。ホールはどうか。一部メディアによるイメージ先行の報道と、これを真に受けた人々によるいわれなき「ホール叩き」が過熱したが、事実に基づく情報の周知徹底が進むにつれて、若年層ファンを中心に客足は戻りつつあるようだ。「感染時の重症化リスクを気にされる高齢ファンの戻りは鈍いように感じますが、週末の稼働は7割程度まで戻ってきています」(ホールA)。
さまざまな理由によって、苦戦を強いられているパチンコ市場。ホールもメーカーも、大手による寡占化が加速し、再編が進んでいくものと考えられる。先行きの見えないアフターコロナの世界で、パチンコ市場は浮上できるのか。1つだけいえるのは、スロットにおける「2,400枚規制」の緩和は、休眠ユーザーの掘り起こしに一役買うだろうということだ。
【代 源太朗】
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