2024年12月25日( 水 )

世界を襲う自然災害:最大の危機は中国の三峡ダムの決壊(1)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 世界を飲み込むかのような新型コロナウイルス感染の嵐は一向に収まる気配が見えない。その発生源をめぐってはアメリカと中国が「新冷戦」と揶揄されるほどに対立し、責任のなすりつけ合いに終始している。そして、トランプ政権は「ヒューストンにある中国総領事館は“スパイの巣窟”である。アメリカで進む感染症治療薬の開発に関するデータを盗もうとしてきた」といった理由で、閉鎖を命じるという強硬手段に打って出た。

“ぐらつく”アメリカ経済の屋台骨

 「売り言葉に買い言葉」であろう。中国政府も成都にあるアメリカの総領事館の閉鎖を命じることになった。米中は相互に外交官や研究者、ジャーナリストの追放合戦も演じるありさまで、大国としてはあまりに見苦しいやり取りとしか思えない。こうした罵り合いはポンペオ国務長官によるニクソン記念図書館(カリフォルニア州)での対中非難演説で佳境を迎えた。

 何しろ、それは世界が驚いたように、1983年のレーガン大統領による「悪の帝国:ソ連」演説を彷彿とさせる内容だったからである。曰く「米中の関係が進めば、中国は民主化するという期待は幻想だった。今、中国に屈すれば、我々の子どもや孫たちは中国共産党のいうなりにならざるを得ない。全世界は一丸となって自由を保持するため、中国と対決すべきだ」。

 多分にトランプ大統領の再選を意識し、自由で民主的なアメリカを守るには中国との対決が欠かせないと訴えている。しかし、国内のコロナ対策は後手後手で、経済も悪化の一途をたどっているのが昨今のアメリカである。直近の経済データによれば、アメリカの失業率は32.1%。1930年代の大恐慌時代ですら失業率のピークは25%であった。トランプ政権は認めようとしないが、アメリカ経済は間違いなく屋台骨がぐらついている。

 このところ、国際市場で金や銀の価格が高騰を続けているが、アメリカ経済の先行きへの不安を反映したものであろう。中央銀行は無制限に近いドル紙幣を擦りまくっているが、軍事費の増大が突出するばかりで国民生活には何ら恩恵がおよんでいない。アメリカでは7月12日の週にも新たに230万人が失業保険の申請をしている。この結果、18週連続で、失業保険申請者は毎週100万人を突破したことになる。

 こうした失業者の急増はアメリカの歴史始まって以来のこと。もちろんGAFAのトップ経営者に代表されるように、0.1%のスーパーリッチはわが世の春を謳歌しているようだが、残り99.9%は貧しく、多くの国民は無料の食料配給に頼る生活に追い込まれつつある。週600ドルの緊急支援金が配られていたが、7月24日で打ち切りになった。少し前までは「1%の富裕層と99%の一般国民」と言われていたが、今や格差は空前絶後状態に陥りつつある。

 これではコロナ禍へ立ち向かうことも無理な話。人種差別問題をきっかけに全米各地でデモや商店の略奪が起き、自衛のための銃の売上が急増しているのが今のアメリカである。それ故、「経済が売り物」のトランプ大統領の再選も危ういとしか言いようがない。いくら中国を悪者に仕立てたところで、景気が良くなることはあり得ないだろう。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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