世界を襲う自然災害:最大の危機は中国の三峡ダムの決壊(2)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
世界を飲み込むかのような新型コロナウイルス感染の嵐は一向に収まる気配が見えない。その発生源をめぐってはアメリカと中国が「新冷戦」と揶揄されるほどに対立し、責任のなすりつけ合いに終始している。そして、トランプ政権は「ヒューストンにある中国総領事館は“スパイの巣窟”である。アメリカで進む感染症治療薬の開発に関するデータを盗もうとしてきた」といった理由で、閉鎖を命じるという強硬手段に打って出た。
猛威を振るう自然災害
「弱り目に祟り目」とはよく言ったもの。アメリカでも日本でも新型コロナウイルスの感染者は増える一方なのだが、それと歩調を合わせるかのように自然災害も猛威を振るっているからだ。世界最悪の感染者数に見舞われているアメリカでは、テキサス州やフロリダ州など南部一帯で例年をはるかに上回る勢いでハリケーンが猛威を振るい、アラスカ州やカリフォルニア州では巨大な地震が相次ぎ、ハワイ州でもハリケーンによる洪水が観光産業に追い打ちをかけている。
それやこれやで今のアメリカは、「コロナ禍、自然災害、人種問題、そして3人に1人が失業という雇用危機」と、まさに4重苦に襲われているといっても過言ではないだろう。トランプ大統領は起死回生を狙って「ウルトラC」を繰り出すに違いない。それはイランとの戦争であるのか。あるいは北朝鮮との戦争なのか。いくら南シナ海を非合法に占拠する悪の帝国と非難しても、中国と戦火を交える選択肢はないだろう。というのも、アメリカの軍事専門家によるシミュレーションでは、米中が南シナ海や太平洋で戦火を交えた場合、アメリカが勝てる可能性は極めて低いとの結論が出ているからだ。
それと比べれば、日本はまだ救われているといえるかもしれない。それでも各地で豪雨被害や土砂災害が連続しており、安倍首相は甚大な被害に見舞われた熊本県を視察し、災害復旧のために4,000億円を超える予算を投入すると宣言した。しかし、新型コロナウイルスが終息しない状況下にもかかわらず、観光産業を支援すると称して「Go Toキャンペーン」を始めたため、「かえって感染が拡大するのでは」といった危惧が深まる状況が続いている。
ところが、安倍首相からは国民が納得、安心できるようなコロナ対策に関する説明は一向に打ち出されていない。PCR検査も希望者が急増しているにもかかわらず、十分な対応がなされないため、「PCR検査難民の大量発生」といわれるほどだ。
とはいえ、コロナ禍や自然災害の脅威に晒されているのは日本だけではない。すでに紹介したアメリカに限らず、本年5月以降、6月、7月と世界各地で大雨による洪水が発生し、かつてない程の広範囲にわたり大きな被害が報告されているからだ。
たとえば、新型コロナウイルスの発生源と目される武漢を抱える中国では443の河川が氾濫し、そのうち33の河川では過去最高の水位を記録。すでに数千万人が避難を余儀なくされている。大半の河川は中国最大、最長の揚子江の支流である。問題は、その揚子江に建設された「世界最大を誇る三峡ダムが決壊するのではないか」と危惧されていることだ。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。関連キーワード
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