2024年12月23日( 月 )

琴奨菊優勝から学べ

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剛と柔を具備して相撲界を制覇

 2016年初場所において大関琴奨菊が日本人相撲取りとして10年ぶりに優勝の栄冠を掌握した。10年前に当時の大関栃東の優勝以来である。この2、3年、【早く日本人相撲取りの優勝の達成を】と叫ばれてきたが、その期待に応えたのが琴奨菊である。【我が故郷の英雄!!万歳】と出身地・柳川市は大いに盛り上がった。結果を見れば業界一の練習・訓練の魂男が優勝杯を抱えるのは至極当然である。ではどこに成長の証があったのか。

余裕の突進力

ryoukoku まずは15日間の相撲取り組みを振りえてみよう。8日目、稀勢の里を寄り出した。業界きっての馬力マンを土俵の外へ運び出したのである。10日目、横綱鶴竜を押し出しに下した。11日目、白鵬を寄り切った。今場所の白鵬には勝負執念が不足を割り引いてとしても正面から堂々と寄り切った勝利は珍しい。白鵬に何の抵抗させる余裕を与えなかったのは琴奨菊の突進力の賜物であろう。いつも土俵際に追い詰めながら白鵬から投げを打たれて負け悔しそうな顔をしている琴奨菊の記憶が浮かんでくる。悲壮感が漂っていた。だからこそ自信溢れる琴奨菊に直面すると非常に新鮮さを感じ興奮を覚えた。

 12日目、横綱日馬富士戦である。相手は軽量かもしれないが、一挙に土俵際まで攻めこんだ。横綱は堪えようと必死である。頃合いをみて小手投げで土俵の上に叩きつけた。そして優勝決めた千秋楽相手は豪栄道である。いつも土俵際で惹かれ、突き落とされて苦杯を飲まされた苦手な大関である。押し込みながらの突き落としであったから強烈である。豪栄道は簡単に転がされた。いつも琴奨菊が転がされていた逆の光景を目撃することになる。この勝利の二戦の勝利からは【柔軟な相撲運び】の境地が垣間見られる。相手の動きを察知しながらスムーズな相撲対応を完成したといえる。

地獄から生還して境地を深める

 2015年夏に結婚した以降の琴奨菊の相撲取組状況から秋場所、九州場所と全盛時期に迫る復活を果たしている感じを受けた。まずは(1)傷の全治、訓練魂の復活、突進力の蘇生、二場所で自信を蘇らせてきた。(2)そうなると自分の過去の相撲取り口の反省、研究に思考が巡らすようになる。【自分の型は突進力を活かした左差し右押しつけ・抱きかかえのがぶり寄り】と信じて戦ってきた。【しかし、惜しい負けを重ねる。勝たないことには意味がない】。
 【いなされ、引かれ、はたかれ、突き落とされて悔しい負けを繰り返す。どうして負けるのか?】と自問自答する。その解答を得ることになった。平易なことだ。【相撲は相手があってこそ成立するものである。自分の型だけに終始していて勝つものも負けてしまう。相手の動きを読んだ取り口対応が必要となる】という覚醒に及んだ。だからこそ相手を研究し相撲取り組みに柔軟性が具備されるようになった。これでは強くなるのは当然である。

 この琴奨菊の心境の変化・気づき・成長の法則は経営者にとっても教訓できるものである。特に沈滞している経営打開には悪戦苦闘している経営者にとって手引書になるのではないか。社員教育にも然りである。それよりも何よりも琴奨菊自身が次期大阪場所においても初場所同様の実力を発揮して二連覇することで本領が発揮されるということだ。横綱昇進を楽しみにしておこう。

 

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