【BIS論壇No.325】コロナ後の世界
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NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は2020年9月9日付の記事を紹介。
8月8日の内閣府の公表によれば、日本の4~6月期の第二次速報値は、GDP年率予想1次の27.8%マイナスから、さらに年28.1%減と記録的な落ち込み幅がさらに広がったリーマン・ショック直後の2009年1~3月期の年率17.8%減を10%以上大きく上回り、75年で最悪の落ち込みだ。GDPがコロナ前の水準に戻るには3~5年かかるとの悲観な見方が大勢を占めている。
とくに外食や衣料品、レジャーなどは大幅マイナスが続く。筆者がかねて活用している御茶ノ水界隈の料理店は3社のうちの1社を9月に閉鎖するという。支配人は外食の危機を唱え、年末に向けて外食産業はさらなる閉鎖や倒産に直面するだろうと悲観的な見方をしている。
BRICSも中国を除き、インド、ブラジル、ロシア、南アでコロナ感染者が上位を占め、南アでの感染者は合計60万人を超え、アフリカ全体の半数以上を占め、経済に大きな影響を与えている。同国の4~6月のGDP年率換算成長率は実に51%減と、コロナが資源安に追い打ちをかけている。7月にIMFに43億ドル(約4,500億円)の融資を申し込んだ。
コロナ後を見越し、ドイツはVWが世界販売の4割を中国で占めているにも関わらず、脱中国依存を転換。インド太平洋戦略で日本や韓国との関係強化を打ち出している。一帯一路での関係国への過剰債務問題、香港国家安全維持法の強行や、新疆ウイグル自治区の人権問題などを問題視し、ドイツは脱中国策を進めつつある。欧洲全体でも中国との関係は曲がり角を迎え、EUは2019年には中国を「競争相手」とする新たな対中戦略を確立した。
中国を主力市場としていた韓国サムスンも天津でのテレビ生産を11月に中止。ベトナムやメキシコ、ハンガリーのテレビ工場などに生産機能を移管。「脱中国」を加速。
すでにスマートフォンやパソコンでも中国生産を取りやめている。今後、製造やサプライチェーンの中国からの移管が加速するとみられる。一方、中国ではデジタル関連企業が自動車産業とともに経済をけん引しつつある。
米欧日が中心だった世界の産業界の重心はコロナ禍を機に中国を中心にアジアへ移動しつつある。コロナ禍で世界のコロナ対策の財政支出は10兆ドル(約1060兆円)を超えOECD加盟国の政府債務は130%に上昇。日本はほとんど200%に近い。コロナ後はテレワークやグローバルサプライチェインの分散化、企業や行政のデジタル化が不可欠になる。次期政権の総裁有力候補の菅氏は「安倍政権の7年余りは日本史上の汚点であることを心に刻み、森友、加計、桜を見る会など底なしの腐敗」(白井 聡)から脱却することに全力投球すべきだ。デジタル化のハードのみならず、ソフト面の構築。さらに経済、政治に倫理、道徳を持ち込み、失敗したアベノミクスを脱却。貧富の拡大阻止。4割の非正規雇用の正規化。先進国でもっとも遅れているPCR検査の拡大によるコロナ感染症対策に全力を投入すべきだ。 あわせリーマン・ショック以来10%も落ち込んでいるといわれる賃金の引き上げに400兆円という企業の内部留保を活用する方策を真剣に検討すべきだろう。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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