シャープ買収をめぐるドタバタ劇のガバナンス(前)
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2015年はコーポレート・ガバナンス(企業統治)元年と言われた。高株価をアベノミクスの生命線とする安倍晋三政権は、海外投資家を株式市場に呼び込むため、米国流コーポレート・ガバナンスの適用を始めた。利害関係のない独立社外取締役を2人以上置くことを求め、株主還元を増やした。海外投資家の期待は一気に高まった。社外取締役が形だけのものか。その試金石になったのが、経営再建中のシャープ買収をめぐるドタバタ劇だった。
社外取締役が機構案でなく、鴻海案に軍配を上げた理由
経営難のシャープ(株)は2月4日、スマートフォン(スマホ)や薄型テレビを受託生産する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業をスポンサーの有力候補に選んだ。その前日まで、メディアは政府系投資ファンドの産業革新機構で決まりと報じていた。「日の丸連合で技術の海外流出を防ぐ」という大義名分を掲げる革新機構は、土俵際で鴻海にうっちゃりを喰った。
鴻海はあくまで当て馬に過ぎず、シャープ再建は機構案が既定路線だったが、土壇場で「待った」をかけたのは社外取締役たちだ。メディアはこう報じている。〈関係者によると、次第にシャープの社外取締役からも「良い条件を選ばないと株主に説明がつかない」と、鴻海案を推す意見が強まったという〉(朝日新聞2月5日付朝刊)
金融支援案は、機構が約3,000億円を出資、鴻海は出資も含め約7,000億円を出す。金額が大きい鴻海案を蹴って、金額が小さい機構案を選んだのでは、取締役として善管注意義務違反に問われかねない恐れがあった。経営にかかわる役員は不正やミスを避ける善管注意義務を果たさず、会社に損害を与えると賠償責任が生じるからだ。
取締役会のメンバーは13人。(株)みずほ銀行、(株)三菱東京UFJ銀行が派遣しているほか、メガバンク出資のファンド、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)(株)から社外取締役を迎えている。彼らは機構案でなく鴻海案に軍配を上げた。
(つづく)
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