【BIS論壇N0.330】インドの現状と中印関係(後)
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NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は2020年9月18日付の記事を紹介。
インドでは、10カ所のGlobal in‐House Center(グローバル自社センター)、Mega Industrial Clusters(巨大産業集積地域)の建設を計画。とくに南部のチェンナイを中心にSri City(工業団地)を建設。自動車、および部品製造のIndustrial Corridor(産業回廊地帯)、India Electronics Corridor(インド電子機器回廊地帯)を建設。IT, Electronics Cluster(IT・電子機器集積地域)では、韓国サムスンと提携し、インドの携帯電話の40%のシェアを目指している。
さらにムンバイからオーランガバードのCluster(産業集積地)、R&D Center(研究開発センター)では自動車、医療機器の製造に注力。インドGDPの5%にあたる製造を狙っている。インド政府は2,410億円を投じ、中国からインドへの工場移転に注力するという。さらにSpecial Economic Zone(経済特別区)を構築し、輸入関税の無税化を目指している。とくに、インドの得意とするデジタル分野に関しては、25年までに市場規模が537兆円の産業に成長させることを計画している。そのために外資100%の企業の進出も認める。
さらに中小企業へは4兆2,300億円を活用し、無担保、自動融資を行う。7,100億円の中小企業投資資金や1,412億8,000万円の投資向けの資本などを通して、中小企業450万社への恩恵を施す戦略である。
コロナ禍の下で経済開発を行うため、インドの10州では労働時間を12時間にすべく労働法改正を行うという。インドはグローバルな巨大マーケットになりつつあり、いまだに労賃が安く技術力に優れた労働者の宝庫だ。そのうえに、インドはオープンで民主主義の価値を共有している。
日本は、インド向け投資国では世界第3位だ。「企業買収に関する法律も緩和されており、日本がインドに投資を拡大する好機であるため、ぜひインドへの投資を拡大してほしい。M&Aも歓迎する。インド工科大学などとも協力し、スタートアップ企業のハブをつくってほしい」と日本に強い要請がなされた。
質疑応答では、中印関係について質問があった。それに対して、中印関係の悪化は、長くは続かないとの見方の回答であった。しかしインドでは現在、中国からの投資は制限があり、政府の承認が必要だという。中国から電気バスを輸入する商談はキャンセルになったと言われている。インド人も商品を購入する際、中国製品は避けている。一方では、米国からの投資が急増しており、Facebook、Google、Amazonなどは100億ドル(1兆円)単位で巨大投資を行っているという。
インドは13億人の巨大市場で、加えて自由主義の市場だ。共産主義の中国と違い、民主主義の価値観を共有できて、英語も通用するため、英語圏、欧米とのビジネスがしやすい。「ぜひ民主主義の価値観を共有する日本からの経済協力、投資を期待する」と強い要請があった。
インドのポストコロナ戦略は包括的かつ、長期的で、日本の菅政権のデジタル庁の創設、スマホ料金値下げなどの政策と比べると雲泥の差だ。菅政権も目先の功をあせらず、インドのように将来を見据えた、包括的な戦略を確立することこそ喫緊の課題であろう。インドを見習うべきだ。
(了)
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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