2024年12月04日( 水 )

枝野幸男代表判断に2つの誤り

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「枝野幸男氏が2つの問題発言をしている。消費税増税に加担した過去を認めず、消費税減税を与党と協議しようとしていること。さらに野党共闘における共産党への非礼な対応だ」と訴えた9月23日付の記事を紹介する。


菅内閣および与党が臨時国会の召集日を10月23日か26日にする方向で調整に入った。
会期は50日程度を見込むという。

菅内閣が発足したが所信表明も行っていない。
臨時国会は9月16日から18日の3日間で閉幕した。
さらに1カ月も時間を空けるのだという。
迅速に仕事をする考えがないということだ。

菅首相は「国民のために働く内閣」と謳ったが、このことは、これまでの内閣が「国民のために働く内閣」ではなかったことを意味する。
これが当たり前なら、内閣の名称に用いる必要がない。
ほかの内閣とは異なる特色として「国民のために働く内閣」と称しているのだ。
もっとも、その言葉を信用する者はいない。

10月下旬に臨時国会が召集される。
日英EPA承認案が臨時国会に提出される。
また、ワクチン確保に関する法案、国民の祝日を異動させる法案の処理が念頭に置かれる。
もちろん、その前に所信表明演説と代表質問が行われる。

菅内閣は11月に法案を処理した段階で衆院解散に踏み切る可能性が高い。
投票日は12月に設定されることになるだろう。
候補は6日=先勝、13日=友引、27日=大安の3日だ。
20日の仏滅は避けられるだろう。

年末の27日=大安投票日の可能性を否定できない。
年明けの通常国会冒頭の解散では年度内の予算成立が難しくなる。

夏に都議選があり、その前後2カ月は衆院総選挙実施が極めて難しい。
結局、年内選挙がない場合には任期満了選挙になる可能性が高い。

2009年はこのパターンで自民党が野党に転落した。
2008年内の選挙を阻止して任期満了選挙に誘導したのは菅義偉氏。
麻生太郎氏は2008年秋に総選挙を実施しなかったことをいまなお悔やんでいる。

もっとも、麻生氏の人気は低く、総選挙が2008年でも大敗は免れなかっただろう。
総選挙先送りは麻生内閣の轍を踏むコースになる。

菅氏の頭のなかには、すでに年内衆院総選挙のイメージがしっかりと焼き付けられている可能性が高い。
しかし、解散風を吹かせれば、野党対応が一気に進む。

可能な限り解散風を抑止し、ある日突然、解散をぶち上げる考えだろう。
12月選挙に向けて得票につながるアクションを計画しているはずだ。
もっとも可能性が高いのは補正予算編成だ。

第3次補正予算で財政バラマキにとどめの一発を追加する。
10万円一律給付の二回目実施はあり得る選択だ。
選挙に勝つことだけが目的の集団だ。

13兆円の補正予算で投票を買うことができれば安いと考えている。
もちろん、菅氏が資金を出すわけではない。
国債を発行して一律10万円を給付するのだから菅氏の懐が痛むわけではない。

この買収資金で購入できる票数は膨大になるだろう。
補正予算案を提出し、「国民に信を問う」と述べて衆院解散に突き進む。
10月、11月の選挙で十分に有利なはずだが、さらにダメ押しの施策を加えて選挙に臨む考えなのだろう。

しかし、「策士策に溺れる」という。
臨時国会を召集する10月20日過ぎから、全国のコロナ新規陽性者数が急増する可能性がある。

アップル社が公表する人の移動指数によると、8月8日をピークに人の移動が減少傾向をたどった。
人の移動指数が4週間後の新規陽性者数と連動する。
10月中旬までは新規陽性者数の抑制傾向が持続する可能性が高い。

しかし、9月18日から人の移動が爆発した。
10月下旬から全国規模で新規陽性者数が急増する可能性がある。

臨時国会召集後に新規陽性者数が急増すれば、GoToトラブル政策の責任を追及されることになる。
その段階で衆院解散総選挙に踏み切れば批判が沸騰する可能性がある。
菅氏が情勢判断を見誤っている可能性がある。

枝野幸男氏が2つの問題発言を示している。
第一は消費税減税を与党と協議しようとしていること。
第二は野党共闘における共産党への非礼な対応。

枝野氏は悪徳の消費税増税首謀者の1人。
2010年7月参院選の当時、与党民主党幹事長の職にあった。
この選挙に向けて菅直人首相が突然、6月17日に消費税率を10%に引き上げることを参院選公約に掲げた。
民主的な党内手続きをまったく踏まない、民主主義のルールを逸脱した公約提示だった。

菅直人氏が首相に就任したのは6月8日。
首相就任9日後に、突然消費税率10%を参院選公約に掲げた。
政策責任者は玄葉光一郎政調会長。

この消費税増税公約で民主党は歴史的大敗を喫した。
民主党内閣を崩壊させたA級戦犯の1人が菅直人氏である。

枝野氏は2010年7月参院選が菅直人内閣に対する信任投票であると毎日新聞インタビューで明言した。

国民からの信託を得ていない菅直人内閣にとって参院選で勝利することが信任獲得を意味すると明言した。
その参院選で民主党が大敗した。

この時点で菅直人首相、枝野幸男幹事長は辞任し、直ちに小沢一郎内閣を発足させるべきだった。
2010年7月参院選で民主党が大敗したことで、この国の政治史が変質してしまった。

この選挙で勝利を重ねていれば衆参ねじれが解消し、政治刷新を実現する条件を整えることが可能だった。
しかし、菅直人民主党は参院選に大敗した。
そして、大敗の責任を明らかにせず、総理の椅子にしがみついた。

9月14日に実施された民主党代表選で勝利を収めたのは小沢一郎氏である。
しかし、選挙不正が実行された。
筑波学園局に郵送された党員・サポーター票のうち、小沢一郎氏票が抜き取られ、廃棄された疑いが濃厚である。

選挙の集計作業を請け負ったのが(株)ムサシである。

菅直人氏は居座り、後継首相に野田佳彦氏が就任した。
野田佳彦氏こそ、「白アリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」と絶叫した張本人である。

2009年8月15日の野田佳彦氏街頭演説の模様はいまなお確認できる。

1.2009年7月14日野田佳彦氏衆院本会議討論 

2.2009年8月15日野田佳彦氏街頭演説

野田民主党は選挙公約を一方的に破棄して「白アリ退治なき消費税増税」に突き進んだ。
この背徳の消費税増税に加担したのが枝野幸男氏だ。
天下りを完全に温存して消費税増税が決定された。

消費税収のすべては法人税と富裕層所得税の減税に充当された。
社会保障制度の拡充は一切行われていない。
この背徳の消費税増税に合意したのが民自公の三党だ。

枝野氏は、いまなお、過去の過ちを認めず、自己正当化に走っている。
だからこそ、消費税減税を自民党と相談すると言い放っているのだ。

公明党と組む自民党と闘うのだから共産党と連携する以外に道はない。
共産党が単独で政権を担うのではないのだから、共産党だけが主張する意見に振り回される必要はない。

自公の最重要の選挙戦術は「分断」である。
「資本主義を否定する共産党と共闘するのか」が野党分断のための常套句だ。
このフレーズを用いる者は自公の選挙戦術=策謀を実践する者に他ならない。

自民が公明党と共闘しているのだから立憲民主は堂々と共産党と共闘すべきだ。
因縁を付けられたら、「公明と共闘するのか」と言い返せばよいだけだ。

共産党を含む強固な共闘体制を構築して衆院過半数議席を獲得すること。
この1点に集中して候補者一本化を直ちに実現する必要がある。


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植草一秀の『知られざる真実』

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