元総合商社駐在員・中川十郎氏の履歴書(23)ブラジル・リオデジャネイロでの還元鉄および石炭液化プロジェクト
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日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏
リオグランデ・ド・スル州知事に面談
米国宇部興産・谷本社長と米国丸善石油化学・清水副社長が、ブラジル南部のリオグランデ・ド・スル州の還元鉄および石炭液化プロジェクトの出張途中でリオデジャネイロに数日間、滞在するため、「両氏に同行し、本プロジェクトに介入できるように努力せよ」とニチメン東京本社機械部からの指示が届いた。
谷本社長は、京都大学から米国イリノイ大学大学院に留学。同大学院の同窓生であるGEのジャック・ウエルチ会長と懇意だという。また、今回の出張で訪問するリオグランデ・ド・スル州知事もイリノイ大学大学院の同窓生のため、人脈を活用してプロジェクトを有利に運びたいという。清水副社長はプラスチック技術の特許を取得しているため、「ブラジルへの特許技術の売り込みにも協力してほしい」と要望された。谷本社長は大柄で、元気いっぱいのお人柄だ。聞くところによると、谷本社長の父は元陸軍中将だったという。
ホテルにチェックイン後、近くのボアッチ(バー)に両名を案内した。清水副社長は東大でピアノ部に所属しており、楽譜を見ずにショパンの曲を1時間も演奏できるという。バーのピアノで1曲演奏いただくと、音楽好きのブラジル人の客から喝采を浴びた。翌日はコルコバードの丘のキリスト像を訪問。さらに、世界三大美港の1つであるリオデジャネイロの海岸が一望できるロープウェイに乗り、観光を楽しんだ。
夕方、リオデジャネイロ空港から飛行機に乗り、ブラジル南部のポルト・アレグレに到着した。夜の遅い時間だったが、谷本社長のお声掛けでボアッチに繰り出し、ブラジルの名酒、カイピリーニャを飲みながら、清水副社長のピアノに耳を傾けた。
翌日は、谷本社長の留学仲間のリオグランデ・ド・スル州知事に面談した。リオグランデ・ド・スル州知事は、「ドイツが開発した還元鉄技術、石炭液化プロジェクトはまだ実証段階だ。清水社長のプラスチック技術は、実現までは時間がかかるが、活用を検討する」という。
不思議なご縁
筆者は数年後にニューヨーク駐在となったが、谷本社長は当時、2度目のニューヨーク勤務をしており、不思議なめぐりあわせに驚いた。当時は日本の対米輸出が超過しており、米国産品の輸入の要請が強く、対日輸出セミナーの開催や輸出産品の開拓に関してJETROの依頼があったため、米国各地に出張した。出張では、谷本社長といつも一緒だった。谷本社長、清水副社長とは日本帰国後も3人で会食し、リオデジャネイロやニューヨークでのご縁を大切にした。しかし、谷本社長は先年逝去されたために寂しく感じている。リオデジャネイロ、ポルト・アレグレ、ニューヨークでの谷本社長との日々を懐かしむ日々だ。
清水副社長は日本帰国後、薬物実証研究会社の常務として、長らく活躍された。ご趣味のピアノ演奏では年に1回、東大のピアノ仲間と演奏会を開催されている。先日は、筆者の娘家族とともに演奏会に参加した。ブラジル、米国、日本でのご縁を大切にしている。
清水氏はなかなかの勉強家で、同氏が開催するビジネス研究会で、加藤春一氏と知り合った。加藤氏とは同じ商社仲間ということで、急に親しくなり、日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS)の顧問をお願いしている。ご縁とは不思議なものだ。
清水氏は著書も多く、先日もBIS会員に送呈してほしいと、多くの著書をご送付いただいた。清水氏には、BISでもご講演いただいている。ブラジルで出会って以来、ご縁は45年にも及ぶ。90歳を超えられた清水氏のすますのご清祥とご健勝を祈る次第である。
(つづく)
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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