生死の境界線(4)不便な入院生活と予想より早い退院許可
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リハビリ師の急襲
病院側がもっとも神経を使うのは、血管障害である。手術を含めて1日中、動きが取れない状態でいると患者の血管が詰まり、最悪の場合には脳梗塞や心筋梗塞が発生する危険性があるため心配するのだ。20時間のロングフライト後に、飛行機内で足の血行不良によるエコノミークラス症候群になるリスクを想像するとわかりやすい。
9月24日午後1時過ぎにリハビリ師の急襲を受けた。「さあ、リハリビを始めましょう」という掛け声のもと、足指先から動かし始めた。右足・左足をそれぞれ20回蹴り上げる運動など、10メニューを寝ている状態で続けた。入院中には、ベッドで3回、リハビリルームで1回のトレーニングを受けた。
リハビリ師は「患者さまが手術や容態の悪化により動きが取れないと、血栓が詰まる懸念が高まります。このリスクを食い止めるのが我々の役割です」と言い、使命感に燃えているようだった。同院内には20名のリハビリ師が控えており、他の病院の患者の特別リハビリも引き受けているという。筆者は「日常生活でも、『ズボラ体操』を継続することの重要性を認識したからこそ、退院後も実行しよう」と固く誓った。
出血チューブから解放されて安堵
入室してきた医者、看護師は誰もが出血チューブ(管)の血液の色合いを見ながら、「まだまだ」「もう少し」と言葉を発する。筆者にはその言葉の意味がわからず、「どういうことを探っているのですか?」と尋ねたところ、「血液の色合いから、出血が止まったかどうかを判断するのですよ」との回答を得た。「なるほど」と納得したが、点滴装置を抱えて出血チューブを引っ張りながら院内を行動するのは非常に不便である。あまりに不自由で、トイレに行くのも苦労した。そのため、9月24日は病室に閉じこもったままであった。
9月25日の朝、主治医が2名の若い医者を引き連れて診察に訪れた。主治医が2人の医者に「管を外してよいか」との判断を委ねたところ、「もう外してよいでしょう」という回答があった。筆者は安心して「ありがたや、ありがたや!」と念仏を唱えた。看護師が早速、管を取り払う作業を行ってくれ、あとは点滴装置に「拘束」されるのみとなった。動きにも自由度が生まれ、「シャワーも浴びられるぞ」と思わず喝采した。昼前に、久しぶりのシャワーを浴びたときの気持ちは忘れられない。
午後に病棟の周囲を初めて一回りして、設置してあるお茶を飲み、その日の夜はのびのびと眠ることができた。筆者は「明日26日は土曜日だから、点滴装置を取り外す許可が出るであろう。日曜日に医者の健診はないだろうから、28日月曜日には翌29日の退院指示が出るのでは」と、睡魔に襲われながらも、順調に事が運ぶケースについて思いをめぐらしていた。
予想よりも1日早く退院が許可される
「27日日曜日朝の主治医の検診はないだろう」と思い込んでいた筆者は、朝7時を過ぎてもうつらうつらとしていたところ、8時前に主治医と2名の若い医者が突然入室してきたため驚いた。3名は筆者の顔を眺めながらデータに目をやりつつ、「明日28日に退院することを許可します」と伝えてきた。筆者は「幸運なことに、想定していたよりも退院が1日早くなった」と喜んだ。彼らはまた点滴装置も取り払ってくれた。
早速、妻に連絡すると、「そんなに早く退院して、本当に大丈夫なの?」と怪訝な返事が返ってきた。筆者も驚きの気持ちは抱いていたのは事実であった。
(つづく)
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