2024年12月22日( 日 )

【れいわ一揆再び】都構想否決!維新の牙城・関西で増す存在感 山本太郎・れいわ新選組代表

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都構想阻止に奔走した山本太郎代表

都構想否決後、維新の会見(11月1日)

 大阪都構想(大阪市廃止)の否決に貢献したのが、山本太郎・れいわ新選組代表だ。東京都知事選で小池百合子知事が366万票を獲得したのに対し、山本代表は2割弱の得票に止まって3位となり、「2019年参院選以降の“れいわ旋風”は勢いを失った」といった冷めた見方も流れたが、都構想住民投票で若者世代に浸透するなど存在感を示したことで、再び上昇の兆しを見せ始めている。

 山本代表は都構想の住民投票に向けて、ゲリラ街宣を連日のように繰り返していた。投票期間の終盤には約2週間大阪に滞在して、告示日前後にも大阪入り。11月1日の投票日は、投票箱が閉まる1時間前の午後7時過ぎまでゲリラ街宣を続行して精力的に反対を呼び掛けたのだ。

 関連記事やデータをモニターに映し出して説明するスタイルは、昨秋に始まった全国ツアーと同じで、聴衆への浸透力は抜群。事前に告知をしないにもかかわらず街宣中に聴衆は増え続け、終了後のツーショット撮影に列ができる光景もコロナ前の街宣と同じだった。関西は出身地ということもあるが、山本人気は消え去ってはいなかったのだ。

山本太郎代表の街宣(11月1日)

 その地域ならでは政治課題を取り上げるのが山本代表の街宣スタイル。大阪ではもちろん大阪都構想がメインテーマとなり、維新のキャッチフレーズである「大阪の成長を止めるな!」をデータベースで論破するのが大阪街宣の定番ネタの1つだった。「維新が言う『大阪の成長を止めるな!』。数字をみたら大阪の成長は、維新が知事と市長をとってから全国レベルでは止まったまま、いや下がっている」と繰り返し訴えていたのだ(本サイト10月27日公開の「二重行政解消後も他府県より低い成長率 都構想の不都合な事実」の記事は、山本代表の定番ネタを聞いたのがきっかけ)。

 最新動向を踏まえた街宣をするのも山本代表の得意技。維新が「大誤報」と批判した10月26日付の毎日新聞の記事(見出しは「市4分割 コスト218億円増」)を“援護射撃”しながら、その背景を解説するような街宣も行っていた。

 大阪ならではの演出もあった。俳優経験を活かしながら、維新にとって不都合な試算を楽観的試算に変える手法をわかりやすく伝えていたのだ。山本代表は、自身も出演した大阪が舞台のVシネマ『ミナミの帝王』の主役・萬田銀次郎をモノマネしながら、松井市長が4特別区移行の楽観的試算をつくらせる様子をドラマ仕立てで説明。聴衆は大ウケし、「そっくり!」と喝采があがった。

 本サイト10月31日公開の「維新の毎日新聞バッシングは無理筋な『言いがかり』 松井代表が財政局長に圧力か」では、毎日新聞に試算結果を出した大阪市財政局長が松井市長に厳重注意を受けた後、「捏造」と言い出した不可解さを紹介したが、突然の豹変の謎を解き明かすような街宣内容になっていた。

萬田銀次郎が「維新のウソ」を論破

囲み取材を受ける山本代表

 街宣でモニターを駆使するように、視覚的にわかりやすく論点整理するのも山本代表の得意技だ。YouTubeでは、都構想をわかりやすく解説する動画「仁義なき都構想(抗争)」をシリーズで制作して公開している。そこでは、ヤクザ風の2人組とキャバ嬢の会話からゲリラ街宣の場面に飛ぶ構成で、都構想の問題点をわかりやすく解説している。無関心層への浸透手段開拓に取り組み、新境地を切り拓いてもいたのだ。

 最後の最後まで都構想否決に全力投球をした山本代表は投開票日の11月1日、街宣終了後にフリージャーナリストの畠山理仁氏と私との囲み取材に応じた。

 ――最後までやり切ったという感じですか。

 山本代表(以下、山本) そうですね。もう体は限界です。毎日、ゲリラ街宣をやっていましたから。だいたい、朝立ちを含めずに6回。他のスタッフが手いっぱいなので、最初は演説会場から次の演説会場まで自分で車を運転していました。途中から助っ人が来て運転することはなくなりましたが。

 ――(ゲリラ街宣の)思いとしては、維新のデタラメさに大阪市民が気づいて欲しいということですか。

 山本 大阪維新はどうでもいいのです。大阪市民に実害があることが一番まずいですね。維新がやりたいことを実際に進めると、デメリットが多いということと。(コロナによる)この冬の混乱ということを考えると、何とかブレーキをかけないといけない。大阪の市民が受ける実害が、(都構想が)止まることによって冬に備えられるわけですから。

 ――(維新代表の)松井市長の試算もおかしいと。「(特別区移行後に黒字になるように)いい方に変えさせた」という話もしていました。

 山本 すごいですよね。(試算を出す)進め方が自治体のトップというよりも殿(様)とか、ブラック企業の社長のような感じですね。

 ――『ミナミの帝王』の萬田銀次郎以上の進め方だと。自分の部下に対してヤクザ的に「(都合が良い試算)結果を出せ!」という感じですよね。

 山本 ワンマン社長的な、かなりブラックですよ。やり方としてないですよね。

 ――毎日新聞の試算報道に対しても(維新は)「捏造」とか「大誤報」と言っていた。

 山本 結局、大都市法という実質、都構想のための法律を国につくらせたわけでしょう。そこまでできた維新が、政令指定都市ができたときの基準財需要額の計算方法がないと言い続けること自体がおかしい。この7~8年、何をやっていたのかという話です。その間に総務省に掛け合うことができていたはずです。やはり(4特別区への移行で)デメリットがはっきりして自分たちが不利になることで、出したくなかったのでしょう。(毎日新聞の記事が)「捏造だ」という言う前に、計算できていなかったことの問題のほうが大きいですよ。

 ――維新のパンフレットもデタラメと(街宣で)言っていました。

 山本 「これだけのことをやります」と散々うたっておいて、結局、それを誰がやるのかという答えは小さく書かれているわけでしょう。(4分割してできる特別区)区長の「裁量次第です」と書かれているわけでしょう。詐欺の手口ですよね。

 ――「水道料金が下がる」と言いながら特別区区長の裁量で値上げができる場合も十分あり得ると。

 山本 (水道料金値下げは)やるかやらないかは区長次第と言っても、元になる財源が大阪府に取られていますから、水道料金を今のままで維持できるという約束はできません。「府の方で値下げの財源は面倒を見る」ということは一切できていなくて、「特別区が何とかするのではないか。知らんけど」と言っている。

 ――(畠山氏)都構想の次のテーマは何ですか。

 山本 消費税廃止です。

 ――次はどのへんを回るのですか。

 山本 まだ決めていません。

 ――(農家に大打撃を与えかねない)種苗法改定が臨時国会に提出されそうですが(12日に審議入り)、(実家がイチゴ農家の菅首相の故郷の)秋田のイチゴ農家を回るとか。

 山本 すぐには無理ですね。体力を回復させないと、その後のダメージが大きいので。

 ――(畠山氏)休むのは数日ですか。

 山本 数日、休めるかな。結果次第ですぐに動かないといけないだろうし、結果次第で総選挙がどうなるのか変わりますよね。そう思います。

関西で党勢拡大か~前原氏に「刺客」投入?

 都構想否決の2日後の11月3日にも大阪市内で街宣、タレントで現役大学生の八幡愛氏を大阪1区の予定候補にすることも発表した。翌4日には、維新と連携に前向きの前原誠司・元国交大臣(国民民主党)が現職の京都2区に、マジシャンの中辰哉氏を立てることを発表。兵庫県生まれで大阪の高校出身の山本代表は、都構想否決の勢いを買って維新が強い関西での党勢拡大を目指しているのだ。

 菅政権と蜜月関係にある維新は共に新自由主義路線を突き進んでいるが、その維新の“牙城”を切り崩すことで日本全体の政治潮流を変えようとしているともいえる。関西から日本の政治を変える、ことになるのか。

菅首相と蜜月関係にある維新はともに新自由主義路線を邁進。
れいわが維新の「牙城」関西を切り崩すことで日本全体の政治の流れを変えようとしているのは明らかだ

【ジャーナリスト/横田 一】

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