【企業研究】ロイヤルホールディングス~コロナ禍で飛行機が飛ばず、創業事業の機内食事業が壊滅的な打撃!(4)
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外食大手の2020年7~9月期決算では、主要13中5社が最終赤字だった。新型コロナウイルスの影響による落ち込みは4~6月期で底打ちしたと見られていたが、人件費や賃料抑制など合理化が追いつかない企業が赤字となった。
ロイヤルホールディングス(株)の7~9月期の最終損益は54億円の赤字(前年同期は9億9,300万円の黒字)と、13社中の赤字幅はもっとも大きかった。ロイヤル“1人負け”の状態だ。「ファミレスの王者」ロイヤルに何がおきているのか?ロイヤルのお家騒動が勃発
ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」や「リッチモンドホテル」を運営するロイヤルHDの内紛は、外食産業にとって衝撃的な出来事だった。創業者が亡くなった後の混乱を見せつけることになったためだ。
お家騒動の発端は、2011年1月14日付で今井明夫会長を含む13人の株主が提出した株主提案。「1人の非常勤取締役による会社私物化」を告発した。対象は榎本一彦最高顧問。榎本氏は創業者の江頭氏から事業を託された後継者。福岡地所のオーナであり、大型商業施設キャナルシティを開業し、福岡の大物財界人となっていた。
今井会長らは「ロイヤルグループのリッチモンドホテルの運営子会社の株式を、福岡地所に売却するよう要請したばかりか、自分の親族を社長にすることを指示した」と主張した。菊地唯夫会長は2月3日、今井氏の会長職を解職し、榎本氏と今井氏を取締役から退任させることを決めた。3月25日の株主総会で2人の取締役の退任が確定した。
最高実力者の退任で創業家の存在感が増し、創業家は菊地氏の決定を支持した。筆頭株主は創業家の資産管理会社のキルロイ興産(株)(持株比率6.41%、現在は4.11%で2位株主)。キルロイ興産の社長は創業者、江頭匡一氏の息子の江頭繁明氏。2位株主は(公財)江頭ホスピタリティ事業振興財団(同6.35%、現在は6.20%で筆頭株主)だ。
今井氏が榎本氏を道連れに刺し違えたと言われたが、内紛の根本的な要因は、今もってよくわからない。内紛の火種になったのはリッチモンドホテルである。院政を敷く榎本最高顧問とホテル部門の今井会長のリッチモンドホテルの争奪戦だったのだろうか。2人ともなぜ、あっさり手を引いたのか。創業家はどうかかわったのか。今なお、わからないことが数多く残っている。内紛後、菊地氏が最高実力者となった。
ロイヤルの主力になったリッチモンドホテル
ロイヤルのホテル進出は1991年である。大和ハウス工業(株)、ロイヤル(現・ロイヤルHD)、福岡地所(株)などの出資で合弁会社・アールアンドディープランニング(株)(後に、ダイワロイヤル(株)と社名変更)を設立して、ロイネットホテルを運営した。2004年、ダイワロイヤルを大和ハウス側とロイヤル側に会社分割。ロイヤルが92%、福岡地所が8%出資し、アールエヌティーホテルズ(株)を設立して、ロイネットホテルの事業を継承。リッチモンドホテルの名称に変更して、ビジネスホテルを展開してきた。
ホテルはロイヤルHDを支える支柱だ。コロナ前の2019年12月期決算でみると、よくわかる。売上高は前期比2.1%増の1,405億円、経常利益は19.5%減の46億円だった。
うちホテル事業の売上高は302億円、経常利益は36億円で、売上高は全社の21.5%を占め、経常利益は、主力のファミリーレストラン「ロイヤルホスト」、天丼「てんや」の外食事業の経常利益(23億円)より多い。経常利益率は12.0%で、外食事業の3.8%を大きく上回り、リッチモンドホテルの好調でロイヤルホストの苦戦を補った。収益構造から見ると、ロイヤルHDはホテル会社が実態なのだ。リッチモンドホテルは18年度のサービス産業生産協議会の宿泊顧客満足度調査のビジネスホテル部門で4年連続1位に選ばれた。顧客期待、知覚品質、知覚価値、顧客満足、推奨意向、ロイヤルティの6部門でいずれも1位だ。
ロイヤルHDの顏は、ファミレスからホテルに代わってきているといえる。パーキング・サービスエリア内の飲食店を155億円で買収
ロイヤルHDは19年11月26日、給食大手の西洋フード・コンパスグループ(株)(東京・中央、以下、西洋フード)傘下でパーキングエリア(PA)などの飲食店、売店を運営する子会社を155億円で買収すると発表した。
買収する(株)シーエフエス(東京都中央区)は、東京湾に浮かぶ「海ほたる」(東京湾アクアライン)のPAや東名高速道路上にある海老名サービスエリア(SA)など12拠点で飲食店を運営してきた。売上高は約129億円、営業利益10億円で、SA・PA内の飲食店運営としては最大手。ロイヤルHD自身も高速道路や空港内で傘下の飲食店を14店経営しており、買収で店舗網を拡大する。
西洋フードが同事業を新会社に移管したうえで、ロイヤルHDがこの新会社の株式を20年2月に50%、21年2月に66.66%、22年2月に94.99%、23年12月に100%取得する。4年にわたり株式を分割取得することからも、高額投資による負担の大きさがうかがわれる。
コロナの直撃を受けて、ファミレスのロイヤルホストが大量閉店を余儀なくされ、ほかの事業の拡充強化が課題になっていたことが、同社を大型M&Aに向かわせたといえる。ロイヤルHDは、機内食のパイオニア、ファミレスの生みの親、ビジネスホテル「リッチモンドホテル」は顧客満足度ナンバーワンという輝かしい歴史をもつ。次は、サービスエリア、パーキングエリアの分野でトップ企業になってほしい。
(了)
【森村 和男】
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