未回収となった工事代金5.7億円をめぐり、JR九州子会社が前社長を提訴
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JR九州(東証一部)の子会社・JR九州住宅(株)(福岡市博多区)が、前社長・松尾純一氏を訴えていたことがわかった。
発端となったのは、エステート・ワン(株)(福岡市中央区)からの工事受注。JR九州のOBでエステート・ワンの顧問だった人物を介して、松尾氏はエステート・ワンと接点をもった。その後、JR九州住宅は、エステート・ワンが開発する低層分譲住宅(全51戸)の建築工事を受注。エステート・ワンにおいては、販売物件に【施工:JR九州住宅】という箔を付けることに成功した。しかし、物件の販売は低迷し、JR九州住宅への工事代金の支払いは滞り始めた。引き渡しは終わったものの、最終的に工事代金の7割が支払われず、JR九州住宅は、エステート・ワンの預金口座などに強制執行を行うも、回収できたのは僅か。未回収額は5億7,885万円に上っている。JR九州住宅は当時代表だった松尾氏に対して、請負契約に際し取締役会に諮らなかったこと、保全手続きを取らず引き渡したことなどが任務懈怠にあたるとし、損害賠償を求めている。
これに対し松尾氏は、取締役会の席上で報告したが異論が出なかったこと、累積損失解消のため受注するメリットがあったことなどから、任務懈怠はなかったと反論している。また、松尾氏とエステート・ワンをつないだ前述の紹介者には、エステート・ワンから謝礼が支払われており、うち4割が第三者を通じて松尾氏に渡ったこともJR九州住宅は主張しているが、松尾氏は過去にJR九州住宅が行った調査で否定していた。今回の訴訟で触れられていない松尾氏のリベート疑惑については、「オーバーローンに納まらない JR九州住宅のコンプライアンス欠如」『I・B』(2399号、2018年12月27日所収)を参考にされたい。
なお、エステート・ワンはすでに事実上の倒産状態にあり、今年4月には所在地を確認できないとして国交省(九州地方整備局)から宅建業許可を取り消されている。18年10月、JR九州住宅では、住宅ローンの融資に関する資料を偽造し、実際の工事請負金額よりも水増しした金額を施主にローン申請させ、金融機関に過剰な融資を行わせていたオーバーローン問題が発覚。契約書の偽造や改ざんが常態化していたことなどが問題となった。JR九州は第三者委員会を設置し、再発防止策の策定を行ったが、調査した期間のうちかなりの期間において代表取締役を務めた松尾氏については「黙認していた可能性が否定できない」としながらもヒアリングさえしていなかった。
15年3月期に大幅赤字を計上し債務超過に陥ったJR九州住宅は、19年3月期に8億円を超える最終赤字、20年3月期も9,265万円の最終赤字を計上。9億円を超える債務超過の状態となっている。【永上 隼人】
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