【BIS論壇N0.334】RCEP、TPP、APECの動向
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NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は2020年12月1日付の記事を紹介。
11月15日、日中韓、ニュージーランド、豪州、東南アジア諸国連合(ASEAN)アセアンの15カ国によるRCEP(東アジア地域包括的経済連携)が合意に達した。2012年11月にRCEP交渉の立ち上げを宣言して以来、8年がかりで合意が実現した。域内人口は22.7億人で世界の30%、GDP(国内総生産)は25.8兆ドルで世界の30%、貿易総額も5.5兆ドルで世界の30%を占める巨大経済圏が誕生することになる。日本の輸出に占めるRCEPの割合は43%、輸入に占める割合は50%である(ともに2019年の数字)。
メデイアは、日本にとっては最大の貿易相手国である中国と3位の韓国との初めての自由貿易協定になると歓迎する論調だ(朝日新聞11月12日付)。
一方、インドが参加しなかったことに関して、RCEPにより日本のGDPは5%増加するが、インドが参加しても0.1%増えるだけだとの、インドを過小評価した見方もある(日本経済新聞11月12日付)。しかし、OECDの予測によれば、インドは2060年にGDPで中国を抜き、世界最大になるという。インドは21世紀の情報産業時代にICT,AI,5G、DXなどの分野で世界をリードしつつある。
また、インドは南西アジアでも盟主としてSAARC(南アジア地域協力連合)で力を発揮している。さらに、歴史的にもインドは22世紀の大国アフリカとも関係が深い。ほか、中国、ロシアが注力しているユ-ラシアの広域経済圏機構「上海協力機構」の有力メンバ-でもある。一方、日本が注力する「インド太平洋構想」はインドを主要メンバ-としている。インドを中国に対するバランサ-として日本はインドを重視すべきと思われる。
RCEPに関する日本のほかのメデイアの評価に対して、月刊情報誌「選択」12月号は次のように手厳しい評価をしている。
「21年後に中国に醤油、パックご飯、焼酎の関税をゼロにしてもらってなんの意味がありますか」「RCEPの関税撤廃範囲と税率、時期はTPPの既存の2国間FTA(自由貿易協定)とはけた違いに低水準だ」「ASEANの途上国なみのおままごとの自由化、市場開放でお茶を濁したのが実態だ」(同31頁)
中国の習近平国家主席は11月20日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で環太平洋経済連携協定(CPTPP)への前向きな姿勢を打ち出した。しかし、中国の現状では条件の厳しいTPPへの参加は容易ではない。中国の狙いはTPPをてことして、日本に近づき、日米関係にくさびを打ち込むこととの見方がある(日本経済新聞11月28日)。
いずれにしても、関係国はRCEPの経験を基に、今世紀に世界の発展センタ-になるアジア太平洋の21カ国・地域(米国、ロシア、台湾含む)の広範な地域の国々の経済発展、貿易拡大を目指すAPECの具体的な協力対応策を検討、自由貿易を拡大する方策をアフターコロナのRCEPの国際戦略として、コロナ対策も含めて早急に行動に移すことが必須であろう。日本のリーダーシップとイニシアティブが強く求められる。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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