寡占化を推進するヤマダ電機(5)規制緩和と家電特需が後押しした急成長

外部環境が大きく変化

 (株)ヤマダホールディングスは、①創業(1973年)から 80年代までの事業の基礎を固めた時期、②2000年代までの業界トップになるまでの時期、そして③住宅事業など事業の多角化を推進する時期を経て今に至っている。今回と次回は②について見ていく。

 同社は01年に売上高日本一を達成(同社沿革より)し、05年に1兆円を突破するなど、00年代に入ってからも急速な成長を続けた。この躍進については、大型店の展開、低価格戦略、物流・情報システムの整備などの経営努力が奏功したのはいうまでもない。

 ただ、1990年代から2000年代にかけて、日本の小売業と家電市場には大きな構造変化が起きていた。大規模小売店舗法(大店法)の規制緩和、バブル崩壊後の消費者の価格志向、地上デジタル放送への移行、家電製品の省エネ化などである。同社はこうした外部環境の変化と自社の成長戦略をうまく重ね合わせることで、全国最大の家電量販店へと駆け上がったとみることができる。

 1974年に施行された大店法は、大型店の出店によって地域の中小小売業者が大きな影響を受けることを防ぐため、大型店の新増設や営業時間などを調整する仕組みを設けていた。80年代には出店抑制的な運用が行われていたが、92年には出店規制は大きく緩和された。

 そして2000年6月には大規模小売店舗立地法が施行され、大店法は廃止された。新しい法律では、大型店の出店そのものを中小小売業保護の観点から調整するのではなく、交通渋滞や騒音、廃棄物など、周辺地域の生活環境への影響を調整することが中心となった。

 この変化は、広い売場を必要とする家電量販店にとって大きな意味をもった。ヤマダ電機は1980年代から大型店「テックランド」を展開していたが、90年代にはこうした大型店を全国各地へ広げることが容易になった。大店法の規制緩和は同社だけに有利に働いたわけではないが、大型店を大量出店できる企業にとっては、成長のための制度的な追い風になったのである。

バブル崩壊も成長の契機に

 もう1つの外部要因が、90年代の景気低迷。バブル経済が崩壊すると、消費者の購買姿勢は大きく変化した。所得や将来への不安が強まるなか、家電についても「できるだけ安く購入したい」という価格志向が強まった。ここで同社のビジネスモデルが威力を発揮。大型店で大量の商品をそろえ、大量に販売することで仕入れや物流の効率を高め、低価格を実現するというモデルだ。価格にシビアな消費者が増えたという社会の変化と、ヤマダの低価格販売モデルが一致したことが重要なのである。

 さらに、自動車社会の進展も大型ロードサイド店の拡大を支えた。駐車場を備えた大型店舗なら、テレビや冷蔵庫、洗濯機などの大型商品をまとめて購入できる。家電を「近所の電器店で買う」時代から、「車で大型店へ行き、商品を比較して安く買う」時代への変化が進んだのである。

 2000年代に入ると、家電市場そのものに大きな買い替え需要が発生する。テレビのデジタル化によるものだ。03年12月、三大都市圏で地上デジタル放送が開始され、その後、全国へと拡大。11年7月には、東日本大震災の被災3県を除いて地上アナログ放送が終了した。このアナログからデジタルへという政策の大転換は、テレビの買い替え需要を生み出した。従来のブラウン管テレビをそのまま使い続けるのではなく、地上デジタル放送に対応したテレビへの買い替えが必要になったためである。

 しかも、単純な買い替えではなかった。薄型テレビ、液晶テレビ、プラズマテレビなど、新しい商品カテゴリーが急速に普及した。テレビは壊れたから買い替える商品から、技術が変わったから買い替える商品になったのだ。これは家電量販店にとって極めて大きな商機。テレビだけでなく DVDレコーダーやゲーム機など関連商品を販売することもできた。デジタル化は、1つの商品カテゴリーの買い替え需要にとどまらず、家電量販店の売場全体を活性化させたのである。

省エネ政策も

 家電市場では、もう1つ重要な政策変化があった。省エネ政策である。1998年の省エネ法改正で「トップランナー制度」が導入され、99年から施行された。これは、その時点で商品化されている製品のなかで最も優れた省エネ性能を基準にして、将来の目標基準を設定する仕組みである。エアコンやテレビなどが対象となった。

 2000年には省エネルギーラベルが導入され、06年には小売事業者表示制度が設けられるなど、消費者が商品の省エネ性能を比較しやすい環境も整備された。メーカーに省エネ性能の向上を促し、新しい高効率製品を次々と市場に投入させる効果をもった。消費者にとっても、「古い家電を使い続けるより、省エネ性能の高い新製品へ買い替えたほうが電気代を抑えられる」という意識が広がった。

 09年には、地球温暖化対策、景気対策、地上デジタルテレビの普及を目的とした「家電エコポイント制度」が始まった。対象となったのは地上デジタル放送対応テレビ、エアコン、冷蔵庫であり、制度による購入促進はテレビを中心に大きな需要を生み出した。

 「デジタル化」と「省エネ化」という2つの政策的・技術的変化が、家電の買い替えを促す方向に働いたが、ヤマダ電機の成長はこうした市場環境の変化に対して、大型店舗、全国展開、低価格、物流、情報システムなどを組み合わせた結果ともいえる。ただ、こうした市場環境の変化とその対応は、家電量販店の拡大について限界点を示すこととなり、業界再編を促すこととなった。

 それを如実に表すのが、ベスト電器の買収についてであり、次回はそれを深掘りする。

(つづく)

【田中直輝】

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