2024年11月23日( 土 )

良きライバル福岡市前副市長・貞刈厚仁氏*中園政直氏~最後にはどちらが笑うか(3)呪われた下川端地域

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 中園・貞刈両副市長の第二のビジネス人生は、中園氏が博多港ふ頭(株)・貞刈氏が(株)博多座。どちらも福岡市の「関連会社」として超一流に位置付けられており、副市長が退任後に就くポストである。だから2人とも「同格企業」に天下りした。スタートはお互いイーブンである。皆さんご存知かどうか知らないが、副市長経験者は70歳までポストが保証されることが慣例となっている。しかし、コロナ襲来により博多座の経営状態が悪化し、社長の給料がカットされたようである。

文化の香りが充満するストリートが欲しいのだが…

 ニューヨークに行くたびにミュージカルを堪能してきた。筆者だけではなく、日本人の多くがニューヨークに行ったらミュージカルを観に行くだろう。日本ではまったく観ないくせにだ。これまでニューヨークで観た最高の演目は「ミス・サイゴン」で、博多座でも堪能した。ニューヨークを観光する者は、ミュージカルに対し、莫大なお金を落としている。そのため、この地では芸術・芸能産業が繁盛している。おそらく「ブロードウェイ」について知らない者などほとんどいないだろう。

 東京でも「芸術通り」をあちこちで見かける。その1つに帝国劇場周辺が挙げられる。超高層・丸の内ビルの一画は文化の香りが充満しており、帝国ホテル1階の喫茶店から外を見渡すと、その息吹を感じられる。さすが日本一の国際都市・東京、魅力がある場所やモノがたくさんある。福岡にも「芸術の匂いが漂う帝国劇場周辺のようなストリートを福岡に誕生させよう」という粋な計らいをした人たちがいた。

文化的な香りを醸しだしていた時期も

 偉大な発想をしてくれた方々のおかげで1999年に博多座がオープンした。しかし、事業が軌道に乗るまでは悪戦苦闘の日々が続いた。「福岡には博多座を支えるような市場がない。愚かなことをしてしまった」との批判も高まった。「国際都市・福岡の魅力の1つとして博多座が必要」と訴えていた人たちも立場を豹変させ、「廃止せよ」と叫びだした。

 ささやかながら筆者も博多座のために貢献=家族孝行に努めた。毎年11月には宮崎に住んでいた長女を招き、大相撲九州場所と博多座に連れて行った。宮崎に帰った長女は、博多座がいかに素晴らしかったかを周囲に話し、これに感化された宮崎の友人たちが年に数回、4~5人で博多座へ観覧に来るようになった。博多座で観覧して感動されている方々(大半がご婦人たち)を目撃して「博多座の灯を絶やしてはいけない」という使命感がより一層“メラメラ”と燃え上がり始めた。

 いかに「芸術の香りを醸し出す通りを登場させよう」と気張っても博多座の業績が順調でなければ、それも不可能である。筆者の肌感覚でいえば「理想的な文化の香りが充満していた時期」は、芦塚社長時代の2015年前後2年間ではなかっただろうか。当時は業績も好調だった。ところが今や周辺は閑散としており(写真を参照していただきたい)、博多座の周辺を歩く気がしない。実は、この地区には呪われた歴史があるのだ。

鏡天満宮でも守れず

鏡天満宮 博多座の地下に西日本シティ銀行博多支店がある。博多リバレインが建設される前、この場所には西日本銀行博多支店があった。その前は西日本相互銀行本店、戦前は西日本無尽の本店だった。

 昭和20年、太平洋戦争末期に福岡(旧・博多地区)はアメリカの爆撃機による大規模な空襲を受けた。そのため住民たちは大挙して西日本無尽の地下金庫に身を隠した。しかし、空襲が終わり地下金庫の扉を開けたところ、避難していた人々は蒸し焼き状態で、50人以上の亡骸があったという。

 その後、同地区は下川端商店街として賑わっていた時期もある。アーケード街には人が集まり、常に活気があった。博多の市場の役割をはたしてきた同商店街の地元住民たちは、空襲被害者たちを手厚く祭ってきた。だから繁盛し続けられたのだ。その一例が鏡天満宮の設置である。だが、この鏡天満宮さまでも守り切れない「欲の塊」のような再開発計画が始まった。

「強欲集団」(株)都市未来ふくおかの設立

 その計画とは下川端商店街を解体して天神、博多駅界隈に続く地区にしようという「博多地区復興巨大プロジェクト」だった。その中核企業が(株)都市未来ふくおかである。同社は1988年10月に設立、資本金138億5,000万円の福岡市が出資する第3セクターだ。もともと、第3セクターには福岡7社会が出資するのが常だった。今回異様だったのは全国大手の建設会社が出資者だったからである。

 考えていただきたい。都市未来ふくおかには受注するゼネコンが名を連ねている。そしてその株主であるゼネコンが受注するのだ。「当然、工事単価が高騰する」という危機感を抱くのは当然である。予測通り、平成バブルの後押しがあって全体の工事高は1,000億円に達した。ゼネコン担当者たちは、昼間はゴルフ、夜は中洲通いだったそうだ。

強欲会社潰れる

 リバレインのビルを昇り降りすれば「こんなにエスカレーターを設置する必要はないな」と素人でも感じる。要はマネジメントする側に原価意識がないのである。コスト高のビルを黒字で運営できるわけがない。都市未来ふくおかは2010年10月に特別清算を申請した。負債総額約82億円。あまりの欲得のため鏡天宮の力をもってしても守ることは不可能だった。

 ここから喜劇・悲劇が生まれる。出資していたゼネコンは株を失ったうえに負担金も強要された。結果、儲けから差し引きすると赤字になったケースが多かった。このリバレイン工事の担当者たちは出世コースから外れ、降格させられたという話も聞く。

 シリーズ(1)で述べた通り、当時福岡市職員だった貞刈氏は再生指導の現場に立ち会ったこともある。呪われた地で手腕を発揮するのは大変だったことだろう。

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