「こだわり」と「挑戦」をキーワードに次の100年へ
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有澤建設(株)
顧客の要望にとことん向き合う 『建物のかかりつけ医』的存在
2016年に創業100周年を迎え、同年4月には本社を建て替えた有澤建設(株)。福岡市内のマンションをはじめ、商業ビルやホテルなどさまざまな建物や施設の建設を手がける同社の年間実績は、およそ20の完成棟数に上り、完工高は年々増加している。数多くの案件を手がける背景には、老舗企業としての信頼以外の要因がある。同社の魅力を紐解いていく。
同社は「品質へのこだわり」「安心・安全へのこだわり」「地元へのこだわり」という3つのモットーを掲げている。良質な建物を提供するため、少しの妥協も許さないというプライドが社員に根付いていること、そして顧客の納得がいくまでとことん付き合うという「建物のかかりつけ医」のようなスタンスが顧客から高い評価を得て支持されているのだ。
また、挑戦し続ける姿勢も魅力の1つだ。堅実に実績を重ね、大きな挑戦を蓄積してきたからこそ、新しい価値を生み出し、前例のない方法を編み出したり、積極的に変化を生み出す原動力につながっているといえる。近年の施工実績のなかには、市場や武道館といった特殊な案件も増えてきている。
なかでも同社のチャレンジ精神がわかるマンションがある。それは(福岡市博多区)だ。同物件では、施工コストに優れ、森林資源の有効活用につながる木造建築法として高く評価されるCLT工法(ひき板を木の繊維方向が直交するようにして層のように貼り合わせた重厚のパネルを構造体に利用する工法)を取り入れた。この工法は、普及が進んでいるものの国内ではあまり例のない特殊な工法だという。
さらに、人とペットの共生をコンセプトにした賃貸マンションに同工法が積極的に採用された点が、19年度のグッドデザイン賞受賞につながった。森林資源の好循環と低炭素社会の実現を目指して、構造材や造作材のすべてにうきは市や八女市域の福岡県産材木を使用したことも高く評価された。
代表取締役社長を務める木下英資氏は、「CLT工法による中高層階の建築事例は国内でもほとんどなかったため、参考になる事例がなく、ほぼゼロからのスタートでした。当社でも初の取り組みだったので、工程管理を組むのも試行錯誤の連続でした。現場には相当負担をかけましたが、その甲斐あってオーナーさまも納得のいく物件になったと思います」と振り返る。
関係するすべての人への配慮が絶大な『信頼関係』を育む
協力業者との連携にも十分に気を配る。それをうかがわせるのが、現場からあがる声だ。「こだわりが強くて難航しそうな案件でも柔軟に、迅速に対応してくれる」「毎日の工程管理をしっかりとしてくれるので働きやすい」「無理難題は言わない。変更や追加工事にも嫌な顔をせずに対応してくれる」「同じ立ち位置で接してくれるので本音で話ができる」など、関係者への配慮が徹底されていることが紹介やリピートにつながっている。「誰もが働きやすい環境を整える」。それが社内で徹底されているからこそ、現場での評価が高い。施主からの要望にも柔軟に対応できるのは、協力業者と信頼関係をしっかりと構築できているからだといえよう。
こうした厚い信頼関係から、新型コロナウイルスの感染拡大に際しても、作業を止めることが難しかった建設工事現場も多数あったが、社員および協力業者は手を止めることなく工事に邁進。もちろん、すべての作業員に検温を行うほか、マスク着用、消毒の徹底、ソーシャルディスタンスの確保といったベーシックな感染対策をとり、万全を期して行っている。
一方、社内では感染対策として総務部、経理部、営業部は交代出勤の実施とテレワーク勤務を本格導入した。「同社では、リモートデスクトップ機能やオンライン会議ツールのZOOM、SNSツールを活用して会議を行い、コミュニケーションを取りました。現在は通常に戻せる部分は戻しつつ、使い勝手が良いツールなどは引き続き使用しています」(木下代表)。とくにZOOMでの会議では普段無口な作業員が通常の会議より発言するなど新しい発見もあったようだ。
次世代の建築業界を担う大学生とともに環境と社会、経済について考え、学ぶ
「働きやすい環境を整える」のは、同社が重視する人材育成を円滑に進めるためでもある。木下代表はいう。「正解がわからない時代だからこそ主体的に考え、道なき道を開拓し組織を導くリーダーシップが必要です。それは社員全員がもつべきだと考えています」
正解がないからこそ、自分自身の意思をもち、顧客の潜在的なニーズを正確に捉える人材が必要だ。そこで木下代表は、産学連携プロジェクトをスタートさせた。
その1つが福岡女子大学と提携した協同プロジェクトだ。産業界を中心に各方面で話題のSDGs(持続可能な開発目標)を思想とした、「持続可能なまちづくり」を産学連携で考えるプロジェクトを立ち上げている。そのほか、マンションリノベーション研修では、平尾地区の管理物件を対象に、学生と有澤建設選抜メンバーがリノベーションの提案を行っている。
「学生ならではのフレッシュな発想は、社員たちに良い刺激を与えてくれると思います。SDGsに関しても長期的に社内に浸透させていきたいと考えていますので、こういった取り組みで社員たちから自発的に意見が出るようになれば幸いです。基本的に私は報告を受けるだけで口を挟まないようにしています。それが学生や社員たちの成長につながると考えています」(木下代表)。
そのほかにも九州産業大学からインターンシップを受け入れ、現場体験や竣工物件巡り、営業の企画提案から受注、着工の流れを説明するなど、学生たちとの接点づくりにも注力している。「良い人材がいれば常に受け入れたいですね。理想は1年に1人の若手を採用していくことです。施工管理となると育成までに時間がかかりますから」と笑顔で語る木下社長。その目には100年先の有澤建設が映っている。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:木下 英資
所在地:福岡市博多区博多駅南4-4-12
設 立:1967年9月
資本金:9,000万円
TEL:092-433-1811
URL:https://arisawa.jp
<プロフィール>
木下 英資(きのした えいすけ)
1971年福岡県生まれ。95年に早稲田大学を卒業後、西日本旅客鉄道(株)(JR西日本)に入社。2000年10月に有澤建設(株)に取締役社長室長として入社。05年に常務取締役などを経て、10年10月に代表取締役社長に就任した。趣味はゴルフ。▼おすすめ企業・経済記事
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