2024年11月08日( 金 )

レオパレス21をソフトバンク系投資ファンドが傘下に、狙いはOYOへの転売か(後)

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 経営再建中の賃貸住宅大手レオパレス21(以下、レオパレス)を救済したのは、孫正義氏が率いるソフトバンクグループ(SBG)系の米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)だった。早くも、SBGが出資するインドの格安ホテルチェーンOYOに転売するのではないか、との観測が出ている。すでに、OYOはレオパレス21の創業者がつくったMDIを買収している。SBGの総帥・孫正義氏の狙いを検証する。 

MRIがSBGに救済に駆け込んだ

 深山祐助氏は、2006年3月期にレオパレス株の14.66%を保有する筆頭株主だったが、順次売却していった。

 レオパレス株を処分した金で08年10月、(株)MDI(エムディアイ)を設立。MDIはレオパレス21に変更する前の商号だ。自分を追い出したレオパレスへの当て付けと見られた。レオパレスと同じビジネスモデルでアパート建設に乗り出した。

 MDIは13年、銀座4丁目の歌舞伎座タワー完成と同時に入居した。5代目歌舞伎座新劇場の背後にそびえる地下4階25階建の高層オフィスビルで、MDIは7階から10階の4フロアを占める。

 同社のホームページによると、事業内容はアパート・マンションなどの建築請負およびその後の運営・管理、コンサルティング事業。社員数は1,204名(20年4月末現在)。管理戸数は3,218棟、3万9,373戸、入居率99.3%(20年3月期)。19年3月期の売上高は1,140億円。「準大手」と位置付けられるアパート建築会社だ。

 ところが、レオパレスの違法建築問題で事態は暗転する。決定的だったのは、レオパレスの外部調査委員会が19年3月に発表した違法建築の中間報告だった。

 報告書は「一連の施工不良は、創業者・深山祐助氏の指示によるもので、意図して組織的に行われていた」と指摘。施工不良の元凶は、深山祐助氏だった。

 レオパレスの違法建築問題はMDIに飛び火した。取引先の不信感が募り、収拾が付かなくなり、深山氏はMDIの会長を辞任した。

 MDIの経営陣は19年5月、SBGに駆け込み、資本提携を申し入れた。株主を深山祐助氏からSBGに交代して、信用を回復するのが狙いである。かくして、MDIはSBG=OYOグループ傘下に組み込まれた。

SBG=OYOはレオパレスとの提携に動いた

 ほぼ同じ時期に当たる19年夏には、SBG=OYOはレオパレスとの提携交渉を進めていた。SBG=OYOが狙った本命はレオパレスだった。不動産賃貸サービス「オヨ・ライフ」を立ち上げたが、部屋の確保が進まず、苦戦していた。

 オヨ・ライフにとって、「敷金礼金・前家賃ゼロ」を武器に、管理戸数約57万戸を誇るレオパレスは魅力的に映った。レオパレスのアパートを利用する約6割が法人。その多くが社宅として利用しているため、個人よりも安定した収益が見込まれる。

 施工不良問題の噴出により経営が揺らいでいるレオパレスの買収に動いた。狙いはレオパレスが大量に保有している賃貸物件のオーナーだ。既存のオーナーが管理会社から乗り換えることで管理戸数を増やす。不動産賃貸業界には“黒船到来”だ。

 そうした動きをビジネスチャンスと捉えたのが、物いう株主、村上世彰氏が率いる投資会社のレノ。グループの投資ファンド2社を通じて、レオパレスの第2位と第3位の大株主に躍り出た。

 レノがレオパレス株を取得したのは、OYOがレオパレスのTOB(株式公開買い付け)を実施する際に、高値で売却して売却益を得ることが目的だ。

 レノは当初、レオパレスの現経営陣を支持する姿勢を面談や書簡で示していた。ところが、決定的な対立が起きる。資本提携の交渉にレノが関与を求めたからだ。

だが、レノがTOB価格の要求額のつり上げを求めたため、交渉が決裂したとされる。これで、レオパレスとレノの関係は悪化した。

ならばと、村上氏はSBGにレオパレス株の買い取りを求めた。だが、村上氏が時価の3倍近い高値を提示したため、孫氏が高すぎると難色を示し、交渉は決裂した。

 そうこうしているうちに、OYOと提携して一緒にオヨ・ライフを運営していたZHDが合弁を解消、保有株をOYO側に買い取ってもらい、この事業から撤退した。一度は、レオパレス買収の可能性は消えた。

レオパレスをOYOに組み入れる

 事態が急展開したのは、20年9月28日。レオパレスは「20年6月末時点で118億円の債務超過になった」と発表した。18年5月に施行不良が発覚した時点では、35%を超える高い自己資本比率を誇り、事業継続に何の支障もなかった。それが、2年後に債務超過に転落する。

 21年3月期末時点で債務超過であれば東証一部から二部に降格し、1年後も解消できないと上場廃止になる。新型コロナの感染拡大を受け、アパートのオーナーから借り上げて転貸するサブリースの需要が落ち込み、このままの状態で推移すれば、経営破綻しかねない。レオパレスは瀬戸際に追い込まれた。

 その2日後の9月30日、SBG系の不動産ファンドのフォートレスが、レオパレスの救済に乗り出した。救世主は、一度は身を引いたかに見えたSBGだった。完全子会社のフォートレスがレオパレスの筆頭株主に躍り出た。

 孫正義氏の狙いは何か。ずばり、レオパレスをOYOに組み入れることにある。MDIに続いてレオパレスを手にするOYOは、日本一の賃貸住宅会社になる。

(了)

【森村 和男】

(中)

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