2021年新年冒頭の警告 米中激突の狭間で「商売優先」の姿勢は許されない
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(株)データ・マックス 代表取締役社長 児玉 直
200年の恥を晴らす戦略―習独裁政権
まず、筆者の立場を明確にする。近代における日本の中国に対する侵略行為は、深く陳謝しなければならないと信じている。中国の悠久の歴史も尊敬に値するものだ。さらに、これまで公私問わずたくさんの中国人と出会い、その1人ひとりの逞しい生命力に感服させられてきた。中国共産党政権との関係も、できるだけ友好関係を保つことに努めるべきだろう。ただし、「習近平独裁」の拡大路線は断じて許すわけにはいかない。習国家主席以外の中国共産党グループが、平和を指向する信頼に足る政治体制を構築することを望むのだ。
駐日ベトナム大使だった方の指摘から始めよう。いわく、「これは習氏だけではない中国共産党幹部たちの概ね共通意識。1800年代から2000年までの200年間、中国の歴史は日本を含めた西洋列強から侵略された屈辱の歴史でもあった。偉大な漢民族にとっては恥ずべき時代であり、中国の国家戦略は大中華の威厳を取り戻して西洋列強を軍門に下らせるという壮大な〈恨み返し〉の思惑を秘めている」と。
中国の国力を世界第2の超大国にまで育て上げたのは、誰あろうアメリカそのものだ。つまり、アメリカは、ビジネスや科学技術に関するすべてのノウハウをほぼ無償で提供してきたといってもよい。中国はその巨大な人口(マーケット)を盾にメリットを総取りし、しかし自身の手の内はまったくオープンにしようとしなかった。「アメリカ打倒」の戦略が明るみになるにつれて初めて、アメリカは慌てて中国締め付けに走るが、もう遅い。完全に手遅れだ。まず、習共産党独裁政権の侵略ターゲットは歴史上最大の屈辱を受けた格下・日本を狙っているのであろう。
一帯一路の真の狙いは国際通貨基軸「元」の確立
2013年9月、習近平国家主席は初めて、ユーラシア大陸を横断してヨーロッパにまで至る陸路の「新シルクロード」(一帯一路)を発表し、海路のシルクロードもそれに続いた。筆者の友人(商社系企業の元社長)は、「このシルクロードは、現代社会・経済を活性化する基軸になる」と確信して、日本でも有数の旗振り人となった。ところが最近、中国は相次いで世界諸国と論争するようになった。その姿勢は居直り泥棒に似て高圧的でもある。この友人は一転、旗振り役から即座に手を引いている。
「商売ありき」が許されない時代
農林水産省幹部と対談した際のメモを開陳したい。①農林・畜産・食料の輸出額が19年にほぼ1兆円に迫った。ただし、20年は新型コロナ禍のせいで減少する。②この輸出金額を2兆円まで増やす必要がある。東南アジアの販路開拓が必要だ。③しかし、3兆円超えを目指すとなると、中国14億人の巨大マーケットが不可欠。世界の5人に1人は中国人なのだ。とくに1億人を超える富裕層の胃袋を満足させる商品開拓が必要―。
率直に質問を投げかけた。「自民党の右翼・国益主義の議員先生たちは、商売ありき、経済優先策に賛成するのですか。強い抗議があるでしょう」と。この幹部は言葉を慎重に選びながらも、「確かに党内議論は“ガチンコ”です」と打ち明けた。
要するに、「とにかく商売ありき。中国市場を大切にする」と公言できる政治派閥は自民党二階派だけである。新型コロナ禍が続いて国民の鬱積が溜まり、習独裁政権が中国内の反日勢力を使って威嚇行為(たとえば尖閣列島制圧行為など)を繰り返せば、日本の世論も激変するだろう。「中国と商売する奴らは売国奴だ」という罵声が全国津々浦々で飛び交うことになる。日本企業への影響も大きい。いまや売上の半分を中国市場に依存しているユニクロなど、多国籍企業の評価も結局は国際政治の風向きに左右される。
独裁者・習近平の野望達成は前途多難?
現代中国において最大のヒーロー、アリババグループを率いるジャック・マー氏が「英雄」から「厄介者」に転落した。中国が独占禁止規制の強化策に乗り出し、「むやみな資本拡大」(中国経済新聞より)によってマー氏がやり玉にあがっているのだ。マー氏を厄介者に仕立て上げた習近平国家主席の魂胆は、「自分の手から離れたアリババやマー氏の存在・影響力は怖い。そうであれば、いまのうちに押さえてしまえ」という処置をとったということ。もう1つは、マー氏やアリババグループの巨額資産が海外へ持ち出されるのを防ぐためだろう。
しかし、習国家主席の今回の一手は筋が悪すぎる。中国全土では、マー氏を手本に飽くなき事業意欲に燃える起業家が次々と生まれている。こうした起業家や経営者は、習国家主席の独裁手法を警戒し、中国を離れることにも躊躇しないだろう。彼らの創造力や経営手腕を活用しなければ今後の中国内におけるイノベーションは期待できず、結局は自らの首を絞めることになりかねない。また、国家財政力が不安視される事態にもなる。習国家主席が自身の野望を実現できるかどうかは、資金力次第ともいえるだろう。
習近平に裸にされる
独裁者・習近平の金詰まり疑惑を、カジノ業界の件に絡んで考察してみよう。世界中のカジノで遊ぶ中国人は、ピーク時で1,000万人いたという。莫大な資金がカジノで散財された結果、習国家主席は中国人ギャンブラーの「海外漫遊」を禁止した。つまり、「遊ぶならマカオで遊びなさい」というわけだ。マカオにおけるカジノ市場の年間売上は30兆円から40兆円にまでおよぶとみられる。この海外禁止政策でマカオ市場が50兆円まで膨れあがることは間違いなく、習政権へキックバックされる資金がさらに増大する。
東南アジアでカジノ事業を行っていたある中国人実業家は、手持ち資金3兆円を中国本土に回帰させず、必死で海外に隠そうとしている。中国人はその長い歴史において何度も権力者の栄枯盛衰を見てきたゆえか、己の資産防衛には異様かつ凄まじい執念を燃やす。お見事、あっぱれ、というほかはない。マー氏の例からも、この実業家は「何もしなければ習近平に裸にされる」と確信したのであろう。まさしく狐とタヌキの“化かし合い”なのである。
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