【企業研究】三越伊勢丹HD vs J.フロント~王道を歩む三越伊勢丹、脱・百貨店へ突き進む大丸松坂屋(1)
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新型コロナウイルスの感染拡大が個人消費に与えた影響は大きい。テレワークの広がりや外出自粛で都心部の集客力が低下した。百貨店が受けた打撃は大きくて深い。名門百貨店の復活はなるか。(株)三越伊勢丹ホールディングスと、大丸と松坂屋を傘下にもつJ.フロントリテイリング(株)を取り上げる。
三越伊勢丹の赤字はJ.フロントの2.4倍
上場百貨店各社は、今期の業績予想を公表した。コロナ禍でいずれも赤字決算である。そのなかでも苦境がひときわ際立つのが、業界首位の三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹)だ。2021年3月期の連結決算(日本会計基準)は、売上高が前期比27%減の8,150億円、最終損益は450億円の赤字の見通し。
J.フロントリテイリング(以下、J.フロント)の21年2月期の連結決算(国際会計基準)は、総売上高が前期比28%減の8,104億円、最終損益は186億円の赤字の見込み。売上規模と減収率はほとんど変わらないのに、三越伊勢丹の赤字額はJ.フロントの2.4倍だ。
三越伊勢丹の赤字が大きい理由は、百貨店事業に対する依存度が高いことによる。百貨店事業の21年3月期の売上高予想は7,450億円で、連結売上高の9割を占める。営業損益は390億円の赤字の見通しだ。
百貨店の三越伊勢丹(単体)は、コロナ前の20年3月期に免税売上高が全店の9%あった。なかでも、インバウンドの”聖地”と称された三越銀座店は店の売上の28%が免税売上高だった。今期はインバウンド需要が蒸発し、免税売上高はほぼゼロになる。インバウンドが当面、戻ってくることはない。
これに対して、J.フロントは百貨店依存度が小さい。20年3~11月期の百貨店事業の総売上高は3,196億円で、連結総売上高(5,323億円)の6割だ。J.フロントと比べると、三越伊勢丹の百貨店事業への依存が突出していることがわかる。
伊勢丹新宿店はオンライン接客で商品販売
両社の再生策にも大きな違いがある。
三越伊勢丹は20年11月25日、旗艦店である伊勢丹新宿店で、オンライン接客による店頭商品の販売を始めた。専用アプリを使い、全100万品目を扱う。一般的なネット販売との違いは実店舗の店員が商品を紹介、販売する点だ。まず利用者はチャット上で好みや予算を打ち込む。店員からおすすめの商品などが返信される仕組み。
IT活用で日本の3年先を行くとされる中国では、すでにオンライン接客が一般化している。日本でもアフターコロナでは当たり前になるとみて、オンライン接客を取り入れた。
21年3月期のネット通販の売上高は前期と比べて48%増の310億円と伸びるが、売上全体の4%にとどまる見通し。激減する店舗売上を補てんするにはほど遠い。ネット通販はデジタル投資がかさみ、利益への貢献は難しい。
オンライン接客は再生の起爆剤となるのだろうか。ネット通販は、どの小売業も力を入れており、二番煎じのきらいがある。百貨店の一本足打法の三越伊勢丹が問われているのは、百貨店というビジネスモデルからの転換ではないのか。
(つづく)
【森村 和男】
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