厳しいときこそ、将来の発展の種を撒く、芽を育てる~2021年の福岡県の展望(前)
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福岡県知事 小川 洋 氏
新型コロナウイルスの感染拡大により、国の政策のみならず、地方自治体独自の対応策にも注目が集まった1年であった。「厳しいときこそ、将来の発展の種を撒く、芽を育てることが大事」と語る小川洋福岡県知事。今年はどのような取り組みを行い、福岡県を引っ張っていくのか。
県独自の感染防止策
――2020年は新型コロナウイルスとの闘いの1年でした。感染防止のために福岡県独自ではどのような取り組みをしましたか。
小川洋氏(以下、小川) 20年4月7日、福岡県を含む7都府県に国の緊急事態宣言が発出され、県民の皆さまには外出自粛、事業者の皆さまには休業協力をお願いしました。これは感染者を減らす上で大きな効果を発揮しましたが、一方で、県経済に大きな影響を与えました。
このため、その後は、経済への影響を最小限に留めつつ、感染防止を図っていくこととしました。具体的には、5月下旬、北九州市で感染者が再び増加した際に、全国で初めて、地域を限定した外出自粛および業種を絞った休業協力を要請しました。
また、7月中旬以降、福岡市を中心に感染者が急増したことにともない、8月、感染者数や病床稼働率などを指標とした県独自の「福岡コロナ警報」を発動したときには、これまでの経験を踏まえ、酒類を提供する飲食店などについて、営業時間ではなく利用時間の短縮を要請しました。これについては、効果が見られたと国から評価を受けています。
県民の皆さま、事業者の皆さまのご理解とご協力、医療従事者をはじめ社会を支える皆さまのご尽力により、感染が落ち着いたことから、10月8日に「福岡コロナ警報」を解除しました。
12月以降、県内の感染が再び増えたことから、「福岡コロナ警報」を再度発動し、医療機関に対して病床確保と受入れ準備を要請するとともに、県民の皆さま、事業者の皆さまに対し、改めて感染防止対策の基本の徹底をお願いしました。
また、12月に入り、とくに高齢者や障がい者の福祉施設においてクラスターが多く発生しています。発生したクラスターについては封じ込めを行うとともに、これら福祉施設での感染を防ぐため、施設職員を対象に、施設ごとに一斉・定期的なPCR検査を昨年末に開始しました。
これまで、検査体制・医療提供体制の充実を図り、現在、1日当たり約5,000件の検査体制を確保しています。また、コロナ用の入院病床を551床(うち重症病床は90床)、疑いのある患者の受け入れ病床を118床、無症状、軽症の人を受け入れる宿泊療養施設も4つのホテルに1,057室を確保しています。
宿泊療養は、自宅待機を減らし、本人や周囲の人を守るとともに、病床のひっ迫を防ぐために極めて重要です。宿泊療養施設には医師・看護師を常駐させ、入所者の体調の変化にすぐに対応できるようにするとともに、必要に応じて指定の医療機関に搬送することとしています。入所が必要となった方には、陽性判明の翌日までに入所していただいています。皆さまの御協力をお願いします。
県内の感染状況について強い警戒感をもって見ていますが、直ちに医療提供体制がひっ迫する状況ではないと考えています(20年12月23日時点)。
「感染防止」しつつ経済の立て直しを
――コロナ禍で経済は大きな影響を受けています。福岡県独自ではどのような中小企業支援を実施しましたか。
小川 休業要請をすれば、協力した事業者のみならずその取引先などにも広く影響がおよぶと考え、県では、コロナの影響を受けている事業者を幅広く対象とした「持続化緊急支援金」を創設し、国の持続化給付金の対象に含まれない約2万6,000者に、約90億円を給付しました。国の「持続化給付金」の給付件数11万3,000者を合わせ、13万9,000者となり、県内中小企業者など(14万5,000者)の96%程度を支援できました。
また、コロナで売上が急減した事業者を対象に国の「家賃支援給付金」に対して上乗せする「家賃軽減支援金」を給付しています(20年12月9日時点、累計約1万件、約8億3,800万円を給付)。2月28日まで申請を受け付けていますので、申請要件を満たす事業者の方はお早めに申請手続きをしていただきたいと思います。
さらに、県制度融資に県が保証料を全額肩代わりした「緊急経済対策資金」と、無利子・無担保、保証料ゼロの「新型コロナウイルス感染症対応資金」を創設するなど、資金繰り支援に力を入れています。20年12月4日時点で、約4万件、6,800億円に上り、多くの事業者にご活用いただいています。
このほか、中小企業がデリバリーやテイクアウトなど新たな事業に取り組む場合に、事業の実施に必要な経費を補助する「経営革新新実行支援補助金」や感染防止対策に係る経費の補助金がありますので、引き続き積極的な活用をお願いします。
――運輸業、観光業などコロナ禍により深刻な影響を受けている業界にはどのような支援をしていますか。
小川 運輸業に関しては、公共交通の利用者が外出自粛などにより大幅に減少し、20年は対前年比7~8割となっています。そのため、地域鉄道や乗合バスおよびタクシー事業者が行う感染防止対策に対し助成するとともに、地域鉄道、乗合バス事業者の事業継続のため、県独自の支援金を給付し、公共交通の確保・維持に取り組んでいます。
観光業に関しては、福岡県内への旅行需要を喚起し、地域の観光業を支援するため、国の「Go To トラベル」に先行して、県内や九州在住の人を対象に20年7月から9月に「福岡の魅力再発見」九州キャンペーンを実施し、約10万5,000人に利用していただきました。県独自の宿泊助成制度の第2弾として「福岡の避密の旅」観光キャンペーンを20年11月5日から開始しています。これは非常に好評で、すでに完売しました。このため、さらに15万人分を追加することとしました。
このほか、宿泊事業者が行う感染防止対策や安全対策に関する情報発信等の取り組みの経費に対する助成も行っています(20年11月30日時点、申請件数312件、交付決定件数292件)。
(つづく)
【茅野 雅弘】
<PROFILE>
小川 洋(おがわ・ひろし)
1949年5月17日生まれ。福岡市出身。福岡県立修猷館高校卒。京都大学法学部卒。73年、通商産業省に入省。内閣官房内閣審議官、経済産業省産業技術環境局長、特許庁長官、内閣官房知的財産戦略推進事務局長、同内閣広報官を歴任。2011年4月の福岡県知事選で初当選。19年4月、3選をはたした。趣味は読書、スポーツ観戦、音楽鑑賞。関連キーワード
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