2024年12月23日( 月 )

ストラテジーブレティン(269号)~2021年は短期、中期、長期、超長期循環上昇の起点になる~今年こそは大相場に賭けよう(6)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「Bストラテジーブレティン」を掲載していく。
 今回は2021年1月1日付の記事を紹介。

(5) リスク、最大製造業国、中国の排除が始まる

非民主国家中国の排斥底流で進行、だがバイデン政権は対中での経済的利益も追求する

 21年の最大のリスクは、中国関連であろう。情報統制により、対Covid-19の初期対応を遅らせ世界的パンデミックを引き起こした原因をつくったこと、香港をはじめとした民主主義封殺と人権侵害、経済力を共産党の政治意図実現の手段としていることなど習近平氏の中国は、国際民主社会の枠からはみ出している。これをスターリン主義と呼ぶならば、世界は中国と共存できなくなる。

 しかし、他方で中国は、粗鋼生産シェア55%を筆頭にあらゆる財の世界最大生産基地であり、米国の2倍の製造業市場をもつ世界最大の財需要国である。各国企業はその巨大な市場を無視しては生きていけない。前者に傾けば、経済的ダメージが大きくなるリスクは無視できない。

バイデン氏の対中対応はハイブリッドで

 バイデン氏は、対中対応をハイブリッド=ダブルスタンダードで対処するのではないか。国防・安全保障の観点から対中制裁を強める、ただし経済・企業利益の観点から対中関係を維持または太くする。米中対立は変わらないが、より秩序あるものになる可能性が大きい。

 前財務長官のヘンリー・ポールソン氏はWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)中の論文で、「中国凌駕をするには経済力が大事、米国企業の利益を守らずして、ハイテク覇権争いに勝てず」と主張している。中国は海外企業、とくに米国企業に特殊便益を与えることで、米政府の敵視政策に風穴を開けようと狙っている。ゴールドマンサックス、ブラックロックなどは、中国における100%子会社の設立の認可を得た。テスラも100%子会社の設立という甘言に釣られて上海にギガファクトリーを建設し、中国でのEVサプライチェーンの強化と、中国からの自動車輸出計画に参画している。

 日本企業はルールベースの根拠(国防上の理由による取引拒否の明確化)を求めつつ、米国の2倍の規模をもつ中国の製造業市場でのプレゼンスを維持拡大すべきである。今や各国産業の競争力は個別企業の努力を超えた、政府の優遇策に支えられる面が大きく、狡猾な対応が求められる。

 日本は地政学的観点からも、国際分業的観点からも、米国・中国にとって決定的に重要な国になった。日本はその有利なバーゲニングパワー(※)を駆使すべきである。たとえば、日本の毅然たる対応が韓国を窮地に陥れているが、それは日本の地政学上、国際分業上の立場が優位化しているためである。

(つづく)

※ 国際間の交渉・折衝などを行う場合における対抗力。交渉能力。

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