コロナ禍でも今後に向けた協力を促進、九州-ベトナム関係の全面的な発展を(前)
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駐福岡ベトナム社会主義共和国総領事 ヴー・ビン 氏
九州には3万9,207人(法務省、2019年12月6日時点)と多くのベトナム人が居住し、身近な存在となってきている。20年には初となるベトナムLCCの九州路線就航やベトナム国会議長の九州訪問などが予定されていたが、新型コロナウイルスの影響でいずれも実現しなかった。コロナという逆風が吹き荒れるなか、ベトナムは九州との人的・経済交流を質的に発展させるために、IC・ICT商談会やベトナム人労働者の技能向上などに注力している。ヴー・ビン駐福岡総領事に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)
コロナ禍でも協力関係を促進
――2020年を振り返って、総領事館としてどのような活動を行いましたか。
ヴー・ビン氏(以下、ヴー) 20年を振り返る前に、当館設立10周年であった19年の取り組みを紹介させてもらいますと、10周年を記念して20件以上のイベントを開催しました。多くのイベントは19年9月に設立された在福岡ベトナム人協会と一緒に準備し、実施しました。20年1月にはベトナム旧正月のテト祭りを天神中央公園で開催し、成功裏に終わりました。1日のみの開催でしたが、延べ7,000人が来場し、ベトナム人が九州地域で開催したイベントとしては過去最大規模となりました。これらの成果は、ベトナム側および日本側の関係機関や個人の協力があって成し得たもので感謝しています。
これら一連のイベントの成功を受けて、20年の目標として、従来の成果の基礎の上に活動を行えるように計画を立てていましたが、新型コロナウイルスの影響を受け、さまざまなイベントが中止または延期となりました。当館としても20年の活動の重点目標などを再確認、見直し、これまでに築いた関係を維持し、現在実行可能なことをできるだけ開催して、次の段階のために準備することを目標として再設定しました。
政治面では、ベトナムと九州の間で多くの要人の訪問が予定されており、代表的なものはベトナム国会議長の3月の九州訪問であり、準備をすべて終えていたのですが、急遽中止となりました。自治体交流では、佐賀県など数県の知事のベトナム訪問を予定していましたが、実際に実現できたのは、年始の日程に企画された佐賀県知事のホーチミン市およびドンナイ省(同国南部)訪問と、八代市長のホーチミン市訪問のみでした。
文化交流では、民間交流を促進するため、ベトナム文化省に働きかけ、20年に九州で文化交流の大規模なイベントを開催することで双方の合意を取り付けていましたが、残念ながらこのプログラムは中止を余儀なくされました。20年はベトナム独立75周年の年であり、現況の許される範囲でベトナム国慶節の記念式典を縮小した規模で開催したほか、在福岡ベトナム人協会の設立1周年の記念イベントを共同で開催しました。また、11月に「ベトナムスマイルフェア」を小規模ながら実施し、半日強で延べ800人が来場しました。
――経済面での交流はいかがですか。
ヴー 19年の日本―ベトナム間の貿易額は約400億米ドル、九州―ベトナム間では約36億米ドルでした。九州は日本の1割を占める地域であるとされ、九州―ベトナム関係も貿易、投資などの各分野を含め、日本―ベトナム間の友好・協力関係の1割を担うことを望んでおり、20年には貿易額が全体の1割に引き上げたいと考えていました。
そこで、20年には九州とベトナムの地方とのビジネスマッチングイベントを企画していました。九州国際経済推進機構が率いる経済ミッションの訪問団がハノイを3月に訪問し、当地で九州プロモーションセンターのオープニングセレモニーに参加するとともに、経済交流・貿易の促進活動を予定していましたが、中止となりました。4月に予定されていたベトナムの複数の地方の訪問団が九州を訪問するプログラム「VPR-2020」も、同様に中止となりました。
この状況下でも、両国の企業経営者、投資家、専門家などへの双方情報の発信、貿易促進をオンラインでできる限り行うこととしました。たとえば、福岡県商工部、JETRO福岡の協力を得て、福岡とベトナムの企業の間でIT、ICT分野の商談会を開催しました。これは、合理的な展開だと思います。なぜなら、デジタル化関連分野は両国の経済においてますます重要な役割を担うと思われるからです。
ミートジャパン2020年(ベトナム外務省主催、在ベトナム日本大使館など共催、ハノイ)には福岡県の小川知事、長崎県の中村知事もビデオメッセージで挨拶をしてくれました。さらに、双方の貿易促進のため、日本商品のベトナムへの輸出の促進・拡大、逆にベトナムに強みがある商品、現在ではたとえばマスクや医療設備などをたくさん日本に輸出できるように尽力しました。
これらのほか、20年にはベトジェットエアーが新規路線、ベトナム―鹿児島間の往復直行便の就航を計画しました。また、ベトナム航空がハノイおよびホーチミン―福岡間の路線を毎日直行往復へと増便する計画を立てるとともに、大きな機体の導入を予定していましたが、残念ながら、運行計画は現在に至るも停止されたままです。しかし、日本政府の合意を得て、チャーター便を鹿児島県からベトジェットエアーによる2便、福岡からベトナム航空による1便を在住で帰国困難となったベトナム人を迎えに行くため、飛ばすことができました。
(つづく)
【文・構成:茅野 雅弘】
<プロフィール>
ヴー・ビン(Mr. Vu Binh)
1961年生まれ。駐米国ベトナム大使館参事官、ベトナムユネスコ国家委員会副事務局長、駐ギリシャベトナム特命全権大使などを歴任。ベトナムの国家から「大使」の職位を与えられる。2019年5月、駐福岡総領事に着任した。英国ブラッドフォード大学大学院で国際開発修士号を取得。関連キーワード
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