コロナ禍でも今後に向けた協力を促進、九州-ベトナム関係の全面的な発展を(後)
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駐福岡ベトナム社会主義共和国総領事 ヴー・ビン 氏
九州には3万9,207人(法務省、2019年12月6日時点)と多くのベトナム人が居住し、身近な存在となってきている。20年には初となるベトナムLCCの九州路線就航やベトナム国会議長の九州訪問などが予定されていたが、新型コロナウイルスの影響でいずれも実現しなかった。コロナという逆風が吹き荒れるなか、ベトナムは九州との人的・経済交流を質的に発展させるために、IC・ICT商談会やベトナム人労働者の技能向上などに注力している。ヴー・ビン駐福岡総領事に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)
今後の九州―ベトナム関係の発展のために
――今後、経済交流をより活発なものとしていくための課題は何でしょうか。
ヴー ベトナムと日本の政治的関係は、広範な戦略的パートナーシップの関係にあり、地域の平和と繁栄を目標に置いています。この関係の基礎となっているのは、相互の信頼および利益の共有です。言い方を換えると、矛盾、紛争が存在していません。今後、相互理解をさらに深めていくことがより必要となるでしょう。それぞれの国・地域の情報、両国の交流・協力関係に関する情報の発信、日本人側が在住ベトナム人のことを理解し、奨励し、協力を深めるための情報の発信が非常に大事になります。
私たちの間の関係はWin-Win関係であり、協力を通してチャンスがさらに切り拓かれ、より大きな利益がお互いにもたらされるでしょう。協力にさらに投資すべきだと思います。
経済分野については、関係をさらに強化する機会に恵まれています。日本はサプライチェーンを多様化する政策を採用し、ベトナムなど東南アジア諸国への工場移転が増えています。ベトナムは工場移転を希望する投資家を積極的に受け入れるため、今後さまざまな政策を打ち出す用意があります。菅総理大臣が20年10月にベトナムを訪問したときのベトナム首相との会談において話し合われた通り、ベトナムは体制、政策および人材におけるインフラ整備に注力していきます。日本にとって、ベトナムへの投資は国内の労働力不足の解消にもつながると思います。両国の協力で日本にとくに注力してほしい分野は、ハイエンド技術および環境技術です。
市場については、お互いにより広範に開放する必要があります。ベトナムはCPTPPに加入しており、欧州とFTAを締結しています。20年11月には両国がRCEPにも加入しました。今般の菅総理大臣のベトナム訪問の際に、両国首相の間で市場を相互により広範に開放することに合意しました。まず、農産物の輸入を相互に増やすことで合意しています。
文化は両国関係の基礎であり、かつ目標にもなり、さらに発展させる原動力にもなります。文化交流の強化は両国関係の発展を力強く後押ししてくれるでしょう。ベトナムは、日本が世界的な経済大国でありながらも独自の文化の特色や伝統などを維持し、かつ発展させていることに魅力を感じています。ベトナムには4,000年の歴史があり、ユネスコに登録される伝統、文化遺産がある半面、文化的な価値があるものを多く有しています。交流の強化を通して、双方がお互いに理解し、価値観を共有して、両国の関係をさらに深化させることができればと思っています。
人材育成、教育訓練の分野にも発展の余地があります。在住ベトナム人の量・質をともに向上させることも重要な課題の1つです。労働者を例にとれば、彼らが日本にいる間に自分の技能とすべての側面を高められるように促す必要があります。単純労働者としてではなく、より高度な技能をもった人材として活躍できるようになっていけば、彼らの日本にいる価値を高められ、また彼らをめぐる不幸な出来事や不祥事を減らすことができます。それによって企業により貢献するのみならず、両国関係の発展にも直接寄与してもらえるでしょう。
――ベトナムはIT人材の教育に力を入れていますが、今後、同様にベトナム人技術者が日本にきて、日本企業で働くようになるでしょうか。
ヴー 私は1999年にシリコンバレーに約半年住んだ際に、面白いことを発見しました。それは現地で頭脳労働に従事する人の約1割がベトナム人、もしくはベトナム系の人であったことです。今後、日本在住のベトナム人をいかにして能力を発揮させ、より高い質の労力に発展させるかという問題意識を抱いています。日本は最先端のデジタル技術、ビッグデータなどの技術において非常に高度な技術を有しています。一方、ベトナム人はIT分野に強みをもっており、とくにソフトウエアの開発、設計、事務所での日頃の仕事や日常生活に必要なIT分野に自信があります。協力の可能性、潜在力は非常に大きいです。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
ヴー 対コロナ支援などにおいて、日本政府、各自治体、関係機関、友好協会および日本人の皆さんがベトナム人に対して効果的で価値のある支援をしてくれていることに、ベトナム総領事館および九州在住のベトナム人を代表してお礼を申し上げます。日本側のパートナー、友人の積極的かつ効果的な協力を高く評価します。私たちは、有意義なイベントを一緒に開催し、あらゆる分野でベトナムと地域の関係を発展させることができました。
日本経済は第3四半期から回復基調にあり、21年にはプラス4%の勢いで成長すると予測され、ベトナム経済は20年は通年でプラス成長を維持し、その成長ぶりを維持する見込みです。両国の良好な関係は引き続き発展し、とくに21年には経済を含め全面的に、大きく発展すると確信しています。
(了)
【文・構成:茅野 雅弘】
<プロフィール>
ヴー・ビン(Mr. Vu Binh)
1961年生まれ。駐米国ベトナム大使館参事官、ベトナムユネスコ国家委員会副事務局長、駐ギリシャベトナム特命全権大使などを歴任。ベトナムの国家から「大使」の職位を与えられる。2019年5月、駐福岡総領事に着任した。英国ブラッドフォード大学大学院で国際開発修士号を取得。関連キーワード
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