コロナ禍でも日中の絆を再確認、2021年は人的交流の全面復活を(中)
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中華人民共和国駐福岡総領事 律 桂軍 氏
2020年、中国は未知の新型コロナウイルスの影響を最初に受けたものの、早い段階で新規感染の抑え込みに成功し、第2四半期からはGDPをプラス成長に転じさせ、通年でのプラス成長が見込まれる。対外的にはRCEP(地域的な包括的経済連携)を締結し、国際市場・国内市場の循環を発展モデルに掲げる一方、コロナ支援と国益をリンクさせた外交も国際社会から注目された。今後、中国をどう認識し、どう付き合うべきか。20年6月に中華人民共和国駐福岡総領事に着任した律桂軍氏に話を聞いた。
国際社会と連結した 経済発展モデルを模索
――20年、中国経済は第2四半期からプラス成長に転じました。
律 中国のGDPは第1四半期がマイナス6.8%でしたが、第2四半期が3.2%、第3四半期が4.9%のプラス成長となり、第4四半期は約5%成長と予測されており、通年で約2.1~2.2%のプラス成長となるとの予測もあります。従来の約6%と比べると相当に低いとはいえ、全世界の現在の情勢を踏まえると、非常に得難い成長率です。21年は8%以上の反動増になるとの一部予測があります。
中国の1人あたりGDPは19年に1万ドルを超えました。20年のGDPは100兆人民元(米ドル換算で15兆ドル)を超えると予測されています。また、35年までにGDPおよび1人あたりの収入を20年から倍増させるということが十分あり得るという計算があります。
今後の経済を展望するうえで、20年10月の中国共産党第19期5中全会が採択した今後5年間、15年間の発展の青写真が重要です。それによると、中国は21年に全面的に小康社会(いくらかゆとりのある社会)の建設を完成させ、同時に社会主義現代化国家の建設をスタートさせます。その過程において中国は国内の大市場、国内大循環を主体とする国際・国内市場の双(ダブル)循環を相互に促進する新たな発展モデルの構築を急ピッチで進めていきます。国内大市場の潜在力を絶えず生かして、国際大循環を活発化させていきます。
これは閉鎖的なものではなく、高度に開放的なものです。たとえば、上海で昨年11月に第3回中国国際輸入博覧会が開催され、大きな成果を収めており、多くの日本企業も参加し、大きな収穫があったようです。中国は今後10年、22兆ドル相当の輸入が予想されており、国内大市場の発展・構築の過程において、日本をはじめとする多くの国々により大きなチャンスを提供できるでしょう。
中国はこの新しい発展パターンによって、より安定させ、より健全に発展することを目指します。この国際・国内市場の双循環について、かつての日本、アメリカを含め、先進国は例外なく同様の成長パターンをたどっていると思います。改革開放の初期の段階では、市場も資金もほぼすべて海外に依存していましたが、それでは成長をいつまでも持続することはできません。
――11月にRCEPが締結されました。日中で初の関税撤廃・減税であり、今後の日中経済関係にどのようなインパクトがありますか。
律 日本経済の景気回復の起爆剤になると思います。日本の経済界は中国という世界最大の統一市場を手に入れることができるでしょう。中国には14億人の人口があり、4億人の中所得層がいます。アメリカの人口3億人よりも多いのです。この4億人の中間層は、子弟を海外留学に行かせ、年に1~2回、国内あるいは海外旅行に行き、マイホームを所有できる人たちです。そして、この中間層は毎年1%の速度で増えていきます。
中国とどう付き合うか
――20年春に予定されていた習近平国家主席の訪日が延期となりました。実現の見通しはどうでしょうか。
律 安倍晋三前首相の在任期間中、中国と日本双方の努力によって、日中関係を正常に発展する軌道に戻すことができたことは、日中関係が国交正常化以来最悪の時代から抜け出したことを意味しています。
菅義偉内閣が発足して間もない時期に菅首相は習近平国家主席と電話会談を行い、これからの新しい時代の日中関係の方向性を定めました。そこで双方が日中関係は非常に重要であり、日中間でさまざまな分野の交流・協力を進めていくことで一致するとともに、新しい時代の要望に合致する日中関係を構築するという共通認識を強めました。
11月に王毅国務委員兼外相が訪日し、菅首相、茂木外相らと会談し、大きな成果を挙げました。日中両国は今後コロナとの闘い、ワクチンなどの薬の開発、生産活動の回復、経済活動の回復などにおいて協力をさらに深めることに合意しました。それに基づき、11月末には双方で往来が必要な人のためのビジネストラックを開通しました。「日中農水産物貿易協力メカニズム」の立ち上げも、とくに九州にとって有益であると思います。
今年は東京オリンピック、来年は中国北京で冬のオリンピックが開催される予定です。この機会に相互に支援して協力を深められればと思っています。中国は東京オリンピックが成功するとともに、これが日中間の人的交流を全面的に復活させるきっかけになればという期待を抱いています。この目標の実現に向けて一緒に努力し、コロナとの闘いにおける勝利を勝ち取りたいと思っています。
来年には日中国交正常化50周年を迎えます。王毅国務委員の訪日について、日中両国はそれに向けていろいろな準備を進め、節目の年である50周年を迎え、お互いに有益なことを多く行い、日中関係を50周年にふさわしいものへ発展させるという共通認識に達しました。
(つづく)
【茅野 雅弘】
<プロフィール>
律 桂軍(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。関連キーワード
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