2024年11月20日( 水 )

コロナ禍でも日中の絆を再確認、2021年は人的交流の全面復活を(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
中華人民共和国駐福岡総領事 律 桂軍 氏

 2020年、中国は未知の新型コロナウイルスの影響を最初に受けたものの、早い段階で新規感染の抑え込みに成功し、第2四半期からはGDPをプラス成長に転じさせ、通年でのプラス成長が見込まれる。対外的にはRCEP(地域的な包括的経済連携)を締結し、国際市場・国内市場の循環を発展モデルに掲げる一方、コロナ支援と国益をリンクさせた外交も国際社会から注目された。今後、中国をどう認識し、どう付き合うべきか。20年6月に中華人民共和国駐福岡総領事に着任した律桂軍氏に話を聞いた。

――他方、日本人の対中国イメージがますます悪化し、今後中国とどう付き合っていくかについて、戸惑いが強まっています。 

律 桂軍 氏
律 桂軍 氏

  中国人、中国政府は日本に対して、平和的、友好的、協力的な日中関係を構築していきましょうという気持ちを共通して抱いています。私たちは人類の運命共同体であると提唱しています。この理念をもって、日本をはじめとするアジアと世界の諸国と付き合っていく、隣国において困ったことが発生すれば、私たちは自発的、自動的に手を差し伸べたいという自然な気持ちを抱いています。 

 日本の一部マスコミが、中国には政治的な下心があると報じています。中国が外国にマスクを提供するときには「マスク外交」、ワクチンを提供するときには「ワクチン外交」などといい、それらによって政治的な目的を達成しようとしていると報じています。ほかにも、一帯一路における外国への融資は「債務の罠」を仕掛けているものという具合です。これらは冷戦思考、ゼロサム的な考え方であり、事実ではなく、やめていただきたいと思います。 

 私は長年、日中関係に携わっている外交官として、中日友好の実現に強い信念をもっています。そして、日中関係は必ず良くなり、友好関係は力強いものになっていくと楽観視しています。なぜなら両国には文化的につながりがあるからです。私は奈良、京都に行って、九州にきて、中国の歴史上の文化の面影を数多く目の当たりにしました。中国人はこれらを見て、日本に対し心から親近感を抱きます。19年には1,000万人近くの中国人が日本を訪問しました。多くは若者、リピーターで、九州では福岡や鹿児島、熊本の阿蘇山を訪問し、キャンプを張るなどしています。これが中国の若者の行動パターンなのです。 

日中国交50周年に向け、人的交流の全面的な復活を 

 ――21年の話についてうかがいます。また、22年に日中国交50周年、福岡県と江蘇省友好都市40周年を迎えますが、どのような準備を進めていきますか。 

 律 地元の華僑・華人団体では春節祭りのような大規模なイベントは予定していませんが、地域密着の行事の実施を計画しています。 

 今年は東京オリンピック、翌年に冬の北京オリンピック、日中国交50周年を迎え、日中関係は、より良いチャンスに恵まれるということです。この歴史的背景のもと、九州と中国の関係もより良い時期を迎えるでしょう。文化交流を大々的に推進したいと思います。多くの九州の県・市が中国の省・市と友好都市関係にあります。代表的なものは福岡県―江蘇省、熊本県―広西チワン族自治区、山口県―山東省、沖縄県-福建省、福岡市―広州市、北九州市―大連市、大分市-武漢市、下関市―青島市などで、毎年、友好交流・協力の実績を積み重ねてきました。コロナによる制限が緩和されれば、私たちは地方交流・協力を大々的に推進し、地方交流・地方間協力が、より大きな柱となるような日中関係にしたいと思います。 

 ――最後に読者にメッセージをお願いします。 

  20年はコロナが猛威を振るった1年で、人々の生命が奪われ、経済が大きなダメージを受けました。しかし、この暗闇のなかでも光があり、真冬のなかにも温もりがあります。21年はコロナとの闘いにおいて勝利を勝ち取り、生産活動、経済を回復させる1年になると思います 。

 日中関係については、協力拡大の1年になるとともに、人的交流を大々的に行い、全面的に回復させられればと願っています。人類は地球村に住んでいる運命共同体であり、互いに見守り合い、助け合うべきです。 

 中国は日に日に変化し、またより良い方向に変化しています。中国についての理解を深め、そのうえで、中国との交流・協力のチャンスをつかんでいただきたいと思います。

(了)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
律 桂軍
(りつ・けいぐん) 
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。

(中)

関連記事