中洲の灯は絶えない(2)接待はなくならない〜「ロイヤル・ボックス」ママ・藤堂和子氏
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福岡県に緊急事態宣言が発出され、県は飲食店に対し営業を午後8時(酒類の提供は午後7時)までとするよう要請した。
昨年の新型コロナウイルス感染拡大以降、中洲の夜の店で営業を停止した店は少なくない。高齢などの理由でこの機会に引退を決断し閉店した店もあれば、転職のために閉店した店もある。一方で「中洲しかない」と腰を据え、売上を確保する店もある。
今回の緊急事態宣言などについて、中洲で50年にわたり経営に携わってきた「ロイヤル・ボックス」の藤堂和子氏に話を聞いた。「中洲しかない」
午後8時以降の営業停止要請は夜の店の営業を直撃した。人目を気にし、ほかの店がどうするのかをみて判断する経営者もおり、藤堂氏は周囲の人から「藤堂さんが休まないと、ほかの皆が休まない」とよく言われたという。藤堂氏は経営するクラブを18日から2月7日まで休業とし、スナックを午後1~8時までの短縮営業とすることを決めた。
藤堂氏は日ごろから先を見据えて経営していれば、このような状況でも大丈夫だと確信している。藤堂氏が重視していることの1つに、従業員と顧客の年齢層のバランスを取ることがある。同じ顧客がいつまでもクラブに同様の頻度で来店してくれるわけではなく、また若くてよい従業員がいないと客も来なくなるという。経済力があるわけでもない若い顧客も先を見据えて大事にする。面倒見のよい藤堂氏を慕う従業員は多いが、従業員に独立を促したり、厳しくても人員整理を行ったりなどしてきた。
「接待というのは政府や企業の営みがある以上、絶対になくなりません」、「コロナでストレスが溜まるなかで、話すことによる癒やしは必要」と事業の社会的意義を強調する。実際に昨年も、店舗は休業期間を除いて多忙であったようだ。
顧客に安心して来店し続けてもらうためには、目に見える防止対策が欠かせない。藤堂氏は昨年の営業再開後の早い時期からパーティションなどを購入し設置した。現在も最新装置を導入しているほか、通気を行いやすいように窓枠を交換するなどして、コロナ対策を常に万全にするよう努めている。
藤堂氏にとっても、政府から事実上の休業を要請されるのは初めての経験だが、これまでに何度も苦しい思いを重ね、その経験からやりようはあると考え、また備えをしてきているという。裏を返せば、資金のあるところしか中洲でやっていけないということかもしれない。
藤堂氏は「中洲で50年この仕事を行ってきて、『中洲しかない』と思っている」と迷わない。「88歳まで続けて経営60周年の記念パーティーを開催する」と経営を続けることに強い決意を示す。
政府の政策は平等であるべき
藤堂氏は政府のコロナ対策について疑問を呈する。それは、多くの客が日中に飲食店を訪れるのに、夜8時以降のみを規制の対象とし、昼の影響に規制を加えないのは不自然であり、また感染防止の効果が薄いのではないかということだ。こう批判したうえで、政府の政策は平等であるべきだと訴える。政治家が国民や事業主に「皆さん我慢して耐えてほしい」と呼びかけるのであれば、昼も夜も一律でロックダウンすべきではないかと指摘している。
また、飲食店に対する一律1日6万円支給という基準に対しても、店舗や従業員の規模、家賃相場を考慮しておらず、実態に即していないと批判する。小規模の個人経営の店舗であれば、6万円もらって休もうと考えるかもしれないが、自身の店では家賃さえ負担できないという。
休業・短縮営業要請に応じないことへの50万円の過料という罰則についても同様という。一律にこの金額では、それを支払ってでも営業することにより得られる売上のほうが大きいと判断し、営業を続けようと考える店もあるだろうとみている。
【茅野 雅弘】
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