【年頭所感】コロナ禍の逆風のなかで新たな挑戦、太宰府市をより住みよいまちに〜楠田大蔵市長(後)
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太宰府市は太宰府天満宮、九州国立博物館という観光名所、大宰府跡や水城跡などの史跡を誇るが、2020年はコロナ禍による観光客激減という逆風に見舞われた。福岡都市圏南部に位置するベッドタウンの側面ももち、住みたいまちとしての評価も高めている。観光資源を生かして今後どのようなまちづくりをしていくのか、集大成となる任期の最終年を迎える楠田大蔵・太宰府市長に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)
21年は今後100年の太宰府市を構想する年に
――1月で任期が丸3年を迎え、任期は残すところ1年となります。今年もっとも重視する課題は何でしょうか。
楠田 当面はコロナ対策を万全にしていくということに尽きますが、今年はある意味、総決算、集大成の1年になってきますので、積み上げてきた3年間の取り組みを1つの形にしていく重要な年になると思っています。
ちょうどよいタイミングで市が誇る太宰府跡、水城跡の遺跡(1921年に国として初となる史跡指定)が史跡指定から3月で100年を迎えます。メモリアルイヤーであり、先人の取り組みに敬意と感謝を表しつつ、太宰府の強みである歴史と文化を今後100年、どのように生かしていくかについて、議論を行う非常に重要な最初の1年になると考えています。
これらの活用計画について、審議会で昨年末から議論を始めてもらっており、令和という元号を発案されたと言われている中西進先生を招待し、また3月にはロバート・キャンベル氏ら文化への造詣が深い人たちを招待して100年の大記念イベントを実施しようと計画しています。10月には、全国の多くの自治体が加盟する史跡地の協議会の全国大会を太宰府市で開催することが決まっています。今年は史跡100年の節目のメモリアルイヤーを飾る1年にしていきたいと思っています。
――跡地に復元された建物の展示が必要になると思いますが、予算はどのくらい必要なのでしょうか。
楠田 立体復元となると数百億となり、コロナの状況下で始めるのは容易ではないと思います。まず、映像での復元、プロジェクションマッピングでの復元、建物の復元を今後100年かけて行っていくという計画をスタートすることはできるので、1つの始まりの年にしたいと思っています。ふるさと納税の活用も1つの方法です。
コロナ禍の状況において外から人を呼ぶのは難しいでしょうが、オンラインでの双方向のやり取り、映像の配信などを行っていきます。重要なことはピンチをチャンスに変えていくという柔軟な発想です。ウィズコロナ時代の新しい行政のあり方を確立する1つのきっかけにもなると考え、新しい取り組みを考えていきます。
より住みよいまちへ
――太宰府市は住みやすいまちとしても評価が上がっています。
楠田 太宰府市は昨年、住みよいまちとして全国20位(日経BP「シティブランド・ランキング―住みよい街2020」)にランクインし、魅力度も42位と全国的に高い評価をいただきました。
ただ、太宰府市の高齢化率は27〜28%であり、全国平均並みで、青山などの住宅地、団地などではかなり高くなっています。それらの地区は良いブランドですが、若い世代はやはり新しく開発された住宅地域に偏っていきます。本市をさらに活性化していくため、とくに若い世代、子育て世代に住んでもらえる体制を整えていきたいと思っています。若い世代にとっては利便性が重要です。太宰府自体は福岡市からの交通の便が非常に良く、悠久の歴史、多様な文化、豊かな自然に恵まれ、住みよい街として非常に魅力があり、潜在力は高いと思っています。現在足りないものもありますが、たとえば待機児童問題の解消のための対策や、テレワーク普及のための補助などの取り組みを始めています。自然、文化、歴史があふれる本市に住みながらも、全世界を相手に仕事をしていけるような環境づくりを整えていくことが、これからのポイントになっていくと思います。
――子供の育成、小中学校での教育の面で太宰府市は良いということになると、流入人口が増えると思います。
楠田 老朽化した小学校の建て替え、エレベーターの設置を決めています。さまざまな子供たちが学びやすい環境を整え、学力を高めることも非常に重要です。大学が5校あり、高校が4校あり、それぞれ特色をもっています。甲子園など全国大会への出場であったり、さまざまな研究開発を行ったりしている学校が多くあります。
彼ら大学生、高校生などの力を借りながら、小学生や中学生が学びやすい環境をつくり上げます。太宰府天満宮、九州国立博物館という日本を代表する名所旧跡もあり、そうした環境に子供のうちから親しんでもらい、太宰府の歴史を副読本として学んでもらう取り組みもすでに始めています。
本市は非常に多くの宝があるまちです。ただ、残念ながら生かしきれていなかったと側面もあったと思いますが、最近では住みよい町の評価のなかで、市民参加の機会が多いということで全国1位に、行政の情報発信が全国6位になり、行政の運営部分が高く評価されてきました。子供たちから年配の方までさまざまな形で、市民にも参加してもらいながら、活性化していくことが重要だと思います。
学校給食について、中学校はまだ完全給食にはなっていないのですが、弁当形式で注文できるようにしました。就学援助という収入が厳しい家庭の生徒に無料で給食を提供するサポートを整えました。注文についても、以前は早めに注文する必要がありましたが、現在は前日の注文で届くようになっています。献立もより栄養があり、おいしいものへと改善を行ってきました。今後はコロナが財政におよぼす影響を考慮しつつ、完全給食を目指す展望を描いていきたいと考えています。
政治家として、これまで公約として訴えてきたこと、議会をはじめとしたさまざまなところでお答えしてきたこと、約束してきたことをできる限り実践していくということは当然問われる立場であり、持てる力を出し尽くし、市民の皆さまに喜んでいただけるように頑張っています。
(了)
【茅野 雅弘】
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