2024年12月23日( 月 )

ネットバブルの寵児、折口雅博氏の自伝『アイアンハート』を読む~逃避先の米国で、あのトランプ前大統領の知遇を得て再起!!(2)

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 ネットバブルの寵児が戻ってきた。人材派遣大手グッドウィル・グループ(株)元会長・折口雅博氏が自伝『アイアンハート』(昭文社刊、税別定価1,500円)を出版した。副題は「ゼロから12年で年商7,700億円企業を創った不撓不屈の起業家」とある。日本ですべてを失い、米国に渡り再起、日本にカムバックしてきたのだ。早速、手に取って読んだ。逃避先の米国で何をしていたかを知るためだ。政治エンターテインメント「トランプ劇場」で米国社会の対立と分断を深めたドナルド・トランプ前大統領の知遇を得て蘇ったのだ。びっくり仰天である。

航空自衛隊のパイロットにならず、民間での成功者を目指す

 折口雅博氏は、少年工科学校から防衛大学校に進学した。防衛大学に進学できるのは、せいぜい400人中10人前後。消灯後に、教官に見つからないように毛布にくるまりながら受験勉強した。「絶対に勝ってやる」との思いからだ。

 防衛大では理工科を専攻。航空自衛隊のパイロットを目指した。転機になったのは、大学4年の夏。ナポレオン・ヒルの『成功哲学』を読んだことがきっかけになった。

 「成功したいと強く願うなら、誰でも成功できる」。この本には、そう書かれていた。一度きりの人生なら、可能な限り大きいことに挑戦したいと考えるようになった。自伝には1行も書かれていないが、防衛大でマルチ商法に手を出してボロ儲けし、自分は商売に向いているとわかった。パイロットになるつもりでいた折口氏は、民間企業で働くことを決意する。

 防衛大の卒業生は自衛官に任官されるが、折口氏の同期生のうち約30人が任官を拒否した。折口氏は後々まで、税金を食い逃げした任官拒否のレッテルがついてまわる。

ディスコブームを巻き起こした「ジュリアナ東京」の仕掛け人

 防衛大を卒業した折口氏は、日商岩井(株)(現・双日(株))の商社マンに転じた。異能を発揮するのは日商岩井時代である。

 日商岩井と英国のレジャー会社が合弁会社を設立。1991年 5月、東京・芝浦の巨大倉庫がディスコに変貌、「ジュリアナ東京」がオープンした。ジュリ扇と呼ばれた羽根扇子を閃かせる“お立ち台ギャル”で、大ブームを巻き起こした。ジュリアナのある芝浦まで、バリバリのディスコファッションを身にまとったギャルたちが、JR田町駅から歩いていくさまは、ジュリアナ現象と社会評論家が名づけたほど。異様な光景であった。

 ジュリアナ東京の総合プロデュースを手がけた折口氏は、マスコミから「ジュリアナの火付け役」「仕掛け人の商社マン」と持ち上げられ、いちやく、時の人となった。折口氏は、開店して半年後に日商岩井を辞め、30歳で念願の独立をはたす。

 ジュリアナ東京の経営者となったが、ほどなくお決まりのお家騒動が起こり、ジュリアナを追われた。折口氏に残ったのは4,000万円の借金だけ。消費者金融でも金が足りず、トイチ(10日に1割の利息を取られる)の高利金融にも手を出し、借金は7,000万円に膨れ上がった。ジュリアナを追われてからの2年半は借金地獄だった。

「ヴェルファーレ」でも挫折

 借金を返済するために、ジュリアナ東京を超えるディスコをつくることに奔走した。大手レコード会社エイベックス(株)と、ノンバンクのオリックス(株)が引き受けて、94年12月、東京・六本木に世界最大級のディスコ、「ヴェルファーレ」がオープンした。平日で1,000人、週末には2,000人近くの集客を誇る六本木の新しい顔となった。このとき手にした5,000万円の企画料で借金の大半を返済した。

 だが、ここでも利権争いが起きる。ヴェルファーレで代表取締役社長に就いた折口氏だったが、オープン前にプロデュースの権限を一切剥奪され、社長から副社長に降格された。折口氏はヴェルファーレを立ち上げたが、40億円の資金を出したわけではない。降格によって、資本主義の冷酷さを思い知らされた。そのような辛酸を舐めた末の教訓は、自己資本をもってオーナーにならなければダメだということだった。

 ジュリアナ東京とヴェルファーレの2つのディスコに挫折した折口氏に、救済の手を差し伸べたのが、ヴェルファーレの企画に関わった佐藤修氏である。折口氏がヴェルファーレ在任中の95年2月、佐藤氏は引っ越しやイベント準備などの軽作業を請け負う(株)グッドウイル(のちのGWG)を立ち上げた。折口氏は出資を引き受けた。初仕事は、ヴェルファーレのお立ち台に上がる女の子を送り込むことだった。そして96年4月、折口氏はヴェルファーレに辞表を提出し、グッドウィルに合流した。

(つづく)

【森村 和男】

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